いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書 920)

著者 :
  • 筑摩書房
3.76
  • (57)
  • (74)
  • (55)
  • (16)
  • (7)
本棚登録 : 961
感想 : 107
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066299

作品紹介・あらすじ

文章はサービスである。読んだ人を楽しませるためにのみ文章は存在する。自己表現のために文章は書くものだと考えている人がいるだろうが、大きな間違いである。「自己表現を目的とした文章」は基本的に他人に読んでもらえるものにはならない。独自の視点と実地の調査をもとに人気コラムを書き続け、数年にわたり「編集ライター講座」で教えながらプロとアマチュアの境界線を見続けてきた著者が、自身のコラムの失敗、成功、講座でのとんでもない企画、文章など豊富な実例を挙げ、逆説的真実をこめた文章法の極意を明かす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 思い返すと昔から「読書感想文」と呼ばれるものがとても苦手だった。今でも自分をさらけ出すような文章を書くことが苦手だ。こんな自分の感想など誰が興味を持つんだというのも思っていたし、他人にいいと思ってもらえると自分が思えるような文章を自分から生み出すことが苦手だ。思えば自分がいいと思うものというより、視点が外部に置かれすぎていたんだと思う。

    一方で同じ文章でも、事実をなるべく並べるような技術的な文章については同じような難しさを感じることは少なかった。自分の視点というよりも自分を消して第三者的な視点で書こうとできるからな気がしている。

    考えを書いて文章にしたほうが考えがまとまるような実感はあるので、なるべく心理的なハードルを下げて書けるようになりたいと思ったし、周りの人がうまい言語化をしているのを見て自分もそうなりたいとは思っていた。それもあって”書くこと” に関するような本を買うことは多かったのだけど、「とにかく気にせず書こう」だとか ”てにおは” に関するような本が多くて「そうはいいますけども」という印象を受けることが多かった。

    この本で書かれているのはそういったテクニックの部分よりももっと根本的な姿勢だったり心構えみたいなところが多くて自分にとってはそちらのほうが重要で刺さった気がした。

    本書の書きぶりは自由で、文体もバラバラだったから読みやすいかどうかでいうと読みづらいところも合った気がしているが、そんなことを気にするよりも文章の内容や伝えたいことのほうが大事というのは本書自身が示しているような気がした。

  • 【感想】
    物書きは理論ではない。とにかく書く。浮かんでくるまま、文章が自走するままに書く。

    この意見には全面的に同意だ。

    物を書くのは不思議な行為だと思う。書きはじめる前には考えていなかったことが、ペンを握るとどんどん浮かんでくる。逆に、書く前に頭に浮かんでいたことが、文字に起こそうとすると詰まって全然前に進まない。そういうことが多々ある。

    また不思議なことに、ペンで書いているときと、キーボードを叩いているときでは、文章の自走のしかたが違う。私は文字のほうがいい文章が書ける。たぶん、思考を頭の中から紙の上に変換するとき、キーボードでは文字に起こすのが早すぎて、テンポが狂うのだと思う。文字だと適度に遅いため、手のスピードと思考の速さが上手くかみ合う、結果的に気持ちよく自走ができる、そんなイメージだ。


    本書は一つのことを追求している。「読んでる人のことを第一に考えろ」
    痛いほど理解できる。読み手が誰なのかを明確に意識しなければ、いくら美辞麗句を並べたところで心を動かすことはない。美辞麗句の心地よさに惹かれることはあっても、行動が変わるほどの影響は受けない。

    しかし、言うは易く行うは難し。読者の立場に立つのは簡単ではない。
    書き手は単一の視点しか持たないため、読者の「こんなことを聞きたい」を想像するには限界がある。それに筆者も言っているが、人は「知らなかったことを知りたい」のだ。読者が読みたいものを書かなければいけないのに、その読者自身は何が読みたいか分からない。これが物書きの難しいところだ。

