カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068897

感想・レビュー・書評

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  • 資本論を勘違いしていた
    『資本主義は良いよ』と言っているものかと思っていた
    資本主義の正体をさらし、
    労働者が自由を獲得するためにどう行動すべきかということを問うているのだ。

    さて、どう生きていけばいいかしら。
    結局行き着くところは、ヒッピー生活??

  • マルクス主義で知られる、カール・マルクスの人生と、社会主義思想の原点といえる著書である資本論の解説本。

    資本論に書かれている内容について理解したくこの本を読んでみたが、正直に言うと、何を言っているのかよく分からなかった。
    私の理解力の問題が多分に大きいとは思うが、すごくシンプルな話を、たくさん用語定義をして難しく書いているだけ、というように聞こえた。

    別途調べてみると、資本論の大筋は、

    ・労働者が労働力を低額で売買してしまうと、資本家は労働者を限界まで働かせるようになる。
    ・労働力の価値を最大化しようとすると、資本家は労働力を可能な限り集約するようになる。よって独占が発生する。
    ・独占状態に陥ると、労働者は他の働き口をなくし、資本家への交渉力を失う。
    ・結局、労働者は使いつぶされ、将来的に働き手はなくなるが、資本家は部分最適でしか考えないので、労働者を守る方向には動かない。
    ・よって資本主義は崩壊する。

    ということだと理解できたが・・・

    初学者が資本論を勉強するなら、ほかの本がいいかもしれない。

  • カール・マルクスの生涯を辿りながら、彼の思想を変遷を描いている。マルクスの思想はマルクス主義とは異なる。マルクスはより大きな展望を持ちつつ社会の問題に具体的な解決を求めて取り組み、社会変革のために生涯探究を続けていた。資本主義が進み、グローバリゼーションが広がる現代においてこそ、マルクスの問題提起が生きることを示し、新しいマルクス像を提示しようとしている。
    入門書としてもとてもわかりやすい。特に「資本論」については紙幅を割いて説明しているが、現代の日本の問題、ブラック企業や社会的基礎サービス領域の市場化なども例として挙げ、「資本論」が今日の問題とつながっていることを示している。さらに最終章は「資本論」(第1巻)執筆後のマルクスが「物質代謝」論を軸にエコロジー、気候変動、共同体、ジェンダーへと研究を広げて行った姿を書簡や「抜粋ノート」を追跡して明らかにしていく。これほどまでに多くの問題に関心を持っていたことに驚かさせる。気候変動など当時はあまり問題化していない分野まで興味を持っていたことや、農耕共同体に高い評価を与え、決して単線発展的は近代化主義論者ではなかったことに新しい発見があった。

  • 良い意味で新書らしい新書。マルクスの生涯および思想の変遷を追いながら、本丸たる『資本論』について多くの紙数を費やして解説している。その解説も実に懇切丁寧なもので、具体例をいろいろ引きながらうまく噛み砕いている(それでもやっぱり難しいのだが)。とくに著者の注目する物質代謝論から共同体研究に至る晩期マルクスの探求は、この思想家の先進性、スケールの大きさを示すものであり、大変興味深かった。

  • 物質代謝から発展させて、晩年は前近代的共同体に肯定的な評価を下し、民俗学的なアプローチで研究していたということが興味深かった。文章はわかりにくい箇所もあるが、全体的には初学者にわかりやすくまとまっていた。

  • マルクスについて、彼の一生と思想の変遷を解説した本。伝記的な要素が強いかと思って手に取ったが、その要素は一部で、彼の思想を追っていく、経済学の書といった方がいい。価値とは何か、通貨とは何か、という、社会において当たり前に使われる用語・概念について、経済学の文脈でどう考えるのか、マルクスはどう捉えたのかを解説していく。経済学の本はわりと好きで、入門系の本はよく読むが、なるほどそう捉えるか、というようなポイントが多数あっておもしろかった。経済学にある程度興味ある人なら楽しめる。また読み返したいな、と思った一冊。彼の資本論は難しい、でも、彼の思想は知りたい、という人にもおすすめ。

