- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480068200
感想・レビュー・書評
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タイトル通り近代政治哲学の主要な人物における理論、主張の概説なのだが、紹介されている7人の考え方にどのような差異があり、またどのように変遷を辿ってきたのか、そしてなおも解決されていない課題には何があるのか、という点に言及がある。結論といえるものはなく、最後はこちらへ投げる形で終えているのは、その先は我々が、あるいは読者自身が考えるもの、ということだろう。平易な文章で読みやすかった。
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たまたま目に入って、気になったので読んでみる。
フランスのポスト構造主義のドゥルーズの訳者による政治哲学入門と思ったら、実は、こっちのほうが本業らしい。ほ〜。
かくいうわたしも、実は、政治学のM.A.だったりするので、メジャーな関心に近かったりする。
といっても、政治哲学をちゃんと勉強したわけでない。が、一応、ホッブス、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カント、程度はいろいろだが、読みかじったことはある本たちである。こうした古典を読んでいて、なんだかな〜?と思いつつ、明確に言語化できなかった疑問が、本当にクリアにされていて、すごいスッキリです。目から鱗がたくさんありました。
他の人が読んでどうなのかは全く分からないけど、個人的にはすごい知的エンターティメントでした。
ちなみに、読んでいて共感度が高かった哲学者は、スピノザとヒュームかな。このへんは、実は、ドゥルーズとも関連性の強い哲学者だと思うので、ある意味、最初に戻って、やっぱりね、でした。 -
ボダン、ホッブズ、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カントの政治哲学について考察している本です。
単なる概説ではなく、哲学史的な叙述を通して著者自身の政治哲学上の問題意識を明瞭に浮かびあがらせるというスタイルになっています。著者自身の問題意識が最初に見えてくるのは、ロックの章です。ここで著者は、ロックの「自然権」理解があいまいだと批判し、彼が「自然権」という概念のうちに、ほんらいそれにもとづいて説明されなければならないはずの規範性が密輸入されていることを指摘しています。
さらに著者自身の問題意識が明瞭になるのは、ルソーの章です。ここで著者は、多くの論者たちを悩ませてきた「一般意志」についてあらためて考察をおこない、一般意志とは、そこから個別的具体的な政策が導き出されるようなものとしてあらかじめ確定することはできず、むしろ立法権に基づく法律の成立をもって一般意志が行使されたとして、遡及的に一般意志が見いだされるという解釈を示しています。
ここまでくれば、ヒュームの経験論を経て、カントの規範的倫理学に基づく法哲学までは一直線です。この先がおもしろくなるのに……という思いにさせられてしまいますが、「近代政治哲学」という書名のためか、著者自身の政治哲学上の立場を明瞭にすることは控えられています。ただしその方向性は本書の叙述からも十分にうかがえますし、行政権をめぐる議論など、興味深い切り口がいくつも示されていて、読者自身が本書につづく考察を試みることをさそっています。 -
ジャン・ボダン、ホッブス、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カント。
スピノザもこの流れに入るんだ。ロックは哲学的じゃなかったんだ。
細部に驚きがあった。 -
各政治哲学者の思想が紹介されたうえで、「民主主義とは何か」を最後の問いを読者になげかける。
あまりに当然であり自明であった「民主主義」がいいという無邪気な精神から、すこし距離を置くことができたと思う。
あとがきのまとめ方が素晴らしく、読後感がすっきりする。 -
近代国家成立までの歴史や基本的な概念について。ホッブズ、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カントの思想がコンパクトにまとまっており読みやすい。一般の教科書では「ホッブズは絶対王政を擁護した〜」とか「ロックは抵抗権を認めてた」のような記述がよく見受けられるが、解釈としてミスリーディングな部分もあり原文をしっかり読む必要性も感じた。
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2019I243 311.1/Ko
配架場所:A2 東工大の先生の本 -
めちゃくちゃ勉強になった。難解な哲学をかなりわかりやすく書いているし、何より現代に引きつけて例示をしてくれたりしているので、一層わかりやすい。もちろん全て簡単に理解できるものではないので悩みながら読む時間は必要だけれど、一冊読み終わった時には自分の認識がかなりアップデートされていることは間違いない。
特に立法と行政の関係は、言われたら難しい話ではないのに目から鱗だった。現役の公務員とか、実践の現場にいる人たちにも読んで欲しい一冊。
専門書という扱いではないけど、現代を生きるための大人の教養書、だと思う。 -
学生時代に全然ピンとこなかった「自然権」という考え方を、ようやく納得させてくれた本。
個人的に「主権とは立法権の事なのだけど、法律は抽象的なもの個別のケースにはそのままでは使えず、それを個々のものに落とすのは行政。だから行政は力を持ってしまう」という話がとても面白かった。 -
主要な政治理論を明晰にまとめている。多くの学者がごまかしているロック政治論の欺瞞性を指摘しているのもよい。主権概念が立法権を中心に考えられてきたことを問題化し、強大な行政権力とどう向き合うかというところで終わる。個人的には、スピノザ・ルソー・カントの章がおもしろかった。