ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.66
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本棚登録 : 351
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066275

作品紹介・あらすじ

フーコーは、私たちが自明視する世界のありようを、全く違ったしかたで見せる。「価値を変えろ!」と迫るその思想の核心に、どうすればたどり着けるのか?本書は、最高傑作『監獄の誕生』を糸口にフーコーの全貌に迫ることで、その思考の強靱さと魅力と、それを支える方法とを、深く広く、生き生きと描き出す。正常と異常の区分を生み出す「知」の体系と結びつき、巧妙に作用する「権力」。そうした秩序が社会の隅々にまで浸透する近現代を、フーコーはどう描き、その先に何を見定めたのか。魂を揺さぶる革命的入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 著者はフーコーに惚れている。あとがきにて、「大好きな人の大好きな本についてなぜ好きかを書いて出版できるということは、それ自体とても幸運なことだ」(p.268)、と書いてしまうほどだ。フーコーという巨人の肩に乗って遠くを見通したいという願望があるのだと思う。

    フーコーの数多い著作の中で、著者は『監獄の誕生』を特別視している。この本も最初は『監獄の誕生』についての本を書こうという目論見であったのが、そこに収まりきらなかったため結局『ミシェル・フーコー』というタイトルにしたとあるが、この本はやはり『監獄の誕生』に関する本として読んだ方がいい。『言葉と物』なんて『監獄の誕生』可愛さ(?)に巻末の参考文献説明で、「この本がさっぱり分からなくても落ち込むことはない。分かったところで、生きる指針を与えてくれるような内容でもない」(p.249)なんて言ってしまうほどだ(正しい?)。

    フーコーは、過去の断層の向こう側の文献/言説を丹念に掘り起こすことで、すでに回りにあってあまりに当然と思っているが突き詰めて考えると全く当然でも何でもないものだということを炙りだすという手法を採る。『狂気の歴史』も『言葉と物』もそうだし、『性の歴史』もそうだ。『知の考古学』ではそのやり方について自ら解説もしている。その魅力については、著者の次の文章がよく言い表している。

    「フーコーの著作はどれも古い時代から説き起こし、独特の迂回路を経て現在へとつながっている。かといって現実との関係が薄いかというとむしろ逆で、なぜこんな昔のことを書いているのに強烈に「今」が浮かび上がるのか不思議なほどだ。それが彼の人気の秘密なのだろう」(p.229)

    「監獄」や「刑罰」はその最たるものであり、『監獄の誕生』は著作の順番からいってもその集大成とも言える。突き詰めて考えると「犯罪」を犯して「監獄」に入れられる根拠をは正義にもよらないし、社会的効用の最大化という理由でもない。それは「主権」、「自由」、「責任」さらには「身体」というものを通した内面化した権力による統治の仕組みに関連するものだ(と思う)。

    今後、一定以下の世代においては、ほぼ全ての人がひとつ以上のソーシャルネットワークのアカウントを持つであろう時代において、フーコーが描写した「生権力」や「規律」というものがどのようにその意味を変えることになるのかは検討に値する課題であるように思う。ソーシャルネットワークに実名で向かうことで「規律」はより精緻に内面化されるとともにコントロールされ、自ら書き込むという所作を通して強化されるようなものではないかと思う。それは、かつて「権力」という言葉によって誰もが想像するような権力とは違うものだ。その意味でも、今現在においてフーコーが言う「断層」が多くの地点で発生しつつあるのではないか。分析対象としてのアルシーヴはかってないレベルの量とアクセス容易性を備えている。そういう観点でフーコーと今とをつないでくれる考察はないものかと思う。ちなみにタイトルから、ジョン・キムの『逆パノプティコン社会の到来』はその種のことを扱っているのかと思ったら全く期待外れであった(勝手な期待ではあったのだけれども)。

    フーコーを研究するものは、フーコーが試みたことを読み解くだけでなく、フーコーが試みたことを現在の課題に適用して鮮やかに切り取ることも試みてくれないかと思う。著者はきっとこの世界では脂がのった新進気鋭の若手女性研究者と目されているのだと思う。次は肩に乗った先に見た景色を描写してくれることを期待している。


    さて次は積ん読本になりつつある中山元を読もうかな。

  • フーコーの監獄の誕生を中心にフーコー何をしようとしているのかを熱く論じた本。本そのものの解説よりも、著者の世界観が垣間見える記述が面白い(愛知の公立中高の話など)。第V部の議論が面白かった。

