分析哲学講義 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.26
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本棚登録 : 334
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066466

作品紹介・あらすじ

フレーゲとラッセルの論理学研究に始まり、クワイン、ウィトゲンシュタインらの活躍を経て、現在では哲学の全領域に浸透した分析哲学。言語や概念の分析を通じて世界を捉えるその手法は、驚くほど幅広い分野で、新たな発見をもたらしてくれる。「言葉はなぜ意味をもつのか」「自然科学における自然とは何か」といった問いから、可能世界、心の哲学、時間と自由といったテーマまで、哲学史上の優れた議論を素材に、その先を自ら考えるための一冊。問題を正確に考え抜く「道具」としての分析哲学を伝える、珠玉の入門講義。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    まず、その一言で始めたい。
    本書は、ただただ面白い。

    文章は平易であり、難解な専門用語も殆ど出てこない。
    なので、読み進めることには、それほど苦労はないだろうと思う。
    ただし、書いてある内容は、「考える」ことを強く要求する。
    そこに書かれている内容が示しているのは、どういうことなのか。
    それを、本書は読者に対して常に要求し続ける。
    それが、「分析哲学」というものの本質なんだろうな、と思う。

    「分析哲学」とは何か。
    長くなるが、「はじめに」から引用する。
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    本書は分析哲学の入門書ですが、分析哲学という何か閉ざされた哲学の分野があるわけではありません。分析哲学をすることは、たんに哲学をすることや、たんに正確に考えることと同じ営みの一部です。
     そのうえ、分析哲学にはテーマの制限もありません。数とは何か、科学とは何か、言葉の意味とは何か、といったテーマから、自由や幸福や死、あるいは映画や聖書や核兵器についても、そこでは論じることができます。
     では、なぜ分析哲学という名称が個別に使われているのでしょうか。この疑問への回答は講義?でくわしく述べられていますが、ここでは少し違った表現で、その答えを簡単に述べておきます。
     私たちは、何を論じる際にも言語に依存しています。何を観察する際にも、言語を通して世界を見ます。分析哲学の独自性は、この当たり前の事実を徹底的に掘り下げる点にあるでしょう。すなわち分析哲学とは、言語の働きの解明を通じてさまざまな問題に答えるものであり、その意味で、あらゆる哲学やあらゆる思考と―――科学や倫理や芸術とも―――連続的なものなのです。
     重要なのは、ここで言う「言語」に、人間が思考するための論理もまた含まれている点です。分析哲学の歴史的な起源は、フレーゲやラッセルの論理学研究にあります。言語の働きの解明とは、たとえば英語のような特定の言語の文法的解明のみを意味するのではなく、諸言語の垣根を越えた共通の論理の解明を含むのです。
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    この説明を読んで、何か面白そうだぞ、と思えたら、きっと、本書は楽しめるはず。

    初めにも書いたとおり、とても面白く読み進めることが出来た。
    その中でも、特に面白かったのは、「意味の両替所」という部分。
    この、「両替」という概念は、言葉というものを、とても的確に示したものだと思う。
    言葉というのは、「抽象化」の手段に他ならない。
    そのことを、わかりやすい例で示したのが、この「意味の両替所」という考えかた。
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     千円札一枚と百円玉十枚はまったく似ていないのに、同じ<千円>として両替されます。千円札一枚も百円玉十枚も、千円そのものではありません。千円そのものは、貨幣のような実態としては存在しません。千円紙幣と百円玉のような異なる貨幣、あるいは千円の貯金や千円の商品、これらのものを両替・交換するときに初めて千円そのものが現われてきます。つまり、同じ<千円>としての両替・交換がなされることで、意味理解としての千円が現われてくるのです。
     私がリンゴを見ているという経験と、リンゴの方を向き「リンゴ」という声を出している九人の人間を私が見ているという経験があるとき、<リンゴ>についての両替のすべては私秘的な世界で行われています。両替の場は、私の心の中にあるのです。
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    言葉というものを語ることは、とても難しい。
    難しい理由は簡単で、それを語るのも、また言葉であるから。
    両替の場が「私の心の中」であるのなら、その両替の「正しさ」は、どこで担保されるのか。
    貨幣の両替であれば、その正しさは、その社会で決められた「規則」によって担保される。
    しかし、「その社会」以外の社会に属する人に、「正しさ」を説明出来るだろうか。
    言葉を言葉で語る難しさの原因は、まさにこの部分に集約されている。

