地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書 1150)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068576

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/699505

  • よくも悪くもかなり尖った1冊。
    政府・行政批判の側面が大きい。
    読んでいて「確かにな」と思う点もあるが、それ以上に国批判が軒を連ねている。
    読んでいて少々気に障る点もあるが、それは個々人の好みだろう。
    個人的に学んだポイントは以下。
    ・離島や過疎地域のインフラコストだけ取り上げて中央にこい、というのは選択と集中というよりも排除
    ・学問は政治的になる。資金がないと研究ができないから。そのため国に乗っかる。
    ・地域の人口増加=正義、は負け土俵。ほとんどの自治体が負ける。
    ・地域振興のためにプレミアム商品券を配る。例えば5000円で6000円分。その差額の1000円は税金から来ている。要はプレミアム商品券は納めた税を取り戻しに行っているにすぎない。

  • 【由来】
    ・北大の図書館でたまたま

    【ノート】
    ・山下氏の前著、「地方消滅の罠」は増田レポートをターゲットに、批判と言うより批難しつつも、安倍政権は評価するという内容で、全体的な印象は芳しくなかった。

    ・そんな著者が、このタイトルで出してきたので、またかという感じで目を通してみたら、意外と面白く読み進めた。対談者の金井氏によるところが大きいのかどうかは分からないが、現在、政府が推進している「地方創生」の魂胆を性悪説に立って批判的に捉えつつ、そのような力学が国と自治体によって構造化してしまっていることについて言及しているのが面白い。金井氏が一種マキャベリズム的な護憲の発想で政府や自治体を性悪説で捉えているのに対して、山下氏が現場のスタッフに同情的であるというのも面白かった。

    ・とは言え、この面白さは、ちょっとインテリなオッサンが居酒屋で談義しているレベルを出ていない。

     「(金井)従属を甘受して直視できる覚悟は「敗戦」を「終戦」と呼びかえるこの国の人々にはありません(P157)」
     「(金井)国とは権力を行使したい人間の集まり(P183)」
     「(金井)誰も主体的には意思決定していないわけです。これは丸山眞男が言う無責任体制です。(略)(その)体制自体が一つの統治構造です(P213)」
     「(金井)地獄への道は善意で敷き詰められている(P236)」

     などなど。面白そうではあるでしょ?こういう話を居酒屋談義ということで面白く聞いている分にはよいが、それ以上のものではないというのが読後感。

  • 地方創生や原発事故についての社会学者と行政学者の対談。行政学者と社会学者の違憲の相違が際立っており、その意味では読んでいて面白く感じたが、地方創生の危険性についての抽象的な対談(政府への批判を含む。)が多く、肝心の地方創生の具体的な内容や、具体的な内容への批判ではない点が残念でした。

  • 批判に徹する系の内容。
    言説の背景にある骨組みがクリティカルのみといった感じを受けるので、ではどうすればよいのか、どうしていくのが正しい(かもしれない、と思っている)のかが具体的に分からないので面白くない本の部類に入る。(個人的に)

  • 地方創生の流れと原発事故の問題を中心に行政のあり方について述べている。
    国の言いなりに地方がなっている構造。
    何もしないことが許されない構造になっている。
    一定の科学技術が成り立つには政治権力が必要。
    弱者保護の観点で行政が運営されてきた、あるべき意義だと思ってきたが、弱者が増えすぎたのかと思った。

  • 地方創生の正体というテーマで、2人の立場の異なる学者が討論の形で進める形態。
    東北大震災の国と自治体の動きを見ながら、これからの地方創生の在り方に警鐘を鳴らします。
    どのような政策をとろうと財源を国が見ている以上、本当の地方が主導となるような新興策は困難。とはいえ、これをどう打開すべきかは、結論が出ない。ちょっと消化不良な印象でした。


