プラグマティズム入門 (ちくま新書 1165)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068705

感想・レビュー・書評

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  • 「哲学思想としてのプラグマティズム」について、その全体的像をわかりやすく解説。プラグマティズムについて、「源流のプラグマティズム」(パース、ジェイムズ、デューイ)、「少し前のプラグマティズム」(クワイン、ローティ、パトナム)、「これからのプラグマティズム」(ブランダム、マクベス、ティエルスラン、ハーク、ミサック)という流れで概観している。
    プラグマティズムと一口にいっても、それに属するとされる哲学者の考えにはとても多様性があるのだということがよくわかった。ただ、プラグマティズムの思想の根幹にある「真理の探究は可謬的なものであり、真理とはわれわれの行動にとって有用な道具である」という考え方には、非常に共感するものがあった。
    全体的にわかりやすい記述だったが、「これからのプラグマティズム」の内容はちょっと難しく感じた。

  • プラグマティストの思想の変遷を辿れる。
    ただプラグマティズムの本を読んだことない人は他の入門を当たった上で、戻ってくるのがいいかも。ちょいむず。

  • プラグマティズムとは何かが、各時代の人物とともに分かりやすい書いてあった。
    内容が濃いのでメモをとって頭を整理しながら読んだ。

  • プラグマティズムは「開かれた柔軟な哲学」であるという。そのプラグマティズムを「源流のプラグマティズム」ではパース、ジェイムズ、デューイ、と始祖たちに遡って要約・紹介される。第2章では「少し前のプラグマティズム」としてクワイン、ローティ、パトナムが同じように要約・紹介される。そして、最後に「これからのプラグマティズム」としてブランダム、マクベスとティエルスラン、ハークとミサッックがこれまた要約・紹介される。

    多元的につかみどころのない思想のようで、色々な思想家、哲学者たちが色々なことを考えて新しい哲学を構築している、あるいは構築しつつあるという現状が垣間見られた。ただ、やはり数学の哲学化?の辺はちんぷんかんぷん。

  • プラグマティズムにおいて「真理」がどのようなものと考えられているかについて知りたかったので、とても参考になった。(特に序章、第一章)。

  • ドナルド・トランプについて知りたかった。わかってきた事は、彼を支持する勢力の一つであるキリスト教福音派が、アメリカ政治をレーガン政権以降大きく動かしてきたという事実だ。しかし、彼の政治スタイルについて、もっと直截に、鋭くポイントをつく説明の仕方は無いだろうか?

    彼自身の演説の、ツイートのスタイルから、何か分からないか?それよりも、彼の発想法、考え方自体から迫った方がいいのではないか?いや、アメリカ人の考え方自体を再検討した方がいいのではないか?

    そこで、本書である。アメリカ人の基本的な考え方の、源泉の一つであるプラグマティズム。本書を紐解き、アメリカ人の考え方について学んでみた。ビンゴ!

    これぞ、ドナルド・トランプである。彼のスタイルだ。

    プラグマティズムとは、およそ150年程度の歴史のある思想、哲学の方法論だ。アメリカでチャールズ・パースによって1870年前後に生み出され、盟友ウィリアム・ジェームズにより、1898年、「この思想の意義を世界に向けて広く発信」された。その考え方とは、「つまり、われわれにとっては、どうしても賭けなければならない場合には、証拠の不十分という条件を承知していても、何かを信じようとすることには意味があり、その限りでわれわれは「信じる権利」を持つはずである。これはパースとは違った意味での反デカルト主義の表明である。」(電子版、No.779)」。

    これはパースの考えをジェームズが独自に発展させたバージョンのプラグマティズムだが、人間には、まず信じようとする意志と権利があり、次に、この信念の「真理性」を担保すればいい。この「真理」とは、「きわめて端的にいえば、ただわれわれの思考という方法において、有用である(expedient)ということである。」。こうした考えは、同時代の英国の分析哲学の始祖であるラッセルらに、粗雑なものと、侮蔑的に評価されたが、後にラッセルもその哲学的意義を再評価した。