    もう一つ、ハッとした部分を引用しておく。
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     自然とは科学的自然のことであると人々が考えるにいたった過程自体が、非原初的にしか表現することのできない原初的な自然誌(自然史)の一部なのです。
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    哲学という学問は、「懐疑」の学問である。
    常識として、誰もがごく当たり前に受け入れている事柄の、その意味を問い直す。
    そのことで、いままで見過ごされてきた「隙間」をあぶり出す。
    あぶり出された「隙間」は、時に世界の見え方を一変させるほどの威力を秘める。

    本書は、そんな「哲学」の入り口として、かなり優れた一冊だと思う。
    そのことを明確に表した文章を、最後に引用しておく。
    なお、文中にある「今」は、「いま、ここ」という意味での「今」である。
    ここで引用した文章は、「今」というものについて考察した箇所に記された文章である。
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     もちろん、科学史を見ても明らかなように、ある時代において非常識な考え方が、のちの常識となることもあります。どれだけ常識に反していようと、「今はある」という直感を捨てるべきときが来るかもしれません。ただ、ぜひ理解して頂きたいのは、この直感が私たちの信念体系に予想以上に根深く入り込んでおり、その否定には細心の注意と相当の覚悟がいると言うことです。
     講義室でのみ「今はない」と言うことは、ある意味、簡単なことでしょう。さきほど述べたような、今という概念の欠陥を指摘すれば十分です。しかし、今がないことを心から信じ、生活のどの場面においても、それと整合的な信念をもつことは容易ではありません。そして、ここから先は哲学観の問題ですが、講義室でも商店街でも病院のベッドでも、世界を一つのものとして整合的に捉えたいなら、哲学と日常での二枚舌を使わずに、自由、責任、生死などについての自分の考えを点検し続けなければなりません。哲学用の信念と別に、日常用の信念を保持すれば済む、といった話ではないのです。
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    こんなに誠実に、「哲学」と向き合っている人が書いたのが、本書である。
    その事実だけで、本書が信頼に足る一冊であることは自明である、と思う。

  • 分析哲学の本は、無未無臭でどうしても読み進めていくことが困難なものが多い気がするし、論理学とかきちんと勉強してないと、馴染めないものが多いので、これまで僕は敬遠してしまっていた。だけど、この本は、著者の体温が伝わってくるし、比較的平易な記述で問題の核心にズバッと入っているような気がして、面白かった。

    分析哲学の出発点にもなっている、「言語論的転回」にもそれをどのように受け止めるのかが様々であるというのは、そうなんだ〜と。最後の「時間」分析のところは、「今」という時間をどのように考えるかという問題(マクダード)で、難しくついていけなかったけども、すごく面白そうなので、もう一度読み直す。この辺りは入不二基義先生の本なんかでも勉強できそう。。。

    個人的には、社会構築(構成?)主義的な議論には、かなりのシンパシーを感じているので、分析哲学ももう少しちゃんと勉強したいなぁ〜とこの本を読んで思った。

    著者は分析哲学をあくまでも思考のための「道具」として認識していると言うのは、何ともプラグマティズム的というか、そこもかなり共感が持てる。

  • 2019/06/04

  • 以前にも読んだことがあるのだが、どうも内容は忘れてしまった。しかし、この今、爽快感が残っている。明日にも忘れてしまいそうだが。

    巻末に文献を詳細に載せてあるので、その意味でも利用価値があるかもしれない。

    参考までに、「意味」と「同一性」がキーワードらしい。

  • 哲学

  • 修行が足りず、字面を追うだけで頭に入ってきません。いつの日か再読したい。

  • 文章の一文ずつがボリュームある。
    じっくりと取り組むつもりで講義形式を読まないとなかなか頭に入ってこない難しさがある。
    時間をかけて読みたい新書。

  • 小難しく書いてある。読むには忍耐が必要。

  • 読みやすい。わかりやすい。ただ、完全な初心者には少しテクニカルかも。

  • 単語、文章、テキスト全体は、何を指し示すことができるのか?論理とは何か?言語と論理の関係は?意味とはどのような場に発生するのか?。等々、じっくり読めばいろいろとおもしろく勉強できる本。でも読後半年の今、内容はほとんど忘れてしまった。また機会があれば再読したい。

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