これからの日本、これからの教育 (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071064

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  • 前川喜平と寺脇研の対談。

    前川喜平は、文部科学省の天下り問題で責任をとって事務次官を辞任、その後、加計学園問題で、文書があったと証言した人。
    対談相手の寺脇研も文部省で「ゆとり教育」を推進した人。

    お互いのやってきたことを話し合うような感じ。
    どのように組織の中で自らの信念を貫いたかというようなストーリーが多く、武勇伝というか、結果、自分たちをほめたたえている。
    流石、官僚組織で出世するような人たちだから、ぎらぎらして、口もうまいんだなーという印象も受けた。

    どこまで組織の中で、話しているような反骨精神で推し進めていたのか、当の本人たちが語ってしまっているので、客観的にはわからないが、この語られていることが本当であれば、なかなか大した方たちなのだと思う。

    何々省の管轄が何で、本来どうするべき、など、縦割りの管轄の中の組織の上下関係ヒエラルキーが絡み合っている世界。政治家の圧力に屈したりすることも、赤裸々に書いてあるが、正直あまり興味がない分野なので、へーやっぱりそういう世界なのかという平坦な感想しかいだけない。

    このお二方がすごいのかどうかはおいておいて、日本の教育として、教育を管理している政治家や官僚たちが硬直化していること。その中で志を持ち改革していこうという気持ちの大切さはよく分かった。

    また、さすが、教育の専門家なので、教育制度に関数トピックは、面白かった。

    ・農業高校を活性化
    ・高校無償化の問題点
    ・朝鮮学校の無償化
    ・八重山地区の教科書問題
    ・LGBTへの対応

    などなど

    あとは、新自由主義や、規制緩和などの考え方が営利目的ではない、教育という現場においては、必ずしも正しくないというのは良く分かった。

  •  この本を読んで意外だったのは、文部科学省にも真剣に教育のことを考えている人がいたという事実だ。学校に勤める職員のほとんどは、文部科学省をこころよく思っていない、というよりむしろ、教育の敵くらいに考えている。文部科学省とは、権力者や経済なんとかという金の亡者が、生徒のためでも教員のためでもなく、単に己の利益のために思いついた作戦を、適当な美辞麗句で包んで一方的に現場に強制し、当然のごとく失敗しても、責任はすべて現場に押し付ける組織だと思っている。実際その通りであることは、英語の授業におけるオーラルコミュニケーションとやらの失敗や、最近では加計学園事件で証明されているが、この本を読んで、文部科学省にも誠実に教育のことを考えている人がいた、或いはいることがわかり、少しだけこの組織を見直した。
     八重山地区の教科書問題に一定の解決をもたらすため、また、義務教育国庫負担を守るための前川氏の苦悩、手腕、尽力には頭が下がる思いだった。長いものに易々と巻かれていくのでなく、正論を通すための工夫、努力。頭脳とはこのように使われるための器官であると、あらためて思った。
     また、寺脇氏はゆとり教育の「元凶」などと呼ばれているが、醜い損得勘定とは最も遠いところで、真剣に誠実に教育を考えている人であることがよくわかった。そもそも、俗に言う「ゆとり教育」は、児童・生徒の学力を特に低下させたわけではないことは、「「ゆとり批判」はどうつくられたのか」(佐藤博志・岡本智周)で、落ち着いて、詳細に語られている。
     その他、詳しくは本書を読んでほしいが、この二人の著者のように、教育に対する自分の責任を誠実に全うしようとする人は結局外されていく実状に絶望する一方で、文部科学省にも、教育とは無縁の輩の手先では必ずしもない人間がいることに一筋の希望が見出だせる、そんな本だった。教育とは学ぶ者のために行われるはずのものである、そんな当たり前のことを再認識させてくれる。教育関係者はもちろん、教育に関心がある人には一読を勧める。

  • 文科省に勤めていた二人の対談。

  •  官僚のどうしようもなさが、際立っている今だから、読みたい。
     

  • 主張は素敵だと思った。組織に潰された感じ。

  • 「個あってこそ公」
    官邸がやりたいことを官僚に有無をいわせず実行されるのではく、まっとうな官僚のやりたいことをまっとうな官邸がサポートする。これが官邸指導ではないだろうか?
    政府全体の長期的な視点から広く教育問題を議論した臨時教育審議会、今も続く教育改革の目標の原点

  • やや自画自賛に見える部分はありますが、お二人ともが、日本の教育の将来に対して、自らが持つ力を捧げて仕事をしてきた人であることがよくわかります。

    強いものになびき、時の強者の意に沿う行動だけを競うレースに、なんとか参加せずに生きていきたいと思わざるを得ません。

    「ゆとり」か、「それ以外」か。
    「改革」か、「抵抗勢力」か。

    なんでも単純化して、なんでも標的を作っては一人の強者の周りを多数で固めて「黙れ黙れ」をするのは、残念ながら日本のお家芸なのかもしれません。

    実態のない「おもてなし」より、
    「黙れ黙れ」の方が、ずっと日本を象徴しています。

    自分が世を去る100年先、ではなく、
    「20年先」の未来を考えることが、教育を受けさせる側にも、学ぶ側にも必要です。

    学びながら、自分の学んだことを周りに伝えていく、広げていく世の中になれば、と願わずにはいられません。

    前川さんにかぎらず、官僚の競争の只中からはじき出された方の本を、一時期よりたくさん手にとることができます。

    読むと、どうしても今の日本が正しい方向に進んでいないような不安が確信に変わってしまう感じがします。

    杞憂でなければ、よいのですが。

  • 前川氏関係の本で一番読めた本。教育行政を実務者から主観的・経験的に語られている。

  • この二人のような文部官僚の存在は,今の財務官僚のいい加減さを見ると,同じエリート国家公務員でもここまで違ってくるのかなと驚いている.寺脇さんが広島県の教育長を務めたことは地元でもよく知られており,異色の存在であったことは確かなようだ.これまでやってきたことを変えることは,ものすごいエネルギーが必要であるので,そのような活動をする人材は貴重だと思っている.官僚が政治家とうまいバランスをとって動くことが肝要で,忖度などという馬鹿げた行動は慎んでほしいものだ.

  • 前川喜平さんと寺脇研さんの対談。
    加計問題の真実、なにが問題なのか。
    市場主義と合わない教育。

    こういう私から見たらまっとうな考え方をする人達がいるんだと少し嬉しくなった。(もう退官されていて残念だけれど)
    また、ちょうど悩んでいた公務員の役目についても、法律を現実に即して柔軟に解釈すること、とあり、その通り! と思った。頭でっかりでは何も進まないし、時間がかかる。

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著者プロフィール

1955年、奈良県生まれ。現代教育行政研究会代表。東京大学法学部卒業後、1979年に文部省入省。2016年に文部科学事務次官。2017年1月に退官後、加計学園問題で岡山理科大学獣医学部新設の不当性を公にする。福島市と厚木市で自主夜間中学の講師も務める。著書に『面従腹背』、『権力は腐敗する』(いずれも毎日新聞出版)、共著に『同調圧力』(角川新書)、『生きづらさに立ち向かう』(岩波書店)など多数。

「2022年 『コロナ期の学校と教育政策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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