    本書では、自分の書きたいことを曲げてでも読み手に尽くせと言っている。だから環境問題なんて書くべきではないし、自己表現なんてすべきではない。

    しかし私は、「TPO」をわきまえてさえいれば、もっと気軽で自由に書いていいものだと考えている。
    そもそも、この本は読ませるための技術を紹介する本だ。しかし、文字は読ませるためだけに書かれるものではない。主張がはっきりとしないウジウジした文も、格式ばった高尚な文も、誰に見せるでもない低俗な愚痴も、好きに書いていいと思う。とにかく書けば何かが広がる。自分の意識の奔流を好きなままに表現するのは芸術のキモである。

    ただし、TPOはわきまえたほうがよい。誰に書こうとしているのか。何のために書こうとしているのか。意見を表明する場は適切か。聞いてもらいたいのか、書き散らしたいだけなのか。
    これも究極的には「読み手を考えろ」ということにつながるのかもしれないが、そこまで「読ませよう読ませよう」とせずともよい。自分一人だけが読み手であってもよく、虚栄心を満たすためでも、バズりたいだけであってもよい。

    文章は、どこまでいっても自由なのだ。


    【本書のまとめ】

    文章を書くときは、うまく書きたいと思わないこと。
    うまく書きたいと思っている意識そのものに問題があるので、それをちゃんと取り除けばいいものが書ける。
    また、読んでいる人のことを第一に考える。物書きはサービス業であり、決して自分の自己表現をする場所ではない。読み手が読みたいものを書く。
    そして、すぐに書く。文章はリズム。とにかく書いて体験し、文章を書くリズムを身に覚えさせること。


    【本書の詳細】
    1 読んでいる人の立場に立って書く
    良い文章を書くための究極的な解決法は一つ。読んでいる人のことをいつも考えて書く。これを徹底するのが答えである。
    それは、「自分の言いたいことを、いったん曲げてでも」書けるか、ということである。

    物を書くことは、自己表現をする場ではない。人は「誰かの話」が聞きたいのであって、「誰かの意見」が聞きたいわけではない。読み手が「読みたい」と思う話を提供できるか?そのためには、自分の言いたいことを曲げてでも、読者のために尽くせるか?を追求しなければ、良い文章にはならない。
    全員に届けようとしては、誰にも届かないのだ。環境問題、政治、貧困。書き手は多くの人に読んでもらおうとするあまり、漠然とした膨大なテーマを設定する。しかしそんなテーマに限って、当たり障りのない結論しか生まれない。

    そのため、読者を絞る。具体的には、ターゲットを「きわめて不親切な読者」として想定する。漢字を減らし、すぐに改行することを意識して、手に取ってもらった人に注目してもらうために、なるべく分かりやすく書く。決して不特定多数に書こうとしない。

    悪口も、読んでる人の立場にリアルに立って書くこと。
    悪口を本人の前で読み上げられるか?ということを考えれば、殆どは無理である。そんなときに「悪口+改善策」なんてものを書いたら、より上位の立場から物を言うことになり、相手を烈火のごとく怒らせてしまう。
    改善策を示したいなら、悪口をまったく切り離して言うべきであるし、感情的に変えてほしいところがあるなら、ただ感情的に変えてほしいと言うだけでよい。
    一番いいのは、悪口なんて書かないことである。


    2 すぐに書く
    文章を書きたいから、きちんと勉強して国語力を身に着けてしっかり書こうなどと思ってはいけない。すぐに書くこと。
    当然、そんなすぐには書けないという人がいる。そこから抜け出すには「意識を変える」必要がある。視点を変え、自分の言いたいことを言うのではなく、読んでいる人が喜ぶものを書くこと。自己表現をしたい人は文章書きには向かないのだ。

    では、面白い文章とは何か?それは「知らなかったことを知る」ことである。つまり、「文章を書くのは、人を変えるためである」のだ。
    人を変える可能性のある文章というのは、だいたい、書いている人が「自分の驚きを伝えようとしているもの」であることが多い。ある出来事、もしくはある話によって、自分が驚き、変わったと感じ、それを人に伝えようとする。その心持ちが根幹にあれば、ちゃんとした文章になる可能性がある。

