日本文法体系 ((ちくま新書 1221))

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  • / ISBN・EAN: 9784480069269

感想・レビュー・書評

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  • 序章 krsm-四辺形とkrsm-立体
    第1章 アリの助動辞‐圏
    第2章 過去、伝来、完了、存続、継続
    第3章 伝聞、形容、様態、願望、否定
    第4章 推量、意志、仮定
    第5章 自然勢、可能態、受身、敬意、使役
    第6章 助辞の機能の広がり
    第7章 品詞と構文
    第8章 敬語、人称体系、自然称
    終章 論理上の文法と深層の文法

    著者:藤井貞和(1942-、東京、日本文学)

  • いやー難しい、というか、読みにくい、というか、ある意味「難解」な類いの本でした。
    古文を教えるのに参考になれば、と思い、読み始めたのだが…(; ̄ェ ̄)
    いわゆる「学校文法」を説明し直す=書き換える、という野心的な目的が本書にはある。“krsm-立体”からの説明は納得。ここに本書の特徴があるのではないか?
    高校生にはちと難しい。大学で日本語学とか日本古典文学とか学ぶ人には良い問題提起となる本だと思います。

  • 【内容紹介】
    シリーズ:ちくま新書
    定価:本体980円+税
    整理番号:1221
    刊行日: 2016/11/07
    判型:新書判
    ページ数:368
    ISBN:978-4-480-06926-9
    JANコード:9784480069269

      日本語文法を理解するには、日本語の起源から問いなおさねばならない。日本語の発展史に即した文法理論が必要であり、西洋語の文法を日本語に当てはめた現在の学校文法に代えて、新たな文法体系を打ち立てねばならないのだ。現在を示す「あり」(r)、過去の「き」(k)、推量の「む」(m)、形容の「あし」(s)の組み合わせで成り立つ時の助動辞をはじめ、日本語の隠れた構造を明らかにし、豊富な古文の実例をもとに、日本語文法の本質に迫る。古文の読みが愉しくなる、全く新しい理論体系。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069269/

    【感想】
     難易度高め。ちくま新書で、たまに見るマニアックな本。
     あらかじめ古い国文法を勉強していれば楽しく読める。


    ※この目次ではルビは省略した。環境依存文字の「踊り字」も普通の表記に直した。
    【目次】
    目次 [003-010]
    はじめに [011-013]
    凡例 [014]

    序章 krsm-四辺形とkrsm-立体 015
    「き」「り」「し」「む」を結ぶ/「き」「り」「し」「む」を立体にする/アリariから「り」へ/過去から現在へ〔線上の「けり」〕/過去を推量する「けむ」/時間・推量・形容の広がり〔「らむ」「らし」「べし」〕/語を成り立たせる要素〔前‐助動辞〕/膠着語的性格/配列の順序〔承接関係〕/機能に名を与える

    第一章 アリの助動辞‐圏 035
    1 「り」の原型はアリ 035
    「り」(~る、~ある)の成立/助動辞としてのアリ(~ある)
    2 「肯定なり」(~である、~だ)と「肯定たり」(~たる) 040
    ni(に)‐「なり」‐アリari/to(と)‐「たり」‐アリari
    3 「ざり」「ず」(~ない)〔否定する〕 044
    zu(ず)‐「ざり」‐アリari
    4 活用語尾〔形容詞カリ活用〕 046

    第二章 過去、伝来、完了、存続、継続 049
    1 「き」〔過去を特定する〕 049
    過去の時間と非過去と/「き」は積極的過去/力行とサ行とにわたる活用/「け」と「せ」〔未然形〕/起源としての「し」/「き」=目賭回想は正しいか/『古事記』地の文の「き」と物語文学の「けり」/「まし」との関係
    2 「けり」〔過去から現在へ〕 062
    「き」とアリariとのあいだ/「けり」の本来は動詞「来り」/時間の経過〔過去からの〕/時間的なあなたからやってくる事象/伝来の助動辞として/「けり」に詠嘆はあるか/口承語りの文体
    3 「ぬ」のさし迫り方、過ぎゆき方 077
    「ぬ」と「つ」〔長円立体〕/「はや舟に乗れ。日も暮れぬ」/「絶えなば絶えね。ながらへば」/「に‐き」と「な‐む」/上接する語から区別するか/一音動詞「ぬ」からの転成
    4 「つ」〔いましがた起きた〕 085
    「ほのゝ゛ゝ見つる」「楊貴妃のためしも引き出でつべく」/「ししこらかしつる時は」/一音動詞「つ」からの転成
    5 「たり」から「た」へ 089
    「たり」(~てある)に「つ」が内在する/「たり」(存続)と「り」(現存)/「たり」が時制に近づくとは/完了と過去との親近/口語における「た」文体
    6 「ふ」〔継続〕 095

