ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判 (ちくま新書 1267)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069788

感想・レビュー・書評

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  • SH6a

  • 憲法学は本当に止めてほしいと思いました。

  • 憲法学者(の主流)って、英米法の世界であるアメリカ人が作った憲法を、大陸法のコンテクストで読み解こうとして遊んでる莫迦揃いだったのか!

    だまされた!

    「自衛権」は国際法上の概念だから、憲法に記載する必要が無い。それで全て終わってるんじゃねえか!

    ・9条1項は、1928年不戦条約の焼き直しであり、国連憲章2条4項を国内法で裏付けるするもの
    ・9条2項は、「国権の発動たる戦争」を否定したものであり、常に国際法に合致する形でのみ武力行使を行い、決して国権の発動たる戦争を行うことのない組織としての自衛隊は、9条2項の言う「戦力」ではなく合憲。
    ・「交戦権」はもはや現代国際法には存在しない概念。

  • 「戦後日本の国体」に於ける日本国憲法がどのような歴史を辿って来たのかを著した一冊です。日本の歴代の憲法学者の主張を分析し、本当の日本国憲法とはどのように解釈すべきなのかを提言した含蓄に満ちた内容でした。日本国憲法は「国民による政府の制限ではなく、憲法規範による社会構成員全員の制限によって定義される「立憲主義」」と「国際協調主義」に基づき憲法と国際法の調和を求めていると本書は説きます。日本国憲法が既に存在していた国際連合憲章を後追い的に追認するものであるというのは、腑に落ちました。この本の発行当時は安倍総理による集団的自衛権の行使に注目が集まっていた時期だったので、終章の著者の憲法9条に於ける意見も必読です。

  • 本邦憲法学者による日本国憲法に対する専断をその歴史、背景、あるべき解釈も含めて鋭く解体する。

    旧帝国憲法で主流となったドイツ国法学派が新憲法への移行時にその勢力を維持すべく、本来(英)米法、国際法に由来する新憲法を強引にドイツ国法学の文脈で解釈したのがすべての捩じれの発端。

    国際法体系にはない統治権、生存権というドイツ国法学由来の概念を持ち出し、「八月革命」なる架空の概念をでっち上げ、現憲法における自衛権を制限した。

    国家を擬人化するドイツ国法学体系に基づけば生存権に裏付けられた自衛権の存在は自明と思われるが、なぜ個別的自衛権のみを許容し集団的自衛権を否定するのか。

    自らの政治力維持のため「抵抗の憲法学」なる神話に縋り、半世紀以上に亘り国政や司法を壟断してきた東大法学部系憲法学者たちの責任は重い。

  • 戦後、抵抗の憲法学は憲法の表と裏をうまく操りながら、憲法の狭い理解での解釈を定着させつつあるのだと理解した。
    憲法は国連憲章、国際法の実情を踏まえて解釈する必要がある。
    ドイツ国法学の解釈に頼ることも不適切だ。
    憲法を素直に読むことの必要性を改めて感じた。
    憲法は少なくとも一部の限られた憲法学者の解釈のために存在するわけではない。
    筆者は国際関係学中心の専門的な知見と、憲法についても独自に深い洞察を加えながら、非常に素直に憲法を解釈していると感じた。
    改憲するのかどうかは別として、憲法について議論することは有意義だ。本書をきっかけにあらゆる分野の人が憲法について再考することを祈念する。

  • 国際協調主義の立場から憲法を解釈する事により「抵抗の憲法学」を批判する試み。戦前の顕密体制による国体(天皇制)が「8月革命」を経て、「表」と「裏」が入れ替わる形で9条と安保の顕密体制に移行しているという指摘は大変興味深い。また、冷戦終結までの両者の共存の枠組みの中で国際協調主義は衰退するものの、冷戦終結後は国際貢献が求められるようになり、国際情勢の変化により共存の枠組みが維持できなくなりつつあるという説明にも説得力がある。
    結局、現在は英米法的解釈と抵抗の憲法学的(独法学的?)解釈との対立になっているようだが、昨今の世論調査では改憲必要派の方が多いので、大衆レベルでは前者が支持を集めているようにも思える。いずれにしても、賛否の立場の違いはあるにせよ、議論は進めていく必要はあるだろう。

  • 本書は日本国憲法の解釈の変遷をつぶさに読ませてくれた。
    政治の都合による解釈、憲法学者のロマン主義による解釈、それがすべてであって、憲法の精神などというのは解釈する人間の言説にすぎないと思い知る。

    この事実を見ると、現在戦われている憲法解釈、改憲論争など本当にどうでもいい感じがしてくる。ばかばかしい、としか言いようがない。
    政治に都合がよく、憲法学者が容認し、世論が同調すれば、いかなる解釈も合憲になりそうだ。

    著者が言うには
    日本国憲法は世界的に見て特別なものではない。
    もともとが国連憲章とアメリカの憲法思想に基づいて起草されたものである。
    つまり英米的な、字句に捕われないスタイルの憲法であるのに、日本の憲法学者の伝統で大日本帝国憲法の形を引きずり、ドイツ国法学的な字句解釈に終始する解釈をやっているのが、そもそもの間違いであると。

    その観点からすると、現在やっている憲法論争はまったくお門違いということになる。

    なんだかなあ、憲法改正国民投票に備えたいだけという一般人としては、もう憲法の本を読むのはこれで終わりにしてもいいな と心底思いました。
    一般人に必要なことは、憲法改正を考える時、字句の矛盾がどうとかいいう小難しい議論に深入りするのは騙されに行くようなもの。
    シンプルに、これまともだわ と思うところへ一票投じれば良いだけだと思いました。

  • 改めて「憲法とは?」を勉強する良い機会になりました!
    読みながら分かっているようで分かってないことを理解。もう少し勉強が必要ですね。。。苦笑

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著者プロフィール

1968年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。同大大学院政治学研究科修士課程修了。ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)博士課程修了、Ph.D.(国際関係学)を取得。広島大学准教授、ケンブリッジ大学客員研究員などを経て、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(国際関係論)。著書に『平和構築と法の支配――国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『国際社会の秩序』(東京大学出版会)、『「国家主権」という思想――国際立憲主義への軌跡』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『国際紛争を読み解く五つの視座――現代世界の「戦争の構造」』(講談社)、『集団的自衛権の思想史――憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)など多数。

「2023年 『戦争の地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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