    これを見つけるためには、いつも「人を変えるもの」を意識して生きるしかない。何か新しい工夫と驚きを見つけるために、常にアンテナを張って生きる必要がある。

    だいたいの場合は、書く人自身が体験した軽い驚きがまずあって、それを読んだ人にも追体験してもらいたい、という意志が貫かれていれば、なんとかなるものだ。


    3 私を書く
    「社会的発言」からは絶対なにも生まれてこない。文章はあくまで個人から発するものであり、自分の体験とそこから生まれた感想を書くことからしか始まらない。個人的な感想でいい。というよりも、客観的な感想ではつまらない。
    まず熱を持ち、プライベートな心持ちから発して、どんどん内側のものを出して書くとこから始める。いったん書き終わったあとに、冷静になった自分によってチェックを入れ、わかりやすいように直す。理論よりも情熱のほうが大切なのだ。

    もちろん、環境問題について何百時間も調べていれば、それは書いていい。公の話題が自分の身体にしみつき、説得力のある「個」として発信できるまで昇華できれば、それは「私」の話になるからだ。
    話題が公私を分けるわけではない。その話題をどれだけ自分の血肉と化しているかで、公私が分かれるということだ。


    4 調査をする前に
    すべての調査は、調査する前に結果を予想してなければならない。言い換えれば、「仮説を立て、それを証明するために調査をする」。
    まず結論を立てる。仮説なしにいきなり調査し始めてもなんの意味もない。自分で企画を立てる段階になると、ついつい忘れがちになるため、注意すること。


    5 断定する
    書く限りは言い切ること。「〇〇だと思う」は禁句。
    そして、言い切るというのは、結論を最初に持ってくることでもある。まず初めに結論を断定し、そこから具体例を出す。決して時系列に沿って書かない。
    また、一人称は、特に文章の冒頭に持ってくるべきではない。「私は○○と思った」。それを読んだ読者は「私って誰だよ?」と思ってしまう。
    日本語の性質的にも、一人称はなるべく取ったほうがいい。「〇〇と思った」だけであっても、誰が思ったのか予測がつく。


    6 文章で自己表現はできない
    新たに語彙力を高める必要はない。文章力を上げようとしなくていい。いま、持っているものだけで戦う。文章は喋り言葉で書いてみてもいい。
    熱を持って書きまくったあとに、冷静になって削ろう。仕上げるのに大事なのは削ることだ。


    7 事前に考えたことしか書かれてない文章は失敗
    書き始めると、書く前には思ってもなかったアイデアがどんどん浮かんでくる。逆に言えば、書いている途中に何も新しいことが浮かんでこなければ、失敗である。
    この現象を作者は「文章の自走」と呼んでいる。文章の自走に任せることがよいのは、「書き手であったはずの自分」さえも「読み手として驚かせる」ことができるから。
    文章を自走させるためには、「とにかく書いて体験する」しかない。文章をうまく書くためには、とにかく身体で体験して、その暴走する感覚を掴み、手懐けるしかない。

    自走する文章としない文章の差は、「誰に向かって、どういうことを書いているか」を明確に意識しているかどうかである。「28歳のよく笑う女性:ユリエちゃん」など、偶像的存在を明確に意識しているかどうかだ。仲のいい異性を設定し、その人を喜ばせようと考えると上手くいく。


    8 先陣をきっても売れない
    文章に書かれているものはすでに誰かがどこかで話していたものであって、それと同じものを書くのを恐れてはいけない。自分の体を通して私が語ると違うものになる、という感覚をきちんと抱いて、進めていくしかない。個を主張するのではなく、その話本来が持っている面白さがきちんと伝えられるかが問題である。

    自己表現しなくていい。
    自分は、自分は、と言わなくていい。ただひたすら「聞いてもらいたい話をより面白く伝えること」だけを念頭に考えて書けばいい。

  • フリーライターでコラムニストの堀井憲一郎の文章の書き方についての本だ。
    さすがに 読み手を意識して、相手を喜ばせよう、楽しませようと書いているから
    一気に読めて、文章下手な私でも できそうな気になってしまった。

    本の中で「おもしろい企画は、突然、結論だけが思い浮かぶ」という。
    そして それは直‛感‘ではなく、「直観」
    積み重ねた経験の上に 感じる 誰にも分からないけど(いつもと 何か違う)という感覚
    うん この感覚 真剣に生きていくうえで大切な感覚。
    新しい発見はこういう感覚から生まれるらしい。
    身に付けたいと 強く思った。

