生き抜くための地震学: 京大人気講義 (ちくま新書 1003)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 183
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067012

作品紹介・あらすじ

未曾有の震災も過去となりつつあり、被災地も平穏な日々を取り戻し始めた。本当の危機は、しかし、いま、迫ってきている。西日本を襲う南海トラフ巨大地震は、2030年代に起きるという。しかもそれは首都圏も直撃する、最悪の「五連動地震」となる可能性が高い。さらに日本列島の活火山は噴火スタンバイ状態にある。だが、恐れすぎてはいけない。地震のメカニズムを理解し、地球科学の思考法を体得すれば、着実に、巨大災害は減らせるのだ。本書を読んで一人一人が自律して行動することが、明日の震災を「生き抜く」ための第一歩となる。

感想・レビュー・書評

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  • 4月から授業が始まって教科書を読むことが多くなって、なかなか他の本を読んでいませんが、今月末に地震学入門の授業が金沢であるので、そのための予習の意味も含めての一冊。
    前半は大地震発生のメカニズム、後半は減災のための実践的な内容の本でした。首都圏での地震における帰宅困難者向けの帰宅支援マップを使い、東京丸の内から千葉県松戸市まで実際に歩いてチェックする内容はなるほどって思う視点がたくさんありました(私は会社と自宅が徒歩1分だけど(^^;)。日本は、プレート構造を思えば必ず地震は起きるという運命にある立地。将来の損害を考えずに便利だからと首都集中が続く姿を、戦争の時代に投影して現在は「負ける戦争から直ちに撤退する時期」と言っています。10年前に書かれているけど、文化庁の移転くらいしか分散化は進んでいないですね。

  • 2022.09.30

    いわゆる「南海トラフ地震」や富士山の噴火など、これまでの地震の歴史を交えながら必ずくると言われている大震災に向けてどう行動するべきかを理解することができた。
    防災のためにあれをやろう!と強く意識するのではなく、日常の中に溶けこませていくことが大事。
    例えばいつも持ち歩くカバンの中に飲料水や軍手を入れておくことも大事。
    最も読んでいて素晴らしいと思ったのは東日本大震災で生まれた大量の瓦礫を使って防波堤を作る仕組み。
    次に津波が来たときにその勢いを抑えることはもちろん、本来ゴミになってしまうものを再利用する考え方も素晴らしい。

    世の中には防災に関する知識が溢れている。
    「とりあえずこれを買っておけばいい」知識もあるが、なぜそれが必要なのか、防災に関する根本的なところを知ることができる良書だった。

  • 2030年代、恐しい時代到来。もう生きていないかも。筆者の言うとおり、日本は間違いなく東日本大震災後、地殻の活動期に入った。
    いつでも自分が被災者になりかねない。首都圏直下型地震は、ビルが林立している東京では火災旋風が恐ろしい。テレビのシミュレーションで知っているので、改めて恐ろしいと思う。巨大地震が誘発する富士山噴火。そして東海・東南海・東海の各地震は「三連動」タイプが起こることが確実視され、発生前から「南海トラフ巨大地震」もしくは「西日本大震災」と名前が付いている。そして、東日本大震災よりも1ケタ大きな災害になる可能性があり、建物倒壊率は5倍。
    地震を防ぐことはできないけど、地震に備えて自分に今できることを知ることができる。地震活動や火山活動が活発になっている今、沢山の人に読んでほしい一冊、2030年代を生きるために。

  • P224 土手の花見➡結果防災
    P232 濱口悟陵(ヤマサ醤油7代目)➡和歌山県広村での稲村の火(1854安政南海地震)、その後の防波堤建設、

  • 「サイエンス・ブック・トラベル」から。

  • 2014年5月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    通常の配架場所: 1階文庫本コーナー
    請求記号: 453//Ka31

    【選書理由・おすすめコメント】
    東日本大震災から3年半が経とうとする今、地震について知り、どのように自身を守ろうとしていけばよいかが書いてあり、興味を惹かれたから。
    (化学科2年)

  • 「3.11」の後に書かれた、地震を中心とした地学・防災学に関する一般入門書。

    「日本周辺でもM9クラスの地震は普通に起こりうる」という、3.11後に常識化した考え方を踏まえた地学一般書。東海・東南海・東海の各地震は、3連動タイプが起こることを前提に被害などを説明していることが特徴的。
    また貞観地震(869年)の前後に富士山を含む日本列島の火山活動が活発化したことを踏まえ、火山活動についての説明も入れている。著者の専門が火山学、ということもあり、こちらも踏み込んだ内容まで触れている。

    今までの地学系一般書との大きな違いは、防災学についての内容を大きく扱っていること。「帰宅支援マップに従って歩いてみた」というのはフィールドワークをやってる著者らしい一節ですが、他にも防災グッズについての解説もある。
    従来の地学一般書であれば「防災情報はなかなか正確に伝わらない」の一行で済まされていたような箇所が、かなり踏み込んで解説されているのも特徴的。昔の「公的機関から市民へ」という情報伝達モデルではなく、双方向的なコミュニケーションや互助的コミュニティを考察した上での防災情報伝達モデルを元に詳しい解説が行われている。

    「京大人気講座」という名称から、関西向けな内容が多いのか、と思っていたのですが、関東についての記述も多かったりして読み手の地域問わず読める一冊。

    ただし、防災学的な分野に記述を割いている分、地学についての情報量はそれほど多くない。地学により深い興味のある人は、作中で触れられている関連一般書にも触れた方がいいと思う。

  • ・ただ震災用品を揃え備蓄しているだけで安心してはいけない。

    ・「これはたいした異常じゃない」という思い込み=同化性バイアス

    ・「異常はあるけど皆行動してないしまだ大丈夫」という思い込み=同調性バイアス

    ・二つのバイアスによって、人間はとっさの出来事に対して避難行動を取りにくいように出来ていることを自覚する。

    ・重要なのは日ごろからのイメトレと危機状況のシミュレーション。普段の生活の中で「今地震が起こったらどこにどうやって避難し誰にどうやって安否を知らせるか」を想像しておくこと。

    ・専門家が一方的に啓発するだけでは、震災の被害は減らない。

    ・好きな防災グッズを色々揃えたり、散歩がてらに避難経路の見直ししたり、地図を読み込んだり、当事者参加型の楽しい減災、結果防災が望まれる。

  • すばらしい本。具体的、実践的でとてもよかった。この本の値段は800円だけど、たった800円で本当に命を救えると思った。大切な人にプレゼントしたい本。

  • この本を読んで、災害時帰宅マップを買った。著者も帰宅マップを片手に実際に歩いた体験が書かれており、フィールドワーク的な要素があって面白かった。

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著者プロフィール

鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
1955年東京生まれ。筑波大学附属駒場中・高等学校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。「京大人気No.1教授」の「科学の伝道師」。著書は『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『やりなおし高校地学』(ちくま新書)、『地学のツボ』(ちくまプリマー新書)など。

「2021年 『100年無敵の勉強法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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