    これは、プラグマティズム以前のヨーロッパ中心の哲学とは、明確に異なる哲学だ。ヨーロッパでは、デカルト主義といい、内省を行う「方法的懐疑」によって見出された観念から出発し、哲学を組み立てていくという方法論(観念論)が常識とされてきたが、それを拒絶するものだ。

    つまりは、観念論とは、物と主観の二元論だ。主観、心の中に物が反映した、現象というものを明晰に理解することで、世界についての理解とする考え方だ。しかし、プラグマティズムは、一元論だ。まず検討の対象を言語に限定する。世界は置いておく。なぜなら検討すべき世界とは、全てが、言語に反映し(反映しない世界は検討する必要がない)、また言語しか、真であるかどうかの分析の対象になるものは、存在しないから。

    そしてその真、真理とは、民主主義的な討議において、開かれた形で、複数の主体により、絶え間なく検証を受けていくという事で、初めて真理となる。しかし、それはとりあえずの真理であって、「絶対的な基礎づけ」を経たものではないし、そもそも絶対的な基礎づけとは、あり得ない。これがプラグマティズムの基本的な考えである。

    要は観念論、二元論であると、常に物と現象、心によって捉えられた像を検証して、その対応関係を考えて行くことになるが、分析哲学を経由したプラグマティズムでは、言語を検討する一元論になる。検討すべきは全て、言語の中にあり、(物との比較によって真理性が決定しない)、その真理性とは、複数の主体が参加して討議しあう開かれた連帯によって、不断に検証され続けるものであり、物との照合ではなく、人間の認識のシステム全体の中での、照合になる。

    この理論の利点は、物との対応関係を無視できる、ある人から突きつけられた証拠が証拠にならないことになる。真理性とは、人間の認識のシステム総体の全体の中で流動的に判断すべきものであるから。

    ドナルド・トランプに戻る。彼の言説は、プラグマティズムの伝統の中にある。有用なる信じるに足るものを信じる。しかし、その有用性が真骨頂であり、共同の討議の部分は軽視する。その部分を除けば、十分に民主的なプロセスを重んじた、大統領であり、異端ではない。「自文化中心主義」(ローティ)もまた、彼の言説を補強する。

    アメリカ人の思考スタイルを知ること。正統なる思考とは何か。アメリカ政治理解に必須の書である。

  • 超ハード。西洋哲学の主流に対抗する信念と懐疑の方法論について。全体の流れと13人のプラグマティストの差異を明らかにしてくれている。パースは読み直したい。

  • 前提とするものが、まさにプラグマティックなプラグマティズム。現代を生きる私にとって、問題意識に応え、日常感覚に合う、示唆的な議論だった。

    全体的に本質を突くような記述が続き、グイグイと引き込まれながら、最後まで読みきった。構成も素晴らしい。

    数学への見方も新鮮。
    読みながら、テクストでなくコンテクストが大事ということが何度も思い起こされた。

  • 著者の独特の言い回しにより、入門レベルを超えた難解な内容になっている。また、論理展開が恣意的であり、時系列を無視した箇所が散見される。著者はプラグマティズム研究の第一人者のようであるが、このような各哲学者の思想構築過程を勝手に組み替えて解説するのは研究者として問題であると感じる。文献引用の明らかな間違いもある。取り扱い範囲として最新の哲学の動向まで言及しているのは他著にない特徴であると思う。

  • 今は『プラグマティズム入門講義(仲正昌樹)』があるので、
    初めてプラグマティズムに触れる方は、
    そちらから手をつけたほうが良いと思いますが、
    コンパクトにまとまった「新書」らしいこちらも捨て難い。

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著者プロフィール

京都大学名誉教授

「2020年 『世界哲学史 全8巻+別巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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