    第三章 伝聞、形容、様態、願望、否定 101
    1 「伝聞なり」と“見た目”の「めり」 101
    “鳴る”と“見る”/「伝聞なり」〔“耳”の助動辞〕/『源氏物語』から/「ななり、あなり」/「はべなり」と「侍るなり」/「めり」(~みたい)〔見た目〕/「めり」の『万葉集』の例/「なめり、べかめり、あめり」
    2 形容、様態 114
    形容辞「し」の位置/「じ」(~ではない)〔「し」の否定〕/「ごとし」(~のごとくだ)/「やうなり」(~のようだ)〔様態〕
    3 「たし」(~たい)の切望感 119
    〈甚し〉から「たし」へ
    4 らしさの助動辞「らし」 122
    「らし」の成立/「らしさ」とは/古語としての「らし」/「春過ギて、夏来たるらし」/「をとめ子も‐神さびぬらし」
    5 「なし」「なふ」 129
    「なし」〔程度の否定〕/「なふ」(~ない)

    第四章 推量、意志、仮定 133
    1 アムamuを下敷きにする 133
    「む」(=「ん」)は現代語の「う」に生きる/推量(~う、~よう)と意志(~う、~よう)/婉曲という説明/「むず」「うず」(~う、~よう)/「けむ」(~たろう)〔過去推量とは〕/「らむ」(いまごろは~だろう)〔現在推量とは〕/「ば」(~ならば)〔仮定〕
    2 「ま」「まほし」「まうし」 143
    「まく」〔ク語法〕/「まほし」(~したい)「まうし」(~したくない)
    3 「まし」(~よかったのに) 145
    「まし」と「し」(過去)/反実仮想とは
    4 「べし」の性格 148
    機能語の性格として/「む」と「し」(形容辞)とのあいだに/「べらなり」
    5 「まじ」「ましじ」〔うち消し推量〕 153
    「べし」と「ましじ」/「まじ」

    第五章 自然勢、可能態、受身、敬意、使役 159
    1 「る」「らる」 159
    自然勢〔いわゆる自発〕/可能態/「る、らる」は受身か/受身の言い方を「る、らる」が引き受ける/『万葉集』の「ゆ、らゆ」/「る、らる」の敬意
    2 敬意と使役〔す、さす、しむ〕 
    四段動詞「す」を想定する/四段型と下二段型〔助動辞「す」/高い敬意〔最高敬語〕/「さす」/「しむ」

    第六章 助辞の機能の広がり 177
    1 助辞、助動辞の視野 177
    助辞の相関図/A詞B詞と、下支えするC辞
    2 主格を「が」が明示する 180
    主格の「が」/「主語」は要らないか/「が」格/「の」格を認定する
    3 「に」格および以下の格助辞 185
    「に」格/「を」格/「へ」格/「と」格の認定/「より」「ゆり」「よ」「ゆ」/「から」/「まで」「して」「もて」
    4 「は」(係助辞) 195
    「が」は「は」と両立できない/「が」を押しのける「は」/「は」=差異化と「も」=同化/文節を越える〔係り結び〕/周布という視野
    5 「こそ」および以下の係助辞 202
    疑問詞を承ける、承けない/「こそ」/「ぞ」/「なむ」(=なん)/「か」(疑問)と「や」(疑念)/「かは」「やは」(反語)/「な」(禁止)
    6 副助辞〔限界や範囲の線引き〕 208
    7 接続助辞 215
    活用形に下接する/「に」「を」および「が」について
    8 間投助辞〔投げ入れる助辞〕 221
    9 終助辞〔文末の助辞〕 223
    未然形に下接する/連用形に下接する/終止形に下接する/連体形に下接する/已然形に下接する/名詞の類に接続し、また独立性のつよい終助辞/節末、句末に付ける

    第七章 品詞と構文 231
    1 C辞が包むA詞B詞 231
    品詞について/文の成り立ち/論理的世界にいどむ/自立語と非自立語/意味をあらわす語は
    2 名詞の性格 239
    文法的性(ジェンダー)/「秋の日のヰ゛オロンの」〔単数か複数か〕/時間のなかの“数”〔石原吉郎〕/アイヌ語、数詞、算用数字/代名詞の生態〔話し手との関係〕/コソアド体系〔これ、それ、あれ、どれ〕/固有称〔固有名詞〕
    3  249
    動詞、形容詞、形容動詞/語幹と活用語尾/動詞の活用、一音語と二音語/補助動詞、補助形容詞/形容詞の活用/「じ」(形容辞)/形容動詞を認定する/活用形〔未然形〜命令形〕/音便と現代語
    4 飾る、接ぐ、嘆じる 270
    副詞〔作用詞、擬態詞〕/連体詞〔冠体詞〕/接続詞/感動詞〔間投詞〕

    第八章 敬語、人称体系、自然称 281
    1 尊敬、謙譲、丁寧による人称表示 281
    「たまふ」(~なさる、お〜になる)/「たまふ」(~させていただく)/「はぺり」(~ござる、~でございます)/待遇表現の二種〔素材と対者〕/二方面敬意〔二重敬語〕/自称敬語
    2 物語の人称体系 289
    談話の人称と物語の人称/物語人称〔四人称とは〕/アイヌ語の語り/ゼロ人称〔語りとは何か〕/無人称、詠み手たちの人称、物語歌
    3 自然称、鳥虫称 297

    終章 論理上の文法と深層の文法 301
    論理上の文法/深層から下支えするもう一つの文法/懸け詞はpun(地口)か/詩歌の技法とは〔懸け詞、序詞〕/二語が同音を共有する/一語の多義的用法/枕詞と序詞/縁語という喩/心物対応から複屈折へ/「うたのさま、六つ」/「譬喩」歌〔懸け詞が消える〕/文法と修辞学

    おわりに 318
    歴史的かな遣い/正書法/古日本語から現代語へ
    文法用語索引 [i-x]

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著者プロフィール

1942年(昭和17)、東京都文京区の生まれ。疎開先は奈良市内。その後、都杉並区に移る。東京大学文学部国文学科を卒業する。『物語文学成立史』(東京大学出版会、1987)、『源氏物語論』(岩波書店、2000、角川源義賞)、『平安物語叙述論』(東京大学出版会、2001)が物語三部作。詩作品書『地名は地面へ帰れ』(永井出版企画、1972)、詩集『乱暴な大洪水』(思潮社、1976)以下、詩作と研究・評論とが半ばする。1992〜93年、ニューヨークに滞在する。『湾岸戦争論』(河出書房新社、1994)、『言葉と戦争』(大月書店、2007、日本詩人クラブ詩界賞)、『非戦へ』(編集室水平線、2018)が戦争三部作。『水素よ、炉心露出の詩』(大月書店、2013)は副題「三月十一日のために」。2011.3.11のあと、『日本文学源流史』(青土社)、『〈うた〉起源考』(同、毎日出版文化賞)、『物語史の起動』(同)の三部作、『文法的詩学』(笠間書院)ほか古典文法論に打ち込む。沖縄文学論の『甦る詩学』(まろうど社)は伊波普猷賞。最近の詩集では『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』(思潮社、2022)が読売文学賞、日本芸術院賞。『物語論』(講談社学術文庫、2022)、『日本近代詩語』(文化科学高等研究院出版局、2023)、『〈うた〉の空間、詩の時間』(三弥井書店、2023)は新しい。

「2024年 『増補新版 言葉と戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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