    ----以下、Twitter。
    https://x.com/htyanaka/status/1700713206115864904?s=46&t=0gP_965LypERIQ-wy6elTA

    読了本。佐々木隆治「カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)」 https://amzn.to/463afJh マルクスの思想の変遷とその背景を解説した本。彼の考えについてざっくり知ることができる。この現象そういう捉えるのね、というのがたくさんあっておもしろかった #hrp #book #2023b

  • カール・マルクスの生涯とその思想の変遷、資本論についてかなり分かりやすく説明されている。とは言っても資本論についてはその独特な言葉の使い方もあってやはり一回読んだぐらいで腑に落ちるとこまでは行かないけど。それでも、どのような時代背景があり、マルクスが何をしたかったのかは何となく理解できる。マルクスが資本主義のシステムについて、何が本質的なのかを徹底的に理論的に科学しようとしたのが資本論ということが。資本主義の行き詰まりがさすがに誰の目にも明らかになりつつ今、その問題点を考える土台としてマルクスの考察は理論モデルとして知っておくことは必要だと思う。
    アマプラで観られる「マルクスとエンゲルス」という映画やCOTEN RADIOのマルクスの解説回などもあわせて視聴するのがおすすめ。

  • 近年のマルクス研究を踏まえたマルクスの思想を初期から晩期までを俯瞰する好著。

    構成は、1章が初期マルクス、2章が資本論、3章が晩期マルクスというもの。

    2章の資本論のところはちょっと難しい感じはあるけど、白井聡さんの解説などを読んでいたので、なんとなく理解できた。

    1章は、どうしてマルクスが哲学に興味をもち、それが経済学への興味に展開し、社会変革活動に力をいれていくことになったかという流れがとてもスリリングに描かれている。知らないことも多いが、もしかすると多くの人が理解しているマルクスはこのあたりの議論なのではないかと思った。

    2章は、資本論のコアな概念の解説だが、ここで分析されている資本主義は、いわゆる共産主義という言葉で私たちが理解しているものとは結構違う。ここで分析されている資本主義はかなり手強いシステムで、簡単に革命で倒せるようなものではないことが伝わってくる。

    3章は、そういう手強い資本主義と戦うためのマルクスの知的探求がまとめられている。この辺りは著作としてまとまっているものはあまりなく、手稿や読書ノートの分析からすこしづつ浮かび上がっているもの。それによると晩期のマルクスは、エコロジー、コミュニティ、ジェンダーといったことを広範に研究していたらしい。マルクス自身は、これらの思想を著書としてまとめることができないまま、亡くなったわけだが、マルクスは資本主義への対抗としてこうした視点をもっていたということ。これは従来のマルクス理解を大きく変えるものだと思う。

    この視点は、斎藤幸平さんの議論につながっていくわけですね。斎藤さんの本を読んだ時の印象としては、面白いけど、やや強引な解釈ではないかと思ったのだが、この佐々木さんの本を読んで、やっとその意味がわかった気がした。

  • 「あの本は読まれているか」という海外ミステリを読んでみたいな、とふと思い。

    ●あの本、とは「ドクトル・ジバゴ」のこと。

    →「ドクトル・ジバゴ」を読んでから読もう。

    →あれはロシア革命前後の叙事詩のはず。ロシア革命をあらあら知ってから読もう。

    →ロシア革命にいたる道…マルクスをもう一回、ちょっと読んでからにしよう。


    …という興味のドミノ倒しでまずはマルクス。

    共産主義という考え方だけではなく、エコや環境問題まで見据えていたことに「へー」。

    それから19世紀のマルクスさんが、やっぱり当時の「資本主義先進国」であるイギリスの観察から学んだこと。そして19世紀のヨーロッパの、「フランス革命を見てしまったひとびと」の王政から共和制、という蠢動が感じられたのがいちばんの収穫でしょうか。