    今回の本 
    最近のSNSで文章を書く人には一度読んで、「書いていい事 悪い事」の根本を知るのに良いと思う。
    再度 繰り返し読みたい本だ。

  • 文章を書く際、まず意識するのは『何を書くか』だ。しかしどうも筆は進まず、当たり障りのないテーマばかり思い浮かぶ。著者に言わせればそれは、『誰に向けて書くか』を想定していないからとなる。対象が漠然としていては、何を書くか曖昧になるのは当然だったのだ。

    読者を想定するというのは、各文章読本でもよくいわれることである。しかし見た感じ、それらはあくまでよい文章を書くための、並列的に紹介される一要素としてであった。それが勘違いの元だ。伝える相手があって、彼らに伝わるものを生み出せる。まず相手ありき。読者を想定できたら、あとはいかに彼らの喜ぶ文章を書くかだ。相手の気持ちをどこまでリアルに深く考えられるか。アマとプロの違いはそこの踏み込み具合だという。

    伝えたいのは上記の内容だけだといっても過言ではないほど、著者は折に触れ重要性を訴える。さて、これらを頭に叩き込んだら後は読書しまくり、書きまくれってことらしい。文章読本や脚本術などを読み漁っている人がいたら、いったんそれらは横に積み上げておき、まずは本書を読むことを勧める。その上で文章マニュアルの類も参考にしながら、よい書き手を目指そう。

  • これはいい!
    勉強になった。
    いいんだ、これでいいんだ、とどんどん読めた。
    筆が止まって進まない時に読み返したい。

  • 独りよがりの自己満足では誰も読まない

  • <医学部・らあめんさんからのおすすめ 投稿日 2020/09/24>
    文章を書くという視点から学びを得られる一冊です。
    コミュニケーションにおいて一番大事なのは、「相手の立場に立って」という姿勢です。文章を書くときも同じで、読む人のことを常に考えて書くことができれば、人を惹きつける文章になります。読者の立場に立って書く。一見簡単だからこそ、書く人の間で明確に意識の差が表れます。例えば、自分の主張を曲げてでも、読者を第一に考える。人を変えることができるか、という視点で考え直してみる。退屈でない文章を書くには、自己をさらさざるを得ないことを理解する、などなど。読み物としても面白く、文章を書くときの意識が変わります。

    *福島県立図書館所蔵
    ふくふくネットで無料取り寄せ可能です。
    ↓ふくふくネットについて(PDF)
    https://www-lib.fmu.ac.jp/lib/app_form/renkei.pdf
    ↓マイライブラリから申し込む場合
    https://www-lib.fmu.ac.jp/opac/user/top
    「新規申し込み」→「他館より現物を取寄せる」をクリックし
    通信欄に「県立希望」とご記入ください。

  • 面白かった

  • 飛ばし読みでざっと目を通しただけだけど、これはいい本だ。
    熟読するよりは、急いで読んで、書くことを始めた方がいいですよ。

  • 『本書の対象は「うまく文章が書けなくて困っている人たちみんな」、である。』ということらしいが、この著者自身の日本語の乱れていると思う。文章のテンポも悪いし美しさもない。これでも「プロ」の文章なんだと思うとガッカリだ。参考にしたい。

全107件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年生まれ。京都市出身。コラムニスト。
著書に『かつて誰も調べなかった100の謎 ホリイのずんずん調査』(文藝春秋)、『青い空、白い雲、しゅーっという落語』(双葉社)、『東京ディズニーリゾート便利帖 空前絶後の大調査!』(新潮社)、『ねじれの国、日本』(新潮新書)、『ディズニーから勝手に学んだ51の教訓』(新潮文庫)、『深夜食堂の勝手口』(小学館)、『いますぐ書け、の文章法』(ちくま新書)、『若者殺しの時代』『落語論』『落語の国からのぞいてみれば』『江戸の気分』『いつだって大変な時代』(以上、講談社現代新書)などがある。

「2013年 『桂米朝と上方落語の奇蹟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堀井憲一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
デールカーネギ...
佐藤 優
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×