大阪 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 85
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072177

作品紹介・あらすじ

梅田地下街の迷宮、ミナミの賑わい、2025年万博の