- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480067425
感想・レビュー・書評
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ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズの思想を読み解きながら、社会契約論の思想とその意義について考察をおこなっています。
ホッブズに関しては、自然状態から社会契約に至るプロセスにまつわる「ホッブズ問題」が取り上げられ、続くヒュームの章では、「コンヴェンション」によって社会契約論を批判したヒュームの思想のうちに、原理と史実との間を往復することで、秩序の危うさを顕わにする「ホッブズ問題」を消し去っていたことが確かめられます。
また、ルソーの章では、彼の「一般意志」を理解することの難しさが語られ、続くロールズの賞で「無知のヴェール」に関する議論を参照しながら、そこにルソーの「一般意志」の思想が引き継がれていることを指摘し、ロールズの正義論ををヨーロッパの伝統的な政治思想史の中に位置づけることが試みられています。
大学の授業などで、ルソーの一般意志は単なる全体の意志とは異なると聞かされて、何となく理解したような気になっていましたが、一般意志という概念を理解することの難しさが率直に語られるとともに、その内実について深い考察が展開されていることに興味を覚えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後のロールズベタ誉めで笑ってしまった。面白い本。
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社会契約論とは超簡単に言うと
人と人が約束をし、その約束を守っていくこと
と解釈した。
それが広がっていくと社会同士の約束、国同士の約束のようになっていくのであろう。
その社会契約の部分においてはなんとなく、めちゃくちゃなんとなくであるが何とかついていけていたような気がする。
ただ「正義のニ原理」などが出てきたあたりからもう文字が上滑って上滑ってしょうがなかった…
理解をするしようとすること自体がリベラルアーツの分野では難しく、おこがましいとも感じるがやはりよくわからない。
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ジャンル:リベラルアーツ
出版社:筑摩書房
定価:1,012円(税込)
出版日:2013年11月10日
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重田園江(おもだ そのえ)
1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部、日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授。専門は、現代思想・政治思想史。フーコーの思想を、とりわけ「権力」や「統治」といった主題を中心に研究する。また、社会科学・人間科学への統計の応用史を掘り下げ、さらには「連帯」と「正義」をめぐる哲学的探究をつづける。著書に『ミシェル・フーコー―近代を裏から読む』(ちくま新書)、『統治の抗争史―フーコー講義 1978-79』(勁草書房)、『隔たりと政治―統治と連帯の思想』(青土社)などがある。著者最新刊『ホモ・エコノミクス――「利己的人間」の思想史』(ちくま新書)。
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flier要約
https://www.flierinc.com/summary/3104 -
解釈としてまずいところもあるのかもしれないけど、哲学系中上級読みものとして完成されていると思った。引用が豊富で手探りで哲学書読んでく感じがありありと示されていて、ルソーのとこで挫折してしまうのもいい。
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ロックを除外するという暴挙?に出ており、良くも悪くも著者の個性が出すぎている。よって、教科書的とは言えないし、入門書とも言えない。多少は勉強した事ある人が違った考えにも触れてみたいならという感じ。
ルソーとロールズの接続については一般的な思想史の本ではあまり見かけないので興味深い部分はある。 -
東2法経図・開架 B1/7/1039/K
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社会契約論者3人(ホッブズ、ルソー、ロールズ)と、彼らに対置されるヒュームについて分かりやすく、そしてある種の感動を伴う様な文章で描いた一冊です。社会契約論では、ロックも有名な1人ですが、本書では「一度限りで結ばれる社会契約」に着目されているので取り上げられていません。その分、取り上げられている4名の偉人については、人物相互の関連についてもよく理解でき、なぜこの4人なのかが納得できました。
本書は非常に面白い一つのストーリーとして思想史を描いていると感じられましたので、個別の書評は控えようと思います。ホッブズは果たして絶対王政を擁護したのだろうか、ヒュームは本当に社会契約論を一貫して拒否出来たのだろうか、ルソーはなぜあれほど分かりづらいのか、ロールズはなぜ「正義」にこだわったのかなどなど、色々な問いが生まれては消え、時々残りながらも読み進めていきましたが、社会契約思想の世界にドップリ浸れる本ですので是非オススメしたいと思います。 -
