日本の大課題 子どもの貧困: 社会的養護の現場から考える (ちくま新書 1113)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068187

感想・レビュー・書評

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  • 期せずして手にしたこの本。
    僕の1番知りたい児童養護施設の内容でした。
    僕は子どもの貧困が自分のライフワークになると思っています。
    最終的には児童養護施設と深く関わる運命を切り開くことになると思います。

    そのために生活保護という最後のセーフティネットを西成区生野区という大阪市でも配属希望の少ない現場で学びました。
    今福祉局に配属されたのは宿命と言っても過言ではないと思っています。

    ここで結果を出してきっと将来は児童養護施設に関する仕事がしたいと思います。
    この本を読んで僕にできることがそこにあると思いました。

  • 児童養護施設問題の入門に。
    分かりやすく書かれている。
    個々の具体例はあまり出てこないが、それでも読んでいて胸が痛む。

    社会全体でこうした子どもたちを支えていくことは、良き納税者を育てるという事。

  •  仕事上の必要から児童養護施設のことを調べているので、関連書籍の中でいちばん刊行年月が新しい本書を読んでみた。
     本書はタイトルこそ『子どもの貧困』だが、子どもの貧困全般を扱っているわけではなく、児童養護施設を中心とした「社会的養護」の概説書である。

     池上彰・編となっているが、池上は前半の対談に参加し、まえがき・あとがきを寄せている程度。あとは社会的養護の当事者・専門家による本だ。
     
     身もフタもない言い方をすると、「ベストセラー連発の池上彰の本にすれば、売れる」との皮算用から、人寄せパンダとして担ぎ出されたわけだ。

     しかし、中身を読んでみれば、「わかりやすく説明するプロ」である池上の起用は成功していると感じる。
     本書の前半は丸ごと、池上と高橋利一(立川市などで児童養護施設を長年運営してきた人)の対談なのだが、この対談自体、児童養護施設の歴史と現状を的確にまとめた概説になっている。これは池上の手柄だろう。

     アマゾンのカスタマーレビューを見てみたら、この対談について批判しているものがあった。「池上は児童養護施設について何も知らないまま対談に臨んでいて、ケシカラン。ちゃんと準備して仕事しろや」(要旨)と――。

     この批判はちょっと的外れだと思うなァ。
     本書で池上に与えられた役回りは、むしろ素人目線を保ったまま対談に臨み、読者に代わって「基本のき」から教えを乞うことだろう。池上はその役割を十分果たしているし、対談の進め方はむしろすごくうまいと感じた。

     池上彰のネームバリューに寄りかかった企画という側面は否めないにしろ、結果的には児童養護施設に関する優れた概説書になったと思う。
     
     池上は、高橋利一からいい話もたくさん引き出している。たとえば――。

    《あるとき、「園長先生、借金あといくら残ってる?」と聞いてくる子がいました。「2億円かな」って答えたら、「今に僕が返すからね」って言ってくれたことがある。「ああ、ありがとう。嬉しいね」って私は答えましたが、子どもたちがそんなことを言ってくれるようになってきたのも、日常の中に何か満たされたものがあるからでしょうね。》

     後半は、社会的養護の専門家・当事者による、児童養護施設の現状をめぐる論考2本からなる。これはやや論文臭の強い堅い文章(でも、内容は重要)なので、前半のわかりやすい対談とのバランスがちょうどいい感じだ。

  • 池上さんが言うように、見えなくなったらないのと同じ
    子供達の現状が見えるようになったら、もっと身近に手助けできることも増えてくるのではないかと感じました

  •  教育はとても大事なこと。その子のメンタリティや様々なものも要因として挙げられるけれども、まずは環境を整えてあげることが必要不可欠。
     児童養護施設がどのように見られているのか。どのような施設なのか。どのような役割を持っているのか。
     自立が困難な子どもたちもいる。自立したい、しなければならない、しかし。そういった子どもたちを掬い上げるセーフティネットが不可欠で。

  • 子どもは「自分が悪いからお父さんが殴ったんだろう」と解釈する傾向があります。

    政府は労働人口を増やすために移民政策を検討しているようですが、そのことを考えるよりも前に、日本にいる人材を掘りおこし、研修の機会や環境をととのえて働けない若者たちをうまく仕事に結びつける手立てを探すべきだと思います。

    今、社会的養護を必要としている子どもの数は増えているんでしょうか。 高橋 ええ。ここ十数年で社会的養護を必要とする児童の数は増加し、2011年の厚労省の発表によれば、対象児童の数は4万6000人とされています。  けれども実際には、少なくとも7万人は存在

    もうひとつ重要なのは、施設を出た子どもたちが働く場所を確保することです。いまはグローバル化で、大企業の生産拠点がみんな海外に移った。製造業の工場などで雇用してもらえれば、彼らだって良き納税者になれます。

  • 児童福祉が抱える問題点がわかりやすく、当事者の説明付きで述べられている。中々焦点が当てられてこなかった分野なので、池上さんの提言で少しは注目されると良いのだが。

  • 児童養護施設の実態が細かく書かれているわけではないが、施設を出身の子どもたちにどんな支援が必要か、学習支援の大切さがピンポイントでわかる本。
    その他背景にある複合的な問題はまた別の本を読む必要があるけれど、要旨が絞られていて良いと思う。

  • 子どもの貧困の現状について児童養護施設を中心トピックに添えて入門書的に描いている本書。顕在化されていない問題を、多くの支援者や関わりを持とうとする市民と協力して、問題解決に向けて動いて行きたいと感じさせる本である。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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