日本の転機: 米中の狭間でどう生き残るか (ちくま新書 984)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066893

作品紹介・あらすじ

30〜40年後、米中冷戦の進展によって、世界は大きく変わる。視野を広げて考えるならば、両大国の狭間にある日本にとって、やがて訪れる勢力均衡の大変化は死活の問題である。本書では、太平洋体制と並行して進展する中東の動き-とくにイラン、イスラエル、米国の三角関係-を分析し、巨視的に世界情勢を読み解く。その補助線として「核」を俎上にのせ、人類は核兵器のコントロールがいかに可能なのかを問う。祖父として孫の時代を心配する学者が、徹底したリアリズムをふるって日本の経路を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  前半は米中の国力が相対的に逆転していくとの前提に立ち、いつまでも米国へ従属的に依存するリスクを指摘し、いつか親中国に外交政策をシフトする可能性を示す。
     後半はNPT(核不拡散条約)の形骸化に伴い、もはやNPT自体が核戦争のリスクとなっているとの分析から、NPTの保全を放棄し、むしろ「核の傘」を制度として国際法で規定することを提案する。これを日本主導で行い、国際貢献による国力の回復を図れという。
     前半の中国台頭のくだりと、後半の核管理の話が今ひとつ繋がっていないことはさておき、ポストNPT体制は興味深い提案だとは思う。

    全体として以下の2点で著者の主張に疑問を感じる。
    ①中国が遠くない将来米国に比肩する国力を本当に持つようになるのか? 一人っ子政策の影響で既に人工ボーナス時期が終焉し、今後急速に老齢化していく国である。社会も急激に不安定化している。現下の経済状況と技術者の数だけでは根拠が弱いと感じる。
    ②NPTに変わる新制度によって日本が米国の傘から徐々に抜け出す機会を得ると主張するが、被爆国日本がNP国を選択する可能性がゼロである以上、代替報復提携国は米国以外にありえないのでないか? それなら現状と同じである。
    ましてや仮に中国が近い将来覇権国になったとして、日本が中国の核の傘に入る決断をするだろうか? これは損得や利害の問題ではない。
    中国を仰ぎ見るくらいなら、多少ならず者でもUncle SAMを選択する日本人の指向は100年経っても変わらないと思う。何しろ中国とは1500年もの間微妙な関係を保ってきたのだ。朝貢国にもならずに。

  • 23期の入ゼミ課題の一冊でした。以前は先生の著書が入ゼミ課題となる事が多かったので、23期一同戸惑いながら取り組みました。

    管理人の感想:提案内容がかなり過激でした。「現実的なのか?」という疑問もありましたが、国際政治に対する現状分析はかなり鋭いです。

  • 必ずしも頻繁に外交に関する書物を読まないわたくしにとっては、多くのインスピレーションを与えてくれる本であった。世界の中で中国がどのような存在になっていくのか、そして、それを前提に、日本はどのような役割を果たしていくべきなのか。

  • アメリカが核兵器において優勢であることは、あまり足しにならない。なぜなら、まず中国が報復能力を失わないから。そして第二に、問題となるアメリカの国益がアメリカの生存にとってそこまで重要ではないからである。結果として、米中の対立がサイバー次元から経済次元へと会談をあがる可能性が高い。両方の会談では、アメリカの弱い面を疲れ、アメリカにとってマイナスの面が大きすぎる。

  • 日本がこの先の米中二大国に挟まれた中でいかにして生き残るかという話。第一部は米中の力のバランスの状況、第二部は核不拡散体制の問題点の指摘、第三部は以上を踏まえて議論の総括がなされている。
    新書なのでこんなこと言っても仕方が無いが、厳密な検証がなされていない。また、議論の粗っぽさを感じるところも少なからずある。しかし、第二部の主張は斬新で一読の価値はあると思う。日本ではまずこんなことは聞かない。関連文献として、7、8月のFA誌のウォルツの論考がある。

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著者プロフィール

ロナルド・フィリップ・ドーア(Ronald Philip Dore)
1925年2月1日 - 2018年11月13日
イングランド南部ボーンマス生まれ、イギリスの社会学者。ロンドン大学名誉教授。専攻は日本の経済および社会構造、資本主義の比較研究で、日本の労使研究で著名な研究者。
1947年、ロンドン大学を卒業。現代日本語を専攻していた。1950年に東京大学に留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業後、サセックス大学、MITなどを歴任した。
主な代表作に、『働くということ』『金融が乗っ取る世界経済 - 21世紀の憂鬱』『誰のための会社にするか』『学歴社会』『幻滅』『日本型資本主義と市場主義の衝突』など。

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