現代がトヨタを越えるとき: 韓国に駆逐される日本企業 (ちくま新書 977)

  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066817

作品紹介・あらすじ

ものづくりの雄、トヨタ。わが国の製造業が総崩れのなかで、ひとり気を吐いているかにみえる。しかし、その優位性が、いま揺らいでいる。超円高の長期化、北米市場での競争力低下、新興国市場での苦戦など、いくつかの不安が見え隠れしているからだ。対照的に、驚異的な躍進を続けているのが、韓国の現代自動車。新興国市場では圧倒的な強さを誇り、生産台数でトヨタを追い越さんとしている。トヨタの栄華はピークを過ぎたのか?現代が躍進した秘密はどこにあるのか?日韓の間で起きている大変化を分析する。

感想・レビュー・書評

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  • グローバル攻勢をかけている韓国企業の一つである現代自動車。
    タイトルはトヨタだが、日韓の自動車業界を比較した書。
    それぞれの国内での自動車業界の位置付けから始まり、企業の売上げや利益などの内部情報や、海外生産や開発拠点、マネジメント情報などを時系列に整理して論じており、新書とは思えないレベルに仕上がっています。
    自動車業界の今を知るには、この一冊が最適かと思います。

    現代自動車躍進の以下のキーワードが、印象に残りました。
    そのほとんどが自分が仕入れたサムスンに関する情報と通じており、韓国企業躍進とも言い換えることができるでしょう。
    ・トヨタ生産方式+αとして、ITの徹底活用
    ・モジュール生産
    ・財閥傘下で固めた垂直構造
    そして本書の結末の「トヨタ対現代という比較は、日本対韓国という対比の縮図でもある」という文章に、大いに納得しました。

  • レビュー省略

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:537.09//Ko12

  • 韓国特に自動車業界の盛況ぶりは著しい。
    国をあげての戦略と海外進出への貪欲さ。
    いろんな側面から詳しく書かれた本。
    開発部隊の配置や、いろいろ細かいところには、間違いもありそうだが、詳しく客観的に良くまとめられている。
    日本の自動車メーカーも国も方策考えないといけませんね。

    <メモ>
    韓国に進出する日本企業
    液晶ディスプレイガラスがすべて韓国に進出
    東レなど素材メーカーも
    韓国部品メーカーの現代MOBIS。現代進出先には随伴進出。デンソーやアイシン以上にモジュラー志向が強い。
    ブラジルで特に日韓の差。FF車のハードルで進出規模で躊躇のある日本。自らの強みで勝負しようと血気さかんな韓国。



    目次
    プロローグ 躍進する韓国企業
    日本企業を駆逐する韓国企業
    韓国に進出する日本企業
    研究拠点も韓国ヘシフトする
    中小企業も日本から脱出している
    IT化が進む韓国工業団地
    韓国がリチウムイオン電池シェア世界一に
    韓国企業躍進の秘密を解く

    第1章 韓国企業の底力
    「目標はデンソー」
    「3・11を機に日本依存を断ち切る」
    「GMからも技術力を認められた自動車部品産業」
    急速に技術力を向上させる韓国中小企業
    世界トップ100位にランクする韓国企業
    ボスコの飛躍
    サムスンの躍進ー「週末技術者」と「ムーンナイト」
    輝きを増す現代自動車
    財閥中心の韓国経済
    アジア通貨危機で体質が変わった
    過酷な市場競争
    厳しい労働市場

    第2章 日韓自動車産業発展史
    日韓産業の競争力が均衡した理由は何か?
    日本の自動車産業の発展
    韓国の自動車産業の発展
    日韓における自動車産業の差異
    日本の自動車部品産業の発展
    韓国の自動車都品産業の発展
    日韓の自動車都品産業の差異

    第3章 世界市場での日韓自動車戦争
    世界の自動車市場の趨勢
    日本の自動車産業の現状
    韓国の自動車産業の現状
    生産台数の日韓比較
    日本の主な生産地域
    韓国の主な生産地域
    日本の自動車企業の海外生産
    韓国の自動車企業の海外生産
    覇気のない守りの日本企業

