駅をデザインする (ちくま新書 1112 カラー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068163

感想・レビュー・書評

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  • 国交省「公共交通機関における外国語等による情報提供促進措置ガイドライン」には
    むやみな多言語化はせず
    ユニバーサルデザインの観点から
    日本語、英語、ピクトグラム
    の三種類を基本とするのが良い。
    最近は、中国語、韓国語とごちゃごちゃしすぎの感がある。Simple is best.

  • 駅のデザイン課題(自社思考、主役存在感の欠如、過多なサイン)→実際の駅デザインの長所▪短所→今後の駅デザイン課題の解決方法(ユニバーサルコード化、グラフィックデザインの充実)

  • まずは表紙の絵を見てほしい。
    少し細かいので見にくいかもしれないが、これは営団地下鉄(当時)大手町駅の案内図で、著者が関わったプロジェクトで作られたものだという。
    駅の入り口から電車に乗るまでの一連のサインが白と(千代田線のカラーである)緑を基調としているのに対し、電車から降りてから駅の出口までは黄色を基調としたサインとなっており、分かりやすい。
    私は普段から東京メトロのサインは他の鉄道会社よりも分かりやすいと感じていた。特に、ホームに続くエスカレーターの上に掲げられている停車駅案内図は、ホームの左右どちらの電車に乗ればいずれの方角に向かうのかがすぐに分かって便利だし、また路線ごとのカラー分けも明確だ。
    初めて駅を利用する人にも分かりやすいようにデザインすることの重要性は普段から感じていたが、この本の第1章を読んでそれを再認識させられた。
    第2章第1節では、その営団地下鉄大手町駅のプロジェクトについて書かれている。このプロジェクトは成功を収め、その後、著者がデザインしたサインは営団・都営地下鉄のすべての駅で採用されることとなった(また他社のサインにも影響を与えている)。しかし2004年の民営化以降は、案内図の中で広告料を支払った花屋や書店の名前が赤字で強調されるなど、ユーザーにとって分かりにくいデザインに「改悪」されたようである(第5章第4節で分かりにくくなったデザインについて書かれている)。

    私にとって新たな発見だったのは、望ましいデザインとは分かりやすい案内図すらも必要としないということ。千代田線国会議事堂前駅は自然光が地上から下層階まで差し込む吹き抜け空間となっており、遠くからでもすぐにどちらが移動方向か分かるため、移動方向を示すサインを一台も必要としていないという(p.105)。駅のデザインとは、単にこの本の表紙にあるような案内図などのデザインにとどまらず、駅の空間も非常に重要であることが分かった。
    この本では空間のデザインが悪い例として、半蔵門駅が紹介されている。改札階からホームに降りる階段が壁で覆われており視界が開けず、そのためホームの様子が上からは全く見えない。ゆえに「ゴーッという電車が入ってくる音がしたので慌てて駆け下りたところ、逆方向の電車だった、などとのことが日常的に起きている」(p.209)という。これは日常生活の中でもよく経験しているので、思わず納得させられた。

    第4章では海外の各都市の駅のデザインが紹介されている。ここでは、各都市の駅の様子を順に少しずつ紹介し、写真を並べて掲載しているだけで、結局全体として著者が何が言いたいのかが分かりづらい。それぞれの説明も少なく、やや不満が残る内容であった。
    都市別に分けて書くのではなく、良いデザインや悪いデザインの要素について説明した上で、その具体例として各都市の写真を紹介したほうが分かりやすかったのではないかと思う。

    新書ながらカラーで写真も多く掲載されており、デザインについて新たに知ったこともあり、ある程度は満足している。ただ、この本はすべてカラーというわけではなく、白黒のページも少なくない。ゆえに写真が見づらいページもあったのが非常に残念であった。また、議論が少し色んなところに飛びがちな気もした。著者が全体を通して何を伝えたいのかがやや分かりづらかったのも少し残念である。個々の話題が面白かっただけに、もう少し全体の構成を工夫すれば著者の主張がより読者に伝わりやすい本になっていたと思う。

    それにしても、デザインは面白い。
    この本を読んだ後、街を歩きながら色んなデザインに注目するようになった。そして街のデザインをどのように変えていけば良いのか考えるようになった。このような視点を持ち合わせる人が増えれば、自分の住んでいる街はもっと良くなっていくであろう。

  • 「地下鉄の出口看板の色は黄色」など、今となっては当たり前のルールを1970年代に初めて提唱し、以来、「みなとみらい線」や「つくばエクスプレス」などの駅のサイン(案内表示)をデザインしてきた著者による、駅を公共の空間としてデザインする際の基本的な考え方をまとめた本。

    著者が改善してきた駅の案内表示の実例は、看板の設置場所から色、フォントの大きさまで、一つ一つの要素を利用者の立場から考え抜いたものになっていて、その結果として実用性と美しさを兼ね備えた優れたデザインになっていると思った。

    また、「駅の案内表示にわかりにくいものがあることは事実だが、そもそも駅の構造が利用者にとってわかりにくいものになってしまっている」という趣旨の指摘からは、「戦略の失敗は戦術では取り返せない」というデザイン以外の分野にも当てはまる悔しさが滲んでいるように思えた。たとえその道の第一人者であっても、仕事は完全なフリーハンドでできるものではなく、常に制約条件の中で仕事をせざるを得ないのだ。

    ただ、そのような制約条件がある中でも何とかして利用者を迷わせない案内表示を追究して、それを日本各地で形にしてきた著者の仕事に臨む真摯な態度と技術力には頭が下がる。

    仕事をしていると、ときに自分たちの都合を優先して部分最適に走ってしまうが、利用者本位の視点に立った、全体最適を追い求めるべきだと思った。

  • 5章のダメ出しが凄かった。
    わかりやすく居心地が良い駅を作るために総合的な視点から設計が必要、パブリックに徹するべき、との話は納得できたが、海外の例で「迷わない」とあるのはそうかなあ?という感想。
    実際に海外に行くと右往左往したし、慣れていないものを見ると人間は迷うと思う。
    誰でも必ず理解できるものを作るのはとても難しい。だからこそ挑戦しがいがあるのかもしれないが。

  • 的確な指摘

  • サインや建築に関する本を新書で提供してくれるのはありがたいです。写真満載。老眼にはちと厳しいですけど…。コミュニケーション=情報の送り、受け手、メッセージ、コンテクスト、コード、コンタクト

  • 【資料ID】 71602645
    【請求記号】 526.68/A
    【OPAC URL】https://opac2.lib.oit.ac.jp/webopac/BB99751506

    初めて利用する駅で、乗り換え方法や出口がわからなくて困った経験は誰にでもあるでしょう。もっとわかりやすい案内サインがあればいいのにとか、そもそもなぜこんなに利用しづらい設計になったんだろうと思う駅もあり、困惑することもしばしば。
    アメリカ、ヨーロッパ、アジアの駅を比較して、駅という公共空間の在り方を改めて考えさせられる一冊です。
    たくさんのカラー写真で世界の駅が紹介されているので、ちょっとした旅行気分も味わえます。

  • 駅デザインに重要なパブリックという視点、認知されやすく理解されやすい、かつ、ストレス軽減というポイント。伝えるという技術と似ている。

  • 意識しなければ何も思わない、しかし心地よくもない地下鉄駅の利用。日本の駅構造の貧困さ。そうなってしまう経緯(土木建築の縦割り)。案内サインの在り方(パブリックとマーケティング)と、その土台となる公共デザインの考え方。人が快適に感じる環境とは。

    「JR東日本横浜支社のしかるべき立場の人」のように、この仕事の一番の敵はやはり資本主義社会だと思う。

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