タブーの正体!: マスコミが「あのこと」に触れない理由 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066459

作品紹介・あらすじ

どれだけ重大な事実であろうと、マスコミが口を閉ざしてしまうことがある。大物政治家の不正疑惑、大手企業が引き起こした不祥事、有名タレントの薬物使用疑惑…。「報道の自由」を掲げながらも、新聞やテレビ、出版各社が、過剰な自主規制に走ってしまうのはなぜか?『噂の眞相』副編集長時代に右翼から襲撃を受けた経験を持つフリージャーナリストが、闇に葬られた数々の実例を取り上げながら、ネット時代の今もメディア・タブーが増殖し続けるメカニズムに鋭く迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 「ペンは剣よりも強し」
    ところが、無敵のはずのペンの力も「言論圧力」の前では無力です。
    今の「言論」は金と拳だけで失われてしまうもろいもので、巷間言われる「タブー」が社会やマスコミ自らが作り上げていることがよくわかります。
    右翼の代名詞と言われた暴力や暗殺という生命の恐怖を利用した原始的な「言論テロ」から、権力や利害関係を駆使したもの、そして金銭的な圧力(スポンサー意向)などのバリエーションはあるものの、どれも命も金も忖度も捨てる気でいれば対抗出来うる類のものです。昔は気骨のある文士(井上光晴など)がいましたが、今ではサラリーマン稼業ですので、自分や家族や会社を犠牲にしてまで危険な橋は渡らないというのが大勢のようです。
    本書では、同和利権にメスを入れた小泉政権が、実は政治権力を最大限活用していた話(P108)や検察や警察権力の卑劣さと恐ろしさ(P134)、マスコミ同士の連帯がないため権力サイドの大きな不正があっても一致団結できない体質(P172)、トヨタやパナソニックなどの大手スポンサーの広告引き上げという脅しは、広告は自社製品のPRだけではなくメディアを黙らせる口止め料でもある(P189)、地域独占企業であるはずの電力会社の広告宣伝費の多さも原子力政策への批判封じ(P195)、テレビ局の大株主が電力会社という事実(P201)、JRではキオスクでの発売拒否という報道圧力(P205)、電通は自社の不祥事やスキャンダルを握りつぶすのみならず、スポンサー企業への批判報道を抹殺する役割もある(P215)、大手芸能事務所に所属しているかどうかで、スキャンダルでの扱いが異なる(P217)など、すべて相手の力が強ければタブーの前にひざまずき筆を折るという情けなさのオンパレードです。
    「かつては建前としてかろうじて存在していた報道の自由や知る権利が、(会社や個人の)利潤追求という目的で消えてなくなる」(P254)
    「今から10年後、この国にスキャンダル報道できるメディアは残っているのだろうか?メディアはタブーでおおわれ、プライバシー保護のもと、権力や富、名声を持つものの不正を知る機会がなくなっている可能性もある」(P248)
    本書の出版は2012年ですので、来年で彼の予言した10年目です。日本は「報道の自由度」が先進国でも最下位ですが、こうした状況を招いているのも容易に長い物には巻かれるマスコミの体質でもあります。権力側とのなれ合いの象徴「記者クラブ制度」の廃止や、もし言論封殺があるのならそれも含めて暴露報道するなどやれることはまだまだあります。要は、報道にかかわる人たちの覚悟の問題です。
    マスコミ(ネットも含む)で報道されれている情報がいかに偏向されているのかがよくわかる良書です。
    また、筆者自身、右翼に襲われたときの恥ずかしい話を赤裸々に語っている点にも拍手!

  • 8年前に出た本で、古本で購入。

    いまはなきスキャンダル・ジャーナリズム月刊誌『噂の眞相』の副編集長として、故・岡留安則の右腕となって活躍した著者による、日本のマスコミ・タブーの概説書。

    時期的に古びているネタはあるものの、刊行8年後のいま読んでも十分読み応えがある。

    取り上げられているのは、皇室タブー・同和タブー・宗教タブー・検察タブー・ユダヤタブー・芸能タブー・大企業タブー・原発タブーetc……。
    マスコミがほぼ批判できないネタ、触れることすらできないネタについて、なぜそれがタブーになったのか、タブーを侵して報じた場合に何が起きたのかなどを、歴史を振り返り、構造にまで踏み込んで解説している。

    著者の言うことをすべて鵜呑みにする気はないし、反論したい箇所もあるが、総じてとても面白くてためになる一冊。

    著者自身、『噂の眞相』時代に右翼団体の襲撃を受け、生の暴力にさらされ、そのショックで皇室タブーに踏み込めなくなった(岡留安則はそのことを、『噂の眞相』が休刊を選んだ要因の一つに挙げていた)……という実体験の持ち主である。