    第4章 マーケティング戦略の優劣
    韓国政府のマーケティング戦略
    自動車産業のために結ばれた韓米FTA
    韓EU・FTAの効果
    企業のマーケティング戦略
    活動する財閥系広告代理店
    護送船団聡連合艦隊
    BRICs市場での日韓抗争
    ブラジルでの日韓自動車戦争
    ロシアでの日韓自動車戦争
    中国での日韓自動車戦争
    インドでの日韓自動車戦争
    海外への随伴進出で威力を発揮する現代MOBIS

    第5章 開発システムの優劣
    開発機能の向上
    日本の国内開発拠点と開発要員
    国内開発拠点
    海外開発拠点
    現代自動車の国内開発拠点
    現代自動車の海外開発拠点

    第6章 部品供給システムの優劣―デンソーVS現代MOBIS
    日韓自動車部品産業現況ーピラミッド型の産業集積
    日韓部品企業売上規模比較
    日本の部品産業集積ー中部・東海地区
    韓国の部品産業集積ー蔚山地区
    日韓部品企業が競合する九州北部地区
    日韓の「貸与図方式」と「承認図方式」
    日韓の生産システム
    購買システム
    日本型生産システムと韓国型生産システム
    現代MOBISの誕生とモジュラー化の方向
    デンソーVS現代MOBIS
    デンソーにない現代MOBISのもう一つの役割

    エピローグ トヨタは現代に敗れるのか
    トヨタの反撃
    さらなる前進を狙う現代・起亜自動車
    現代自動車の高収益率の源泉
    トヨタは現代に敗れるのか
    現代自動車のアキレス腱
    トヨタと現代は日韓両国社会構造の縮図である

    参考文献

  • ウォン安、技術集積、過酷な市場競争に加え、国策としての強力な輸出産業のバックアップ。これらの後押しを受け急速に力をつけてきている韓国企業。手を拱く日本を尻目に懸け韓国一流のマーケティングを世界にじわじわ浸透させている。輸出一辺倒策に危うさはあるものの日本が大きく水をあけられている実態は看過できない。自動車のみならず産業全般にわたる韓国企業躍進の言動力を述べるとともに、併せて意外なアキレス腱も解く。

  • 小林英夫、金英善著「現代がトヨタを越えるとき」ちくま新書(2012)

    * 2008年以降の超円高と11年の原発事故を日本進出のチャンスと捕らえ活動を活発化し、日本カーメーカーへの拡販を推進した。2012年4月に現代MOBISを中心とする韓国部品メーカー15社は、日本の自動車部品生産の中心地である、静岡県の浜松のスズキ本社で技術展示会を開催。その結果として韓国製自動車部品の対日本輸出を開始したし、韓国の現代自動車を使用する個人タクシー業者が東京都江東区を中心に急増している。理由は韓国の現代自動車がタクシー用にLPガス使用仕様の車を日本で売り出し、その車が個人タクシー業者に好評を博しているからである。品質は日本車と大差がないのに、ウォン安も手伝って価格が3割安い。なぜ江東区かといえば、この地域に現代自動車のサービスステーションが整備され開始され始めているためである。

    * 現代は、右手にウォン安、左手にFTAを振りかざして世界市場でのシェア拡大をしているといっても過言ではない。しかも競争相手の日本は、超円高に加えて、東日本大震災、タイの洪水という痛手をこうむって能力減退状況であり、FTA、TPP問題で国論が統一できない状況であれば、韓国FTAの切れ味は鋭いものがあるといえよう。

    * 現代自動車の市場調査は精巧をきわめる、現代、サムスン両社がいかにマーケティングを重視しているかは、韓国を代表する2大広告代理店が、サムスン財閥の第一企画と現代自動車のイノーションの2社であることに象徴されている。

