思考実験: 世界と哲学をつなぐ75問 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067517

感想・レビュー・書評

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  • 散発的な浅く広くつまみ食い感で少し消化不良

  • 思考実験を集めた本を読みたくて、あれこれ調べた末に見つけたのがこの本。単に思考実験を羅列したのではなく、いくつかのテーマに分け、作者の思索がきちんと伝わってくる書き方がよかった。

    自分とは何か、他人とは何か、道徳とはどういうことか、生きることに価値はあるのか。そういった根本的な問いかけに対して、哲学書から文学、映画までも「思考実験」と捉え紹介してくれる。大変興味深かった。作者が引いてくれるわかりやすいガイドラインに沿って、自分も一緒に考えられる感じて、興味深く感じた。

    やや残念だとすれば、本の量に対して多くのテーマを盛り込みすぎたような感じで、ひとつひとつについての掘り下げが中途半端に感じたことだ。まあ、それはこの本が一種の入門書というか手引き書で、さらに突っ込んで考えたければ自分で進んでいけ、ということなのだと納得することにしよう。

  • 哲学的な問題を具体的に示す75の思考実験を紹介しながら、哲学上のいくつかのトピックとそれについての著者自身の考えが語られている本です。

    とくに倫理学では、われわれが採用しているはずの倫理的な原則を明らかにするために思考実験を提示しながら議論が進められていくというスタイルがしばしばとられますが、本書でもそうした思考実験のいくつかを紹介しながら、わかりやすくなにが問題になっているのかということが説明されています。

    哲学における思考実験の役割について考察している本だと思って手に取ったのですが、そうした議論の掘り下げはあまり見られなかったように感じました。

  • ・個人は他人との関係のうちでしか、自分を規定できないのか?
    ・人間はみな死を宣告されている死刑囚と同じである

  • 解りやすく書いてあるが、後半からネタ切れ感が否めない。

  •  人間をめぐる様々な問題を考えるための事例をもとに、哲学の理論を学ぶもの。「自己」、「他者」、「倫理」、「社会」の4つのテーマ、75の思考実験が取り上げられている。
     こういうのは有名なサンデル教授の本でも学ぶことができるが、著者曰く「奇抜なアイデアやpuzzleのような形式がしばしば話題となる。ひとつひとつの『思考実験』が、前後の脈絡のないままに、いわば頭の良さを競うように提出されるのだ。しかし、この方法では。『思考実験』のそれぞれが何を目指しているのか、あまり明確にはならないように思われる」(p.10)、とか「最近の『思考実験物』は、奇抜なアイデアを競って、自己目的化しているように見える。『思考実験』は、何かを構想するためにこそ案出されるもので、一つの手段である。パズルのように、それだけで楽しむものではないと思う。」(p.262)とあり、古典が参照されたり、理論の基本モデルも含めて「思考実験」の枠組みに入れたり、結構堅実な路線が貫かれている。
     個人的には「倫理」のテーマが一番興味深かった。カントの「嘘をつくな」は有名な話だが、「いつもはホントが語られるからこそ、ときどきウソをつくことが有効になる。ぎゃくに発言がほとんどウソであれば、ウソをつきたくても、誰も聞いてくれないだろう。」(p.139)ということで、さらに「『ウソをつかない』という態度を身につけなくては、ウソをつくことさえ不可能になるだろう。」(同)ということで、だからこそカントのいかなる場合も嘘をつくな、という要求が意味を持つ、というのに納得した。また、脳科学ブームがだいぶ前に起こり、もう下火になっている感があるが、「脳科学がどんなに発展しても、倫理学が不要になることはない」(p.187)として、「その理由は、脳科学によって解明されるのは、人びとが道徳的な判断をどのように行っているかであって、あくまでも事実的な問題である。しかし、事実をどんなに集めても、『それが善いか悪いか』を決定することはできない。」(同)、「一時期の流行のように、なんでも脳科学によって分かるかのようなイメージをふりまくことは、科学的な態度からは程遠い。そうでなければ、脳科学の有効性も見えてこない。」(p.188)という部分も、分かりやすかった。(17/05/23)

  • 自己、他者、善悪、社会、という大枠で8章に分けて、具体的なエピソードを引いて、思考実験を提示し、あなたならどう考えるか、と問いかけ続ける一冊。白黒はっきりつけて、答えを出すなんてできないけれど、問題のありかと、とっかかりは教えてくれる。/「私」が「私」であるために、心理的連続性、身体的連続性が必須に思われるが、それが満たされれば、それはもう一人の「私」なのか? 「ある時点の人物と、別の時点の人物は数的に同一なのか?」/それが「本物の世界」ではないとしても、その世界に生きる人にとっては、リアルであることは間違いない/自分自身の独立を確立するためにこそ、私は他の人々との連関のうちで生きている。/記号を適切に処理できることは、それを理解することとは別なのだ/ル=グウィン「オメラスから歩み去る人々」(1973)、一人の少女の不幸の上に成り立つ、オメラスの人々の幸福/マイクル・クライトン「ターミナル・マン」(1972)、脳にマイクロチップを埋め込み、暴力的な脳を治療するという発想/事実をどんなに集めても、「それが善いか悪いか」を決定することはできない。/「アルジャーノンに花束をを」では、知能の低い青年に外科的手術を施して、知能を向上させた。それに対して「ハリスン・バージロン」(カート・ヴォネガット 1961)では、能力の高い者に外的なハンディキャップをつけて、能力を低下させることが求められた。/不老不死の王を描いた、ボーヴォワール「人はすべて死す」/断片的なものは、原文にあたってみたく思った。

  • 哲学における思考実験はすごく興味があるし面白い。世の中のあらゆる問題提起を思考実験していくこと物事の本質を捉えることが可能になるし、逆にどこまでいってもたどり着かない問題にもなりうる。非常に面白かったです。

  • 内容が広く浅すぎて、それぞれのトピックの面白さが感じられる前に話題が終わってしまう感じ。 ただ、脳科学が近代的な「責任主体」という発想の破綻を示しているのかもしれない、という指摘は面白かった。でもその後の議論が「道徳ピル」という、現在では技術的に不可能な話題に飛んでいて、残念だった。我々はそう簡単に責任主体というアイデアを放棄できないだろう(その放棄は法のみならず日常生活にも大きな影響を及ぼすはずだ)から、そのあたりのジレンマについてもっと色々議論できないものか。

  • 聞いたことのある映画や小説まで思考実験として考察され、読んでいくうちにあらゆる想像は哲学的な思考に昇華できるのではないかと思うようになった。人間転送器2(だったかな)は自分のコピーを火星に送り込むもので、とても印象深く時折思い出してはその状況を噛み締めています。

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著者プロフィール

玉川大学文学部名誉教授。九州大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)九州大学。専門分野:哲学・倫理学。主要業績:『異議あり!生命・環境倫理学』(単著、ナカニシヤ出版、2002年)、『ネオ・プラグマティズムとは何か』(単著、ナカニシヤ出版、2012年)

「2019年 『哲学は環境問題に使えるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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