    その体験の恐怖を赤裸々に綴った部分は、自らを飾ろうとするところが皆無で、正直さに好感を抱いた。

  • マスコミのタブーが、暴力、権力、経済の三つから生じていることをその実例を詳しく紹介してくれている本書。
    マスコミだけでなく、あらゆる組織や人間関係にもこのタブーの原理は働くはずで、自分が何も考えないうちにタブーに飲み込まれないようにするために一読の価値あり。

  • 元『噂の真相』副編集長だった著者が、自身の立場から様々なタブーについて記述した一冊。

    皇室報道、創価学会、そして何より官僚、警察庁、大手芸能プロなど余すところなく記述している。
    そして著者自体、皇室報道で右翼系の暴力に屈したことを書いており、説得力が違った。

  • 噂の眞相編集部に在籍していた副編集長による一冊。ここまで書くのもけっこう大変なんだろうなぁと思いつつ、タブー報道の現場にいたからこそ書ける生々しいエピソード多数。報道によって一方的に叩かれる人がいかに多いか、とか、その裏側をかいま見るには非常に面白い。でもこういう本が注目されることが少ない事自体が問題ですね。

  • 薄々は分かっていたタブーも、全然知らなかったタブーも
    たくさん書かれていて、ゾっとしました。

    書いてあることすべてに、
    ”そうだ、そうだ”とも思いませんでしたが、
    著者自身がタブーを犯した報復にあっているので、
    説得力がありました。

    若い人向けのお薦め本だったので読んでみたのですが、
    確かに若いうちに、自分で知ろうとしないと
    知ることのない裏の社会の仕組みを
    理解しておくのはいいことだと思いました。

    メディア(テレビ・新聞・ネット等)のすべての情報を
    そのまま受け止めるだけの人にならないように
    考えることが大切で、
    自分は、できるだけ取り込まれないように
    まともに生きていこうと思える本です。

  • 世の中こういうもんだよな、とか
    清廉潔白な人はどこにもいないんじゃないか、と思い出すと
    なんだかとっても残念な気持ちになりますが、
    おかしなことに対しては、おかしいと思える感性だけは
    なくしたくないな、と思いました。

  • 営利企業としてのマスコミの気苦労を再認識。
    タブー関連書の決定版。
    満足度9+

  • 橋下市長のバカ(文春|新潮)騒動然り、震災後の東電・政府の情報錯綜然り、マスコミは提供する情報に対してどこまでスクリーニングしているか知りたくなったので読んでみました。「スクリーニングはマスコミ主導じゃなくて、圧力かけられてしゃーなしでやってるんだよ。大人の事情を紹介するよ」という内容でした。怖いもの見たさで買った部分もあるので小泉元首相や検察、電力業界の話は単純にその欲求を満たしてくれました。
    ただ作者は「タブー、タブーと言われてなぜそれがタブーなのか考えずにフィルタリングしていくとタブー自体が大きくなるから余計に自分たちの仕事がなくなるよ。それは思考停止だからやめようね。」ってことが一番伝えたかったことなんじゃないかと思いました。

  • タブーの正体! 読了。
    筆者は、元「噂の真相」の編集者。自身の体験を基にしながら創価学会からジャニーズ事務所、検察からAKBまで。何がなぜタブーになっているのかその理由まで日本のタブーを解き明かす。

    今までテレビや新聞しか触れていない人にはおそらく衝撃的な本。多様な価値観を得るためには必読。
    ただ、テレビよりもネットをやっている時間の方が多いような僕らの世代には「ま、そーだろうね。」ぐらいの本。

    そして、「それくらい、あるんじゃなーい?」というのが感想。堀井憲一郎が本で「日本国民がみんな自分が特権階級にあるような意識」を指摘していた。

    言い得て妙である。
    まさにその意識が書かせたような本。

    いや、ね。ジャーナリズムは必要だと思うのよ。そして、それを機能させるためには集団としての意識、すなわち世論が必要なのもわかる。
    でも、こんなにあからさまに扇動をさされると、ちょっと萎えちゃう、というのが感想です。

    ただ、噂の真相時代に右翼が編集室に乗り込んできた場面の描写が秀逸。
    そこらの小説を軽く超えて真に迫ってくる。
    そしてその後、力に屈服してしまったジャーナリストという自己矛盾を抱えながら生きることとなる。
    その自己矛盾から出発して文が書かれているので、気になる部分はありつつも、嫌な気分にはならない。

    オススメです!

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