- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480069047
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
第2時安倍政権時になされた集団的自衛権にかかる解釈変更について、歴史・国際政治の観点からその必要性を説く本である。度々高坂正堯の論文を引用しているように、著者はリアリズムの立場に立っていると思われる。したがって、著者は今次の安保法制賛成の立場から、反対的な人に訴えかけることを目的としているようだ。
国際政治史を勉強してきた評者はもちろん集団的自衛権の行使は賛成である。著者の言いたいこともよくわかる。ただ、この本の内容はここの論点についてあんまり深堀りされていないなという印象をもった。まあ2016年刊行の本だから仕方ないかもしれない。
軍事にかかわることになると、大して理解していないのにもかかわらず過剰に反応する日本人、とりわけ左派の人には困惑する。もはや集団的自衛権の問題は、政権を批判するための道具なってしまっており、その内容が的確に吟味されているとは思えない。こうした点は著者と同意見である。
-
2015年の安保法制の成立背景と意義を冷静に振り返ることができる良書でした。
大学の学生たちに噛んで含めるように語りかけているような、平易で丁寧な文章です。著者の教え子達への深い愛情を感じます。
日本国憲法は何度か読んだことはありましたが、国際協力について強いコミットが表現されていることに、著者の指摘で改めて気付かされました。 -
【外交によってどのように平和の実現が可能なのか。また、外交によって可能なことと、外交によって不可能なことは何なのかを知ることが、不可欠となる。外交とは魔法と同じではない】(文中より引用)
2014年から2015年にかけ,右派・左派の双方から激しい言葉の応酬が見られた安保関連法の制定過程。噛み合わない議論と現実に基づかない認識に歯がゆさを覚えた著者が,現代の国際環境をにらみつつ,安全保障を語る上で必要不可欠な視点の提供を試みた作品です。著者は、慶應義塾大学法学部教授を務める細谷雄一。
当時の加熱する報道・意見合戦を思い起こしながら読み進めてみたのですが,本作での主張を踏まえた議論がなされていたら,その様子はどのように変わっていただろうかと思わずにはいられませんでした。著者の憤りがかなり前面に出た作品ではありますが,外交史から国内政治まで,幅広い分野からの視点が押さえられており,安全保障について考える上で大変参考になる一冊ではないでしょうか。
平易な言葉で書かれている点も☆5つ -
平安法制肯定派の国際政治・外交史の研究者による、独善的、感情的で党派的なものになりがちな我が国の安保論争、平和と戦争をめぐるこれまでの歴史と、今日の安全保障に対する知見なき「平和」への批判。
ただ、それだけでなく、現下の安全保障環境と平安法制の必要性との関係についてもわかりやすく説明されており、その観点からも読む価値はある。 -
筆者は安保法制賛成の立場ではあるが、これまでの議論を法学者とは異なる立場からの見解は新鮮であろう。
-
2017/02/05
-
国際政治の専門家による、安全保障の話。安全保障についての意見には賛同できる。また、わが国の安保論争について、歴史的な説明はよく纏まっており、参考になった。
ただ、いろいろな人が言っている言葉や意見が多く掲載されているが、著者がそれを使って何を言おうとしているのか曖昧なところがある。やや、論理性、学術性に欠ける。
「(オーウェル)私ははじめて、嘘をつくことが職業である人物に出会ったが、なんとその人のことを人々はジャーナリストと呼んでいる」p18
「(トロッキー)あなたは戦争に関心がないかもしれないが、戦争はあなたに関心をもっている」p57 -
平和のために軍事力を持つことが必要という、一見あべこべのように感じていた理論を、わかりやすく説明してくれた本。今までの世界の歴史から、今の国際情勢、日本の立場について知れたし、理想論だけでなく現実的に世界を見て日本がどのようにあるべきかを示してて、かなり勉強になった。
-
国際政治学者の細谷教授が、先の安保関連法について賛成派の立場から論じたもの。
安保関連法については、なぜ改正が必要なのか、日本の安全保障をどうするのか、という「そもそも論」が十分でなかった。法自体が相当に複雑であったこと、「違憲・合憲」に視点が集中してしまい趣意の議論が進まなかったこと、ネットを中心に感情的な意見が横行したことが要因なのだろう。
本書は、その「そもそも論」を丁寧に解説してくれた好著。改めて安全保障について考えてみることができた。
あとがきによると、本書は他の媒体の論稿を基にしているものらしい。繰り返し多く、流れが悪いのように感じたのは、それ故か。