    * 国家の通商政策という意味では日本の活での護送船団式と比較すると、韓国のそれは連合艦隊方式であるといえる。1980年代までの日本の貿易重視の輸出政策は通産省が前面にでる護送船団方式だと称された。それゆえにアメリカをはじめとする各国から強い批判をあびた。今日の韓国財閥の企業保護を目的とした市場開拓での国家保護、低為替、FTA政策、企業の技術開発支援、租税上の優遇措置、出先市場でのロビー活動などは、かつての日本のそれを上回る国家保護政策の展開だということができる。サムスン、現代、キア、LG、ポスコへの国家の至れり尽くせりの保護支援政策は護送船団などという生易しいものではなく、その強力ぶりを考えれば連合艦隊方式であるといえる。

    * 海外生産のなかでも韓国企業がその生産・販売台数を急増させているのがBRICsである。また現代キアグループが海外展開する際に、忘れてならないことは、必ず、現代キアの1次メーカーである現代MOBISが進出することである。

    * トヨタが現代に敗れるかという問いに関しては、条件つきではあるが一時的にはトヨタは現代に抜かれる可能性も想定する必要がある。  

    * 現代も問題点は抱えている。ひとつは現代自動車の循環出資構造である。グループ内の株の持ち合いを通じて現代MOBISに集中するようにできている。グループの総帥は労せずして資金を独占し、財閥企業をコントロールしている。2つ目はグループ内取引の比率の高さである。たとえば広告では49%、物流では83%に達しており、排他的なグループ内独占である。3つ目に、過酷なまでに部品企業に対する原価低減の要求とその見返りの少なさである。つまり、1次、2次サプライヤーを抑圧することを通じて収益を増加させているが、長い目でみれば反発を買って、得るべき利益が得られない状況なのである。4つ目は非正規労働者に対する差別である。賃金や待遇の差では天と地との格差がある。こうした身分格差が生み出す労使関係の不安定性が現代が関わる課題である。

  • ここ数年の韓国の強さというのは何なのだろう。素材や自動車という、裾野も波及効果も大きい分野ですら日本を追い抜こうとしつつあり、著者はトヨタ自動車と現代自動車の関係が両国の産業の縮図であるという。

    日本の産業界はかつて護送船団方式と揶揄されていたが、韓国はもっと強力な連合艦隊だという。国を挙げての支援、財閥よる意思決定の早さなども強みとして挙げられているが、やはり日韓の最大の違いは通貨危機の際、韓国では財閥の事業を見直して、電機はサムスン、自動車は現代、など集約し、国内で過当競争にさらされることなく海外に打って出られるようにしたことが大きいのだろう。

    財閥という旧来の統治システムでは、国家が近代化されるにつれ格差の問題などが大きくなり、いずれ機能していかなくなるとは思うが、日本の現状、特に電機業界の惨状にとっては参考になることも多いように思った。

  • 需要が韓国、中国で伸びてきており、日本国内では尻つぼみ状態なので、今後の先行きを間gなえれば勧告、中国へ生産基盤をシフトするのはやむをえないこと。

    サムスンは海外で製造している。アップルのようにOEMに頼らない。その市場に合致した製品を開発している。

    韓国政府のマーケティング戦略。
    成長市場では徹底した宣伝と韓国ブランドの定着を目座s9いている。

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著者プロフィール

1943年東京生まれ。東京都立大学法経学部卒。同大学大学院社会科学研究科博士課程修了。駒澤大学経済学部教授を経て、現在早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
著書に『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』(御茶の水書房)、『昭和ファシストの群像』(校倉書房)、『大東亜共栄圏』『日本軍政下のアジア』(以上、岩波書店)、『満州と自民党』(新潮新書)、『満鉄調査部―「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』『ノモンハン事件』(以上、平凡社新書)、『日本近代史を読み直す』(新人物往来社)、『日本の迷走はいつから始まったのか』(小学館)、共著に『満鉄調査部事件の真相』(小学館)、『一九三〇年代のアジア社会論』(社会評論社)など多数。

「2011年 『論戦「満洲国」・満鉄調査部事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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