  • "協同組合の連合体が一つの共同計画にもとづいて全国の生産を調整し、こうしてそれを自分の統制のもとにおき、資本主義的生産の宿命である不断の無政府状態と周期的痙攣を終わらせるべきものとすれば──諸君、それこそは共産主義、「可能な」共産主義でなくてなんであろうか?"
    カール・マルクスの生涯から思想の変遷や、資本論の概説、残された引用の抜粋ノートから関心を読み取り、刊行に至らなかったが何を成し遂げたかったのかまでがわかりやすく説明されている。
    特に資本論の主要概念である商品、使用価値、有用労働、抽象的人間的労働、時間、価値、労働価値説、貨幣分析、値付け、一般価値物などは例示があり理解しやすく、後半のジェンダー、レイシズムが現在のリベラルと結びつくのかがわかり非常に良かった。また、共産主義的社会についてソ連的なマルクス主義と、マルクスの主張が独裁と連合的な意味で異なること、晩年は自然循環的なエコロジー"物質代謝"で、物象化する資本主義への抵抗としての人間社会を捉えようとしたことが知見として得られた。

    以下メモ。
    "社会関係を取り結ぶ力を持つにいたった物のことを物象といい、人間の経済活動が生産物の関係によって振り回されるという転倒した事態のことを物象化という。"
    商品を基準に労働が規定され、経済活動、生活をも規定される。物神崇拝。
    貨幣物象化による平等自由所有が人間の本来のものと置き換えられ、貨幣を欲望するようになる。労働力の価値は、商品の再生産が労働時間で決まるのと同じように、労働を再生産する費用で決まる。自己増殖する価値を資本といい、資本家の等価交換で生まれる剰余価値で抽象的人間的労働時間が決まる。資本家は剰余価値を求めるので、機械など生産力を高めて、再生産した商品の単価を下げれば労働力価値を下げることができる。こうして得られるのが、相対的剰余価値。生産力を上げ単価を下げ、ほかの資本家に先駆けることで、シェアを拡大して得られるのが、特別剰余価値。これが資本主義の生産力拡大の理由。
    "剰余価値の生産を目的とする資本主義社会においては、生産力の増大は、労働時間の増大をもたらす"
    "生産力の上昇による労働削減の効果は、各人の労働時間の削減としてではなく、労働人員の削減、すなわち失業者の増大として現れる。"
    生産コストを除いた剰余価値、すなわち利潤は生産力が普及すれば低下し、定期的に恐慌が起こる。強引な経済成長は、教育介護保育医療などの社会的基盤サービスの市場化が強行される。
    "政治革命に先立ち、改良闘争をつうじて、アソシエーションを形成し、物象の力を抑制しなければならない。これらの実践こそが、「産みの苦しみを短くし、やわらげる」ための実践"
    マルクスの共産主義は、政権が生産手段を国有化したり、計画経済を行うソ連のような社会主義のことではない。資本に隷属する労働のあり方を、協同組合アソシエーションが互いに連合し調整する共同労働へと変えることが、共産主義的変革。
    リービッヒの物質代謝、有機体の循環的な生命活動、エコロジーをマルクスは経済分析に取り入れた。フラース気候変動の環境破壊にも関心を示し、資本主義が自然との関わりで不備があることを指摘していた。その延長で、マルクスの抜粋ノートには、ジェンダー、レイシズムへの関心が見られ、その問題を解決することが労働運動の基盤、資本主義への抵抗として必要と考えたと著者は推測している。
    "晩期マルクスの変革構想は、物質代謝の固有性と多様性にもとづいて、あらゆる領域で物象の力に抗していくことであり、それをつうじて労働者たちのアソシエーションの可能性を拡大していくということ"

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著者プロフィール

佐々木隆治
立教大学経済学部教授
1974年生まれ。専門はマルクスの経済思想、社会思想。日本MEGA編集委員会編集委員。著書に『マルクスの物象化論[新版]――資本主義批判としての素材の思想』(堀之内出版、2021年)、『マルクス 資本論』(角川選書、2018年)、『カール・マルクス――「資本主義」と闘った社会思想家』(ちくま新書、2016年)など。

「2023年 『マルクス研究会年誌2022[第6号]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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