ルポ 居所不明児童: 消えた子どもたち (ちくま新書 1120)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068286

感想・レビュー・書評

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  • 約2万4000人。

    これは、1961年から2014年までの54年分の居所不明者の累計数である。ちなみに2014年の居所不明者数は383人である。この人数をどう捉えるかは人によって異なるだろうが、決して少ないとはいえない。またこの統計上の数字には計上されていない事例も数多くあるものと思われる。本書に登場する亮太(仮名)も統計には出てこない居所不明者の一人だった。

    亮太は幼い頃に母と父が離婚し、その後は母と共に各地を転々とする生活をおくる。母の愛人と一緒に暮らしたり、母とその恋人とラブホテルで一夜を過ごすような生活をおくることになる。そんな彼は十七歳の時に強盗殺人の罪を犯している。実母から祖父母に金を無心するように要求されたうえでの犯行だった。

    彼は11歳から学校に通えていなかった。だから、学校なり教育委員会なりが異変に気付いてもよさそうなものである。しかし、実際には異変は察知されず、最終的に彼は罪を犯してしまうことになる。住む場所もままならず、学校に行けない子どもがどうして社会から認知されず、助けられないまま厳しい人生を歩まなくてはならないのか。その原因はどこにあるのか。それが本書の主題である。

    縦割り行政、公的機関の対応の不徹底、学校の教員数削減と評価システム、児童相談所の疲弊…。数多くの問題が複雑に絡まりあい解決を困難なものにしている。ここ数年、「子どもの貧困」や「虐待」に関する著書が多く出されているが、それらの著書とともに本書も子どもが置かれている不幸な現実を認識するうえで読んでおきたい1冊だといえる。

  • ふむ

  • 無戸籍問題もさることながら、社会保障制度の枠外にいる子ども達がこんなに多くいるとは…

    日本は史上まれにみる不寛容社会である。
    結果が悲劇的になれば児童相談所などの行政組織は当然批判されるし、過程についても批判され、それでいて普段は税金の無駄使いと批判され、過剰な削減圧力にさらされ。

    不寛容な社会の根本を改めない限り、この国では不幸な境遇の子ども達を救うことは出来ないだろう。

  • 383人。2014年の居所不明児童の人数である。1961年から2014年
    までの累計では約24,000人になる。

    神奈川県厚木市で白骨化した男児の遺体が発見された事件が
    あった。両親は離婚し、父親が男児を引き取ったが週に数回、
    コンビニの弁当やパンを置いて来るだけで、育児を放棄した。

    男児が発見されるまで8年。その間のどこかで救いの手を差し伸べる
    機会はなかったのか。

    この事件は勿論、本書ではかなり衝撃的なケースを取り上げている。
    詠めば「ああ、あの事件か」と思い出すものばかりだ。

    地域から、学校から、忽然と姿を消した子供たちがいる。そんな子供
    たちが発見されるのは既に死に至ってからというケースのなんと多い
    ことか。

    何故、子供たちを救えなかったのか。一番の問題点は親であろう。
    子供を育てるということがどういうことなのか分からない親たち。
    貧困の中で「助けて欲しい」との声を上げられない親たち。そして、
    「命」への無関心。

    例え行政が子供の不安定な生活を把握していても、情報共有が
    旧態依然としている現状では居住地域を離れてしまえば追跡調査
    が出来ないという。今時、不明児童のデータがFAXってなんだよ。

    実際に起こったいくつかの不明児童のケースを追い、教師、社会
    福祉士、児童相談所への取材を行っている。

    誰が、どこまで踏み込むか。線引きは難しいのだと思う。でも、救えた
    かもしれない命は確かにあった。

    この世に誕生したのは確かなのに、どこにいるのか分からない子供
    たち。出生届さえ出されていない子供を統計に加えたら、実際の居所
    不明児童の人数はもっと増えるのだろうな。

    社会から零れ落ちてしまう子供をなくすことを、もっと真剣に考えない
    といけないんじゃないか。

  • ほんと気の毒だ。そもそも虐待で子供を殺した親への刑罰が少なすぎると思う。そして事件を忘れるのは早い。ここに載ってる事件を検索してたら虐待をまとめたサイトがあって、県別になってたので見たら、糸魚川の65歳と28歳妻の連れ子との子供を殺す、というのを見つけて、こんな大事件を忘れてた、と思った。その後続報が一切ないのは性虐待がからむからか。障害があったからなのか。

  • しんどい現実を突きつけられる。
    相談できる人は、まだまし。
    誰にも言えず、ひっそりと目立たないように暮らしている人。
    制度の隙間に落ちてしまっている人。
    不明で元気ならば良いが、そうとも限らないところが重い。
    どこから手をつけていけば良いか?

  •  親の育児放棄や虐待などのために、住民登録がなく就学せず所在も不明の「居所不明児童」の実態を追ったノンフィクション。全面にわたって著者の「もどかしさ」が伝わる。親の幼稚さや関係者の怠慢への批判は厳しいが、他方でこの問題が小手先の対症療法でどうすることもできない現代社会の構造的矛盾の集約点であることも浮き彫りになっている。

  •  地域から消え、住民票もなくなった。そんな居所不明児童達を追ったノンフィクション。

     家庭環境の問題で学校や行政とつながりが途絶えた子ども達。システムの不備やマンパワーの不足で行政はなかなか彼らを救うことができていない。その数は1000人を越えるらしい。居場所不明のまま1年ほどが経つと住民票が消えてしまうというのは衝撃だった。
     どうすればいいという対策はすぐには難しいかもしれないが、現状を知る為にも多くの人が目を通してほしい一冊。

  • 悲惨な事件が引き起こされた背景である、
    歪んだ精神は環境が作ると改めて実感。
    子どもは被害者でしかない。
    歪んだ環境の連鎖を無くすのは大人の仕事である。そのためにはどうしたらよいかを考えさせられた。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表。出版のみならず新聞連載、テレビ出演、講演会など幅広く活動する。
主な著書に『スマホ廃人』(文藝春秋社)、『ルポ 居所不明児童~消えた子どもたち』(筑
摩書房)、『ルポ 子どもの無縁社会』(中央公論新社)、『子どもとスマホ~おとなの知
らない子どもの現実』(花伝社)など。日本文藝家協会会員。
公式ホームページ https://ishikawa-yuki.com/

「2018年 『人生を豊かにするスマホとの付き合い方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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