都市空間の明治維新 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
4.33
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 42
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071958

作品紹介・あらすじ

江戸が東京になったとき、どのような変化が起こったのか? 皇居改造、煉瓦街計画、武家地の転用など空間の変容を考察し、その町に暮らした人々の痕跡をたどる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  前著『江戸・東京の都市史』の新書版。明治維新期における東京の,とくに武家地の空間変容に着目して,一般の読者にもわかりやすい内容に書かれている。
     松山研究の特徴は,維新期の東京の都市空間を「郭内」と「郭外」に区分する点にある。「郭内」とは「江戸城を取りまく外堀の内側」,「郭外」は「その外側で,朱引までの範囲」(36頁)を地理的に表すが,単にそれだけではない。その狭間は,「帝都化」のモニュメントを呼ぶ境界線でもあり,貧富を分かつ境目でもあったという。
     倒幕後,明治政府が安定するまでの十数年間というのは,その組織や制度,さらに東京という「首都」のグランドデザインが幾たびも移り変わった時代である。それだけに,計画は何度も変更され,また時系列でまとまった史料もなかなか存在しない。著者は文字史料だけでも収集する努力を十分に示しているが,それ以上に拘りを感じさせられたのが,地図・地形図を読みとく点にある(16-18頁)。地図は分析する媒体であるとともに,鑑賞する対象でもある。維新当時における東京の土地利用・空間利用を,どのようにartとして捉えるかが,本書の真骨頂にあたるところだろう。
     それだけに,1つ1つのケーススタディーの結論や主張が十分に煮詰められていない部分も,残念ながら存在する。その点は各章において否めないが,たとえば第7章の写真(231頁)のように,武家地の表長屋の転用と商店化に対して,上手い具合に定点観測できた写真を並記するあたりはさすが建築史研究のプロパーだといえよう。
     第8章の「新開町」として登場した神田区の連雀町18番地に関しては,評者も,不動産収益率の事例分析で使用した地面でもある。拙稿によると,その収益率は,1875年の8.5%から1891年の13.1%へと上昇の傾向を示していた( http://hdl.handle.net/2324/27431 ,50頁)。地借が多かった影響もあるだろうが,本書で触れられているような店舗・商売主(258頁)で賑わっていたから,収益率も上昇したのであろう。今後の拙稿も,本書をうまく先行研究として活かしていきたい。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。明治大学文学部史学地理学科准教授。長崎市出身。東京理科大学建築学科卒、東京大学大学院建築学専攻博士課程単位取得退学。米コロンビア大学客員研究員などをへて2010年明治大学文学部史学地理学科専任講師、2015年より現職。博士(工学)。著書=『江戸・東京の都市史──近代移行期の都市・建築・社会』(東京大学出版会、2014・第19回建築史学会賞、後藤・安田記念東京都市研究所藤田賞受賞)、『明治神宮以前・以後──近代神社をめぐる環境形成の構造転換』(共著、鹿島出版会、2015)他。

「2018年 『東京大学が文京区になかったら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

都市空間の明治維新 (ちくま新書)のその他の作品

松山恵の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スタニスワフ・レ...
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする