時間の言語学: メタファーから読みとく (ちくま新書1246)

著者 :
  • 筑摩書房
3.38
  • (3)
  • (8)
  • (5)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 216
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069504

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 時間表現を精査して、人が時間をどのように認識しているかをモデル化していく。

    時間を川の流れのようなものとイメージし、主体はその川の中にある。(河畔に立つというモデルもある。)
    その場合、未来と過去はどちらにあるか?

    実はどちらもある。
    今から数日経った日を指して言う言い方に「○日後」といえると同時に、「○日先」とも言えるからだそうだ。
    ここで私の目から鱗が落ちた。
    自分自身はこれまで川の中にいて上流を見ながら、その方向を未来だとしか思っていなかったからだ。
    ちなみにこの時間のモデル、青山拓央さんの『心にとって時間とは何か』にも出てくる。
    割とこの話題では普遍的なモデルなのだろう。

    時間を巡るメタファーを慎重に検討するくだりは、人によってはまだるっこしく思うかもしれない。
    でも、最終章まで読み進めると、ある感動が沸き起こる。

    言語学者(特に日本語学界隈?)は、現状を淡々と記述するひとが多い気がする。
    が、瀬戸さんは、時間が、金や資源をメタファーにしている現状を憂えている。
    そして、「命」を新しいメタファーにし、表現のみならず概念も刷新していくべきだと主張する。
    優れた表現者が、そういう認識を共有し、作品を作ってくれたら、たしかにそういう方向に変わっていけるかもしれない。
    そして、そんな方向に変わっていくのもすてきだな、と思う。

  • 難解…。モモの実例はわかりやすかった。「時は金なり」「功利主義」を表すのが「灰色の男」、「時は命なり」を表すのが「モモ」。
    現代人は「時は金なり」から「時は命なり」へ価値観をシフトする必要があると、筆者はシンプルで力強いメッセージを送ってくれているのだが、この結論に至るプロセスが非常に難解。
    言語学的なアプローチは、言葉の対となるメタファーを一つ一つ整理していくため、とても時間と手間がかかっている…本書の考え方を借りれば、命がけのアプローチといっても差し支えない。

    真木悠介の時間形態の話はおそらく「気流の鳴る音」かと思う。読みたくても読めていない本のうちの1冊だから、今年チャレンジしてみたい。

  • 「時間とは何か」という問いに対して,言語学の観点から接近する試み。時間の意味についてはメタファーでしか語り得ないと指摘し,「流れる時間」,「時は金なり」,「時間に追われる」といった言い回しに働く意識を分析する。

  • 過去から現在、未来への時間の流れを言葉で表していました。内容的には少し難しかったです。

  • 2017/10/11読了。

  • シリーズ:ちくま新書
    定価:本体760円+税
    Cコード:0280
    整理番号:1246
    刊行日: 2017/03/06
    判型:新書判
    ページ数:208
    ISBN:978-4-480-06950-4
    JANコード:9784480069504

     私たちが「時間」をどのように認識するかを、〈時は金なり〉〈時は流れる〉等のメタファー(隠喩)を分析して明らかにする。かつてない、ことばからみた時間論。

     時間は抽象なので、私たちが時間を認識するとき、なにかに「見立て」るしかない。この「見立て」つまりメタファーを分析することで、“時間”を具体的に意識化することができる。近代において最も強固な「見立て」は“時は金なり”のメタファー。コーパスや、具体的なテキスト(「吾輩は猫である」「モモ」等)を探り、私たちが縛られているさまざまな時間のメタファーを明らかにした上で、新しい時間概念(「時間は命」)を模索したい。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069504/


    【目次】
    第1章 時間をことばで表すと―『広辞苑』vs.『新明解』
    『広辞苑』の定義の変遷
    『新明解』の挑戦

    第2章 「時間」と「とき」
    ときの意味―ゆったりと流れるもの
    時間の意味―計量されるもの
    「時は金なり」は「時間は金なり」?

    第3章 時間経過の認識論
    哲学者たちは時間をどう思索したか?
    時間はどう流れるか

    第4章 時間のメタファー
    時は金なり
    時間に追われる
    時間のネットワーク―時間のことばの全体像

    第5章 新たな時間概念を求めて
    “時間は命”
    時間の円環を取り戻す

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

大阪市立大学名誉教授 佛教大学教授

「2014年 『大学生のための 英語の新マナビー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀬戸賢一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×