中世史講義 (ちくま新書)

制作 : 高橋典幸  五味文彦 
  • 筑摩書房
3.90
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本棚登録 : 275
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071996

作品紹介・あらすじ

日本史の先端研究者の知を結集。政治・経済・外交・社会・文化など十五の重要ポイントを押さえる形で中世史を俯瞰する。最新の論点が理解できる、待望の通史。

感想・レビュー・書評

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  • 中世の主要アクターは武士である。近年の歴史学は階級闘争的な歴史観から武士の時代と見ることの誤りを指摘し、多様性を強調する傾向がある。それは正しいが、武士が活躍した時代であることも正しい。鎌倉幕府の御家人となり、地頭となって村落を支配した武士の支配は過酷であった。

    「地頭側は百姓たちに様々な嫌疑をかけ、科料をとったり、その身を押さえたり、あるいはその一族を身代として捕らえる等の行為に及んでいる。その際、十分な捜査を行っていないことについても訴えられている。そのうえ、百姓たちの財産を押収していることもある」(110頁)

    近年の歴史学は百姓らが支配され、搾取される一方ではなく、逃散や訴訟など抵抗する存在であったことを重視する傾向がある。紀伊国の荘園の百姓の訴状では「ミミヲキリ、ハナヲソキ」と地頭の非道を訴えている。これも近時は百姓が地頭の一方的な支配に抵抗していたことを示すものと解釈される傾向がある。

    とはいえ、百姓が抵抗していたことは、地頭の非道がなかったことを示すものでも、地頭の非道が常に是正されたことを示すものでもない。ブラック企業が社会問題になり、糾弾されているとしても、世の中にパワハラや出社ハラスメントがなくなった訳ではないことと同じである。むしろ、「泣く子と地頭には勝てぬ」という言葉が生じたように地頭の非道に泣き寝入りすることが多かっただろう。この「泣く子と地頭には勝てぬ」という言葉が流布したところに日本社会の後進性がある。

    現代日本の刑事司法は人質司法や弁護人の同席なしの取り調べなど人権無視の状況である。これは国際的には日本の刑事司法は中世レベルと批判されている。これは非常に深刻な問題であるが、批判された日本側の意識は低い。そこには中世の非道な状況も「泣くこと地頭には勝てぬ」で受け入れている鈍さも一つの要因だろう。

  • 中世史の概観を掴むのに良い新書。
    院政、日宋貿易、武家政権など各分野の専門家が一章ずつを担当し、要点を説明している。また、章末に推薦図書の記載もあり、次に読むと良い本についてもわかりやすい。
    ただ、内容が学問的で、推薦書も論文集などが多いことから、少し上級者向けな印象を受ける。
    新書から読み始める初学者向けに、より大衆向けの本をお薦めしてくれると良いなと思いつつ、全体感や読書を進めたい領域を知るにあたって良い本だと思う。

  • 院政期から戦国時代までの政治・経済・外交・社会・文化など十五の重要ポイントを押える形で中世史を俯瞰する。各章末に「さらに詳しく知るための参考文献」リストつき。

    2022年3月・4月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00543468

  • TN2a

  • 授業の予習のために読みました。最新の学説が紹介されており、勉強になりました。

  • 歴史が苦手な人には読む順番に工夫が必要かも。
    第15講を読んでからの方が歴史の流れがある程度頭に入って来た上で読めるためオススメ!

  • とっつき辛かった日本中世史
    日本史の中世の時代というと、皆さんは何が浮かぶでしょうか。
    私は、武士、鎌倉幕府、守護地頭、鎌倉仏教、勘合符、蒙古襲来……。こんな感じでしょうか。
    学生時代の日本史の授業では、源頼朝が鎌倉幕府を開いて(当時は大体このあたりからが中世)北条氏が実権を握り、蒙古が攻めてきて神風が吹き、守護地頭(このあたりでごちゃごちゃになる)が○△□◇…。テストで単語埋めるのがやっとでした。

    何が分かり辛いかって、平安時代まで政治を行っていたのは朝廷だったのに対して鎌倉時代以降、つまり中世は武士が台頭して政治の実権を握り、統治の機構が複雑になったことです。
    荘園制などの土地制度についても、もともとあまり得意じゃなかったところに、武士による統治が被さってきて、ごちゃごちゃになってしまったのですね。

    学校で習う日本史のテストは基本的に単語や年表の暗記が中心だったので、覚えるべき単語がぐっと増えるのと、統治の制度が複雑化してきてボーっと授業を聞くだけでは私の頭では理解しづらくなってきたあたり、それが中世のあたりだったのです。
    そういうことがあり、守護地頭、在地領主なんて言葉が並ぶと、「あー!訳わからんわー!」となってしまっていたのでした。

    点から面へ誘った『中世史講義』
    そんな私の中世史に対する認識ですが、その他は、大河ドラマのイメージというか記憶ですかね。「太平記」の高師直を演じていた柄本明さんや北条時頼を演じていた渡辺謙さん、北条時宗を演じていた和泉元彌さんが浮かびます。はい、それだけです。

    武士、鎌倉幕府、守護地頭、鎌倉仏教、勘合符、蒙古襲来、柄本明、渡辺謙、和泉元彌。中世史で浮かぶものを挙げよと言われたらそれくらいしか浮かびません。

    単語(点)でしか認識出来なかった程度だったのです。
    そんな私がもう少し広いイメージ(面)が出来るようになりました。
    カバーに書かれている、

    「平坦な歴史叙述ではなく、政治・経済・外交・社会・文化など十五の重要ポイントを押さえる形で中世史を俯瞰する。」

    の通り、様々な角度から掘り下げられていたので、全て何でも分かるようになったわけではないけれど、たとえば「鎌倉幕府」という単語だったら、鎌倉幕府がどんな流れで支配地域を広げていったかとか、「勘合符」だったら、室町幕府は具体的に明とどのように貿易をしたのかなどが、なんとなく見えたような気がします。

    全体的には私の頭のレベルにはちょっと難しい本だったと思います。
    でも、単語だけの認識しか出来なかった状態から、掘り下げてイメージ出来るようになっただけでも、本書を読んだ大きな収穫だったと思いました。

  • 院政期から戦国時代まで、日本の中世史に関する15のテーマをコンパクトに解説。最新の学説が多く紹介されており、僕の古い理解がいくつも更新された。荘園制の成立は寄進地系荘園ではなく「立荘論」であること。「泣く子と地頭には勝たれぬ」でイメージされる地頭の暴虐さは必ずしも正しくないこと、足利義満が遣明船を送っていた理由(国内では「日本国王」を使っていない)、義持は義満の政策を必ずしも全否定していないこと、などなど。勉強になった。

  • 分かったようで良く分からない中世史。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1378/K

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