ロールズの考えを知りたくて読了。まずは社会契約論についての論告から、その思想的系譜として、ホッブズ、ヒューム、ルソーについて論考。ルソーの考えはきちんと理解しようとすると難しい。そして、そのルソーを理解できていないとロールズの理解も難しい。入門書なので理解しやすいはずだが、それでも理解しにくかった。印象に残ったのは、「一般性の次元は、人が他者との隔たりの前に立ち尽くすとき、いつも意識する次元なのだ」「関わりたいのに関われない具体的かつ圧倒的な他者を前にして、その人も自分もそこに生きる社会の次元、一般性の場に立たざるを得なくなる」そして、「そこから出発して、何をどう変えなければならないのか、みなが納得できる社会的ルールとは何かが問われることになる」
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【目次】
目次 [003-008]
はじめに 009
「社会契約論」とはどんな思想だろうか/国家vs.個人――戦後日本と社会契約論/いま社会契約論をどう読むか/市場の秩序と約束の秩序/約束から一般性へ
第1章 ホッブズ 025
ホッブズの生涯と著作
1 世界の運動論的把握とは 030
リヴァイアサン――ホッブズの社会契約論/機械論的無神論者ホッブズ?/すでにある秩序を拒否すること/世界は運動と関係からできている/熟慮とは何か/既存の秩序に依拠しないことの異様さ/自由意志は自由か/自由と必然性について/ホッブズとニーチェの世界観
2 政治社会の再構成とホッブズ問題 054
自己保存の自然権と自然状態/自然状態で人は自由か/ホッブズ問題と囚人のジレンマ/ホッブズはホッブズ問題を解いたか/三つの代表的解釈/政治社会が生まれる場所
3 約束の力 069
一つの契約が、結合と主権者を同時に生み出すこと/権利は一斉に譲渡されるのか/信約とは何か/信約は自然状態においても守られるのか/約束の力/リヴァイアサンの力は約束の力である/ホッブズの平等の強さと深さ
第2章 ヒューム 093
ヒュームの生涯と著作
1 秩序の起源はどこにあるのか 099
「原初契約について」――社会契約の批判/社会契約は無効か?/契約の存在を「事実として」否定したあとに、何が残るのか
2 コンヴェンションとホッブズ問題 106
ヒュームにおける約束の限定/情愛の関係と約束の関係は分けられるか/コンヴェンションの導入/社会契約とコンヴェンションの異同/ヒュームとホッブズ問題/「原コンヴェンション」の想定
3 政治社会と文明社会 121
統治の原理的な起源は約束ではない/「だが、やっぱり約束があったかもしれない」って、どっちなんだよ!?/商業社会の発展が文明化をもたらす/原理と史実の往復によって、ヒュームが秩序の危うさを消去すること/私は何のためにこの本を書いているのか。そして、ルソー
第3章 ルソー 135
ルソーの生涯と著作/ルソーをどう読み解くか
1 ルソーの時代診断――「政治経済論」 143
ヒュームとルソーの文明化への態度/「政治経済論」/国家の正統性への問い――ルソーの「ポリティカル・エコノミー」/富と商業についてのヒュームの見解/ルソーの企図は何だったのか
2 ルソーの歴史観――『人間不平等起源論』 160
ルソーの歴史描写――「6」の字の歴史/社会契約――歴史に楔を打ち込むこと/なぜ新しくはじめられるのか
3 契約はどんなものか――『社会契約論』 170
社会契約の条件――シンプルにして最強かつ自由/契約の条項はどんなものか/契約の一方の当事者が全体であること
4 一般性と特殊性――一般意志について 182
一般意志は特殊意志の総和ではない/個の視点と全体の視点/一般性と特殊性の対比/「一般意志」の概念史/モンテスキューからルソーへ/神学の反転/一般性と多様性、あるいは政治的自由について/一般意志は過たない
第4章 ロールズ 203
ロールズの生涯と著作/なぜロールズを取り上げるのか
1 ロールズのヒューム批判 211
功利主義とヒューム/「共感」への疑問/一般的観点と思慮ある観察者/「最大多数の最大幸福」と共感のつながり/一般は特殊の延長にはない――ヒューム、ロールズ、ルソー
2 正義の二原理 227
ロールズの狙いは何か――社会の基本ルールを定めること/原初状態と無知のヴェール/特殊なエゴイズムとその乗り越え/自由の保障――第一原理/機会均等原理――第二原理①/格差原理――第二原理②/エゴイズムの抑制が、なぜ二原理を選択させるのか①――第一原理/エゴイズムの抑制が、なぜ二原理を選択させるのか②――第二原理
3 ルソーとロールズにおける一般性の次元 253
『政治哲学史講義』における各思想家の評価/利己心と相互の尊重――ロールズはルソーをどう読むか①/文明化と社会契約――ロールズはルソーをどう読むか②/一般意志はなぜ過たないか――ロールズはルソーをどう読むか③/一般性の次元
おわりに 社会契約論のアクチュアリティ [269-279]
注 [280-284]
文献案内 [285-297]
謝辞 [298-299] -
やっぱりルソーは難しいんだ。しかも非常識なおっさんだったんだ。作者も理解できない、と言いながら一生懸命その後の学者の説明など引用して読み解こうとして頑張ってついて行こうと思ったけど、途中で図書館に返してしまった。古典独特の重厚感、当時の常識を破壊した迫力を垣間見れる入門書。