記憶力の正体: 人はなぜ忘れるのか? (ちくま新書 1077)

著者 :
  • 筑摩書房
3.61
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067807

感想・レビュー・書評

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  • これまで「記憶」というものを、自分で好きなように増強することも、また恣意的に消し去ることもできないものと考えていたが、そのような固定観念に緩やかな一撃を加えてくれる本。題名からは記憶術が連想され、そのような点に触れた箇所もないわけではないが、本書ではむしろ「忘却」のポジティヴな側面にスポットライトが当てられている。

    興味深かったのは終章、ネガティヴな記憶の意図的な忘却方法について。記憶とそこから形づくられる「物語」=人生を固定的なものと捉える限りでは我々にトラウマから逃れる術はないが、これらの記憶を新たな意味づけ(語り口)の元で想起することにより、「物語」をそれまでとは違った視点から書き換えることができるとする。つまり筆者は「忘却」を記憶そのものの抹消ではなく、記憶に纏わるネガティヴな感情のリライトと捉えているのだ。人間は常に可変的な、未来に向かって開かれたものだとする筆者の見方には共感を覚えた。

    全般を通じて、辛い記憶を持つ人々への柔らかな視線が感じられる。語り口も優しく読み易い。

  • 面白い本だった。記憶の定着のためのハウツゥー本かと思ったが、心理学の本だった。記憶は不思議だ、どうやって保管されているかもわからないけど、感情を左右させる。記憶を思い出すのに、状況とか匂いと言う一説があったが、音楽もあるように経験上思った。これはあの時聞いていた曲だのように情景が思い出されることがある。

  • まとめの終盤のあたり253ぺージ周辺が、とても参考になった。
    ナラティブ・セラピーは支配的だった物語(ドミナント・ストーリー)を別の物語(オルタナティブ・ストーリー)に書き換える作業のことをいう。物語は人の心の傷をいやす力があるというのは、こういうことなのかと知ることができた。

    解離傾向が強いと例外なく催眠にかかりやすい(103ぺージ)

    トラウマ体験の本質は、圧倒的な恐怖感にある。(117ぺージ)

    家族による虐待は根源的な信頼を失う(102ぺージ)
    虐待などの「ことばであらわす」ことが出来ない体験は、深いトラウマとなり、それは感覚的な断片あるいは身体の記憶として保存される(76ぺージ)

    言葉で言い表せない、伝えることが出来ない出来事は、身体に記憶される。
    酷似したことが起こるとフラッシュバックが起きる。

    他者に向かって語れるようになることで、記憶の統合がなされる。ことばで語らない限り、その出来事は辛い形のまま心の底に残る(118~119ぺージ)


    人の記憶と感覚は深く結びついていることがわかった。
    とても勉強になった。もう一度ゆっくり読んでみたい。読書ノート12にメモ。

  • このタイトルの本を手にとって読み始めてすぐに、「なんだか読んだことがある気がする」と感じて過去の記録を振り替えると2年前に読んでいたことがわかった、というのは皮肉なめぐり合わせだった。本書では心理学からのアプローチで記憶力を研究している。

    数々のテストは被験者の数が少なく(代表して載せているだけなのか?)、やや眉唾物なものが多いのは気になる。しかし自らに置き換えて「急に記憶がよみがえる瞬間」があるというのはよくわかる。その瞬間が、視覚だけでなく匂いや音楽、特定の行動から呼び起こされる仕組みが解説されている。医学の観点(脳の仕組み)と連動して解説されていれば説得力が加わったように思える。

    「記憶が都合が良いように書き換えられる」例が多く挙げられている。他の本で読んだことだが、人間(動物全てか)が生きていく上でこの集成が役に立ち、「経験」として知恵にも繋がっていく。記憶と忘却それぞれが、利にかなったものであることを改めて理解できる。

  • 忘れる体得するまで 約2年かかることわかった

    勉強になった ためになった

  • うん。
    記憶というものについての全般。広く浅く。

    特段気になったトピックはない。

  •  半分くらいまで退屈で何度か投げだそうとしたが、最終章の「忘却を使いこなす」に感心した。
     忘れてしまいたい過去の体験もある。記憶するばかりが能ではなく、忘れる力「忘却力」も人には必要。
     体験とは、災害や戦争或いは楽しかった思い出など、本人にとって動かしがたいもの、「経験」は次の行動に役立てられる記憶、と定義するなら、体験=過去に閉ざされた記憶、経験=未来に開かれた記憶 ということができる。
     自分の努力で記憶を消し去り「無」にすることはできない。しかし、記憶を変質させることはできる。
     それには、自分の記憶を様々な「語り口」で眺めなおすこと。
     体験は普通固定された視点からしか思い出されない。
     それを様々な視点から、様々な語り口でもう一度眺めることで「体験」を「経験」に変質させていくことができる。

    目次
    第1章 「忘れる」とはどういうことか?
    第2章 「忘れられない」の正体
    第3章 「思い出せない」理由
    第4章 記憶は意識を超えていく
    第5章 忘れないと覚えられない
    第6章 記憶を強くするヒント
    終章 忘却を使いこなす[/private]

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 新書とは思えないほどの、最新の成果の反映と網羅性。そして、新書らしい読みやすさ。記憶について興味がある人はぜひ読んでみるべき。

  • 最初の十数ページのみ

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著者プロフィール

高橋雅延' 京都教育大学卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程を学修認定退学後、1986年から同助手。1990年から京都橘女子大学講師、助教授を経て、1994年から聖心女子大学で教鞭をとり、現在、聖心女子大学教授。京都大学博士(教育学)。;主要著書:『認知と感情の心理学』(岩波書店)、『心のかたちの探求ー異型を通して普遍を知る』(東京大学出版会)、『変えてみよう! 記憶とのつきあいかた』(岩波書店)ほか多数。

「2023年 『 家族関係の闇が引き起こす「抑うつ」と、その解放』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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