  • 監獄のやつ。分からない世界が楽しいと教えてくれた

  • 2016/12/05
    分かったような分からなかったような……_(:3」∠)_

  • 一見は軽妙な語り口。『監獄の誕生』を淀みなく読んでいる気持ちになってしまう。

    著者が示すフーコーを読む「作法」がなにより参考になる。特に終章のことばが頂門の一針という言葉以外思い浮かばなかったほど、フーコーから権力との付き合い方を教わろうと思っていた私には深く刺さった。

    フーコーを読みたい。そして自分と社会の今を考えよう、そう思えた。

    ・P192:フーコー自身、権力について「何が」「誰が」ではなく「どのように」を問うべきだとくり返していた。これは言いかえれば、権力にどちらの側から接近するべきかについて、その接近方法をなぜとるのかの意図だけでなく、そこから何がどのように見えてくるのかの帰結も含めて常に敏感であれということだ。
    ・P209:(監獄の失敗から)フーコー:警察なんて最近できたうっとうしい制度、犯罪者集団がいなきゃ誰も認めませんよ。
    ・P213:権力は人の相互作用を通じて、戦略的に作用する。
    ・P230:系譜学とは著述の方法というより、むしろそれ以前のところ、政治的直観に基づく「立ち位置」に関係している。
    ・P234:流行は消費されるが、時代とまともに向き合うとは、それ自体消費に抗う営み。それは現実を、人々の痛みや軋みを、それが逃げ去ってしまう前に一瞬でとらえようとする熱意の言いかえなのだ。
    ・P238:彼の著作はまさに理解に抗うところがある。結局何が言いたいのか、どんな「オチ」なのかよく分からない。・・・なぜなら現実の世界には明確なストーリーもオチもないからだ。

  • 後半がややわかりづらい

  • 内容はさておき、たぶん好みが分かれる書き方で「実はさっき気づいた」とか出てくる。個人的にはこういう雰囲気は嫌いではない。
    内容については入門書としてある程度指標になってくれてる気がするのでよかった。
    何よりこちら側にもフーコー読んでみよかなと思わせてくれるのがいい。

  • 高校2年現代文教材に「私はどこへ行く」という哲学系教材がある。
    内容は、
    今まで、デカルトの心身二元論によって意識する私が主導権を握っていたが、デジタルテクノロジーの発達によって身体的な私が主導権を持つようになった。これによって、今までの権力者と非権力者という構図が成り立たなくなる。
    21世紀はデジタルテクノロジーによるパノプティコンの時代である。

    …というお話。

    一体、パノプティコンってなんだ!?と思って本書を手にとった。
    本書は一般的な入門書とは異なり著者の熱意が伝わる読みやすい本。
    是非、読んでみてほしい。

    サイコパスというアニメにもパノプティコンは登場しますね。
    知っていると楽しめます。

  • [ 内容 ]
    フーコーは、私たちが自明視する世界のありようを、全く違ったしかたで見せる。
    「価値を変えろ!」と迫るその思想の核心に、どうすればたどり着けるのか?本書は、最高傑作『監獄の誕生』を糸口にフーコーの全貌に迫ることで、その思考の強靱さと魅力と、それを支える方法とを、深く広く、生き生きと描き出す。
    正常と異常の区分を生み出す「知」の体系と結びつき、巧妙に作用する「権力」。
    そうした秩序が社会の隅々にまで浸透する近現代を、フーコーはどう描き、その先に何を見定めたのか。
    魂を揺さぶる革命的入門書。

    [ 目次 ]
    1 フーコーの世界へ
    2 身体刑とその批判
    3 規律権力
    4 近代国家と統治
    5 監獄ふたたび
    フーコーのリアルと、彼をつかまえにゆく方法

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 読了。

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著者プロフィール

重田園江(おもだ そのえ)
1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得。現在は明治大学政治経済学部教授。専門分野は政治思想史、現代思想。著作に『フーコーの穴――統計学と統治の現代』(木鐸社、2003年)、『連帯の哲学Ⅰ――フランス社会連帯主義』(小社、2010年)、『ミシェル・フーコー――近代を裏から読む』(ちくま新書、2011年)、『社会契約論――ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』(ちくま新書、2013年)、訳書にイアン・ハッキング『偶然を飼いならす――統計学と第二次科学革命』(共訳、木鐸社、1999年)ほか。


「2018年 『統治の抗争史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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