安保論争 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.85
  • (9)
  • (18)
  • (12)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 173
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069047

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 筆者は安保法制賛成の立場ではあるが、これまでの議論を法学者とは異なる立場からの見解は新鮮であろう。

  • 2017/02/05

  • 国際政治の専門家による、安全保障の話。安全保障についての意見には賛同できる。また、わが国の安保論争について、歴史的な説明はよく纏まっており、参考になった。
    ただ、いろいろな人が言っている言葉や意見が多く掲載されているが、著者がそれを使って何を言おうとしているのか曖昧なところがある。やや、論理性、学術性に欠ける。
    「(オーウェル)私ははじめて、嘘をつくことが職業である人物に出会ったが、なんとその人のことを人々はジャーナリストと呼んでいる」p18
    「(トロッキー)あなたは戦争に関心がないかもしれないが、戦争はあなたに関心をもっている」p57

  • 平和のために軍事力を持つことが必要という、一見あべこべのように感じていた理論を、わかりやすく説明してくれた本。今までの世界の歴史から、今の国際情勢、日本の立場について知れたし、理想論だけでなく現実的に世界を見て日本がどのようにあるべきかを示してて、かなり勉強になった。

  • 国際政治学者の細谷教授が、先の安保関連法について賛成派の立場から論じたもの。
    安保関連法については、なぜ改正が必要なのか、日本の安全保障をどうするのか、という「そもそも論」が十分でなかった。法自体が相当に複雑であったこと、「違憲・合憲」に視点が集中してしまい趣意の議論が進まなかったこと、ネットを中心に感情的な意見が横行したことが要因なのだろう。
    本書は、その「そもそも論」を丁寧に解説してくれた好著。改めて安全保障について考えてみることができた。
    あとがきによると、本書は他の媒体の論稿を基にしているものらしい。繰り返し多く、流れが悪いのように感じたのは、それ故か。

  •  2015年成立の「安保関連法」について、国際協調の強化に資するという観点から、肯定的かつ柔らかい筆致で論じている。全体の半分ほどは歴史も含めた安全保障環境の解説が占めており、その上で得られた教訓として、外交的手段と軍事的手段双方の組み合わせでこそ「対話と交渉」が可能だとし、SEALDsが専ら外交的手段のみでこそあらゆる緊張や脅威が解決可能と考えているように見えることを批判している。また、SEALDs(も含めた当時のデモ参加者)が平和を求めるとする一方で、ロシアによるウクライナ主権の侵害や「イスラム国」の一般市民殺戮に対して冷淡であるとも指摘している。
     また、戦後日本の憲法解釈については、1960年代半ばまでは集団的自衛権行使や戦闘を含む国連軍・国連PKO参加も禁じられていなかったが、その後ベトナム戦争を背景に時の政権が海外派兵禁止との立場となり、そして1972年・1981年の見解で集団的自衛権行使の全面禁止と、むしろそれまでの憲法解釈を変えていったと指摘している。
     巻末の参考文献案内は、賛成・批判、憲法・国際法・安保政策、と幅広い分野にわたっている。

  • 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信じる」という一文が憲法前文にあるのだから、自国のみ戦争には参加しない!と言って道徳的に優れていることを誇るのはおかしい。
    この理念を憲法が謳っている限り、日本は「積極的平和外交」を行っていくべきだろう。

    というか、戦力=悪ではなく、戦力=防御力であるということも理解すべきではないかと。

  • 2018に再読したため、レビューを追記します

    2015年の安保法制(平和安全法制)をめぐる議論を意識し、現在の日本の安全保障に関する議論のあいまいさを非難し、リアリズムに基づいた安全保障を紹介している。

    しかし、安保法制反対派がこの本を読んだとしても、安保法制を受け入れることは無いと思う。そういう意味で、タイトルである「安保論争」を解決に向かわせる力を持っている本かというと、疑問に感じた。
    安保論争は価値観の相違で生み出されているので、リアリストにとって価値があると思う話を連ねても、反対派に言葉が届くことはないだろう。
    反対派が敵視するものは、戦争において人の死という犠牲が軽視される統治機構の非情さ、また、軍隊がしばしば陥った暴走の歴史、といったものなのだから、現在の平和を軍事的緊張とパワーポリティクスが支えている、という現実的な安全保障のメリットを説いてもかみ合う訳がない。

    最後に、本書が勧めるように、日本が積極的に国際的な安全保障政策の枠組みに乗っかった場合、世界や地域の安定性は増すのかもしれないが、アフガニスタンのISAF部隊へ参加した多国籍軍のように、少なからず戦死者が出る可能性がある。
    これについても言及するのがフェアではないだろうか。

    ---------------2016年投稿ぶんはここから

    著者は国際政治学者で、雑誌への起稿をまとめたものと、描き下ろしの原稿で構成されている。

    2015年の安保法制(平和安全法制)の審議に対する反対運動を意識しつつ、
    ・集団的自衛権を含む集団的安全保障が戦後の安全保障の根幹であり、世界が不安定化しつつある今、集団的安全保障は重要性が増している。
    ・日本は国際的な安全保障の責任分担よりも国内の感情的な嫌悪感を優先し、外国が実力で維持している平和にタダ乗りしてきている
    ・内閣法制局の従来解釈や憲法学者の違憲が集団的自衛権を否定している、という指摘はいくつか欠点を抱えている(内閣法制局は諮問機関にすぎず、また過去には日本の集団的自衛権行使を一部肯定していたし、自衛隊を違憲だと考えている憲法学者が多いのに、それには目をつぶって憲法学者が安保法制に反対していることを反対の論拠にするのはダブルスタンダードだ、といったもの。

    日本政府の集団的自衛権に関する解釈については知らないことが多かったので、これは面白かった。

    一方で、この本を読んでいて気になったのは、バラバラな媒体の原稿を集めた故かコンセプトが不統一で、積極的な安全保障への参加を推進したいのか、安保論争に欠けている要素を指摘したいのか、イマイチやりたいことがはっきりしていない。

    その上、「安保論争」というタイトルにも問題があって論争の一方の側…反対派の議論がほとんど掘り下げられていない。
    SEALDSの「私たちは、対話と協調に基づく平和的かつ現実的な外交・安全保障政策を求めます。」
    という主張が実現困難、という批判はしているのだけれど、自分が考えるに、彼らが21世紀版ネヴィル・チェンバレンみたいな事をまじめに考えている連中だとは思えない。
    むしろ、保守政治や武力を用いた安全保障への何となくの嫌悪感といったセンチメンタルな理由から反対していると思うんだけど、著者の専門である殺伐とした国際政治や外交と相性が悪く議論が成立しなさそう。



    著者は、日本は平和国家として活動していくことを決めているのだから心配するな、と言うけれど、本当に信じていいのか?
    理性的に行動している、平和を求めていると言いながらミニタリズムに入れ込んで無謀な挑戦をしたあげくに国を滅ぼした指導者はいくつも居て、そのような不信感が安保論争を引き起こしたという面があるのではないか。
    そのような反対派の思考にフィットしない反論が気になる。

    図書館で借りました。

  • 安保法制について踏み込んだ話はしてないけどなんで安保法制がこんだけ反対を受けてて、なんで自分はそれでも賛成なのかってのがわかりやすく書かれてていいし、日本の今後の安保政策はいかにあるべきなのかってのを考えるヒントをくれる。今度は『安保法制』みたいなテーマでそれぞれの条文がなぜ必要と思うか突っ込んだ議論して欲しいな。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1971年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了、博士(法学)。慶應義塾大学法学部教授
著書に、『倫理的な戦争――トニー・ブレアの栄光と挫折』(慶應義塾大学出版会、2009年)、『外交――多文明時代の対話と交渉』(有斐閣、2007年)など。

「2020年 『国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

細谷雄一の作品

安保論争 (ちくま新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×