    ・現在は「選択と集中」路線→この路線は排除を生む
     排除は依存から来ている排除であり、国民の国に対する依存が生んでいる
     →地方では、外から変なものを持ち込まれたときに抵抗できない体質を作り出している
    ・国と自治体の関係性(型)は、戦後一貫して変わっていないが、消化する側の体質は変化しつつある。つまり自治体側は金を受け付けなくなっている
    ・国が地方に向けて何らかの政策を打ち出すときに、各自治体の間でさかんに競争を起こそうとする。競争を煽ることで、自治体にとっては不本意であっても、その事業を自ら進んで選び取ったかのように誘導していることが可能になっている
    ・現在では一般財源主義・ルール配分主義から、特定財源主義・競争主義(裁量的配分主義)に移行している
     各自治体はそういう競争に参加している
    ・自治体を国のコントロール下に置いて直接統治をしようとすれば、各自治体が持っていた自治の力が失われ、セルフ・コントロールできない自治体ばかりになっていく。
     そうすると統治しようにも、統治の手段が失われることになえる。これは統治のやり方として明らかに間違っているのではないか



    <目次>
    第1章 「国‐自治体‐市民」の構造を問いなおす(「地方創生」で自治体は困り果てる
    「震災復興」で何が起きているのか
    「地方創生」は地域への侵略である)
    第2章 いかにして地域政策は失敗するのか―原子力発電所事故から見えるもの(国と地域はどのようにズレていくのか
    県と地域はどのようにズレていくのか
    市町村と地域はどのようにズレていくのか)
    第3章 地域にとって国家とは何か(アシンメトリー(非対称)としての権力
    国策の構造
    国をどう考えるか
    特定財源主義による統制)
    第4章 市民にとって、国家にとって自治体とは何か(多元的バランス構造の意義
    依存の構造
    科学技術と国家
    ガバメントと共同体)

  • 地方という用語自体が国との対立概念であること、分割して統治され、互いに競わされて滅んでゆく実態であることが分かった。

  • 人口減少⇒地方消滅⇒地方創生と新聞・マスコミを賑わしている。社会学者と政治行政学者の激論で、国家権力と地方政府、住民の関係性が炙り出されていた。
    第1章 「国―自治体ー市民」の構造を問いなおす
     1「地方創生」で自治体は困り果てる
     2「震災復興」で何が起きているのか
     3「地方創生」は地域への侵略である
    第2章 いかにして地域政策は失敗するのかー原子力発電所事故から見えるもの
     1国と地域はどのようにズレていくのか
     2県と地域はどのようにズレていくのか
     3市町村と地域はどのようにしてズレていくのか
    第3章 地域にとって国家とは何か
     1アシメントリー(非対称)としての権力
     2国策の構造
     3国をどう考えるのか
     4特定財源主義による統制
    第4章 市民にとって、国家にとって自治体とは何か
     1多元的バランス構造の意義
     2依存の構造
     3科学技術と国家
     4ガバメントと共同体
    同じ日本人であるのに、市民、基礎自治体、府県、国家ということなる組織に属すことにより、その組織の生き残りをかけて対立してしまう、特に国家権力に属する人間の行動、弱い者いじめをしてしまう構造、途中、情けない気分になりました(涙)。

  • 国がいかに「無責任の体系」に即して動いているか、震災や原発事故対応、地方創生政策を事例に描かれている。

    現在進行中の「選択と集中」型、経済指標重視の政策を批判しており示唆に富むが、対案が明確に示されていない(ように自分は感じた)ので、読後感はややもやもやするところがあった。

    金井先生の おわりに は痛快。特に追記。

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著者プロフィール

山下 祐介(やました・ゆうすけ) 1969年生まれ。九州大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。弘前大学准教授などを経て、現在、東京都立大学教授。専攻は都市社会学、地域社会学、環境社会学。著書『限界集落の真実』『東北発の震災論』『地方消滅の罠』(以上、ちくま新書)、『「復興」が奪う地域の未来』、『地域学をはじめよう』(以上、岩波書店)、『「都市の正義」が地方を壊す』(PHP新書)、『「布嘉」佐々木家を紡いだ人たち』(青函文化経済研究所)、『地方創生の正体』(共著、ちくま新書)、『人間なき復興』(共編著、ちくま文庫)など多数。津軽学・白神学の運動にも参加。

「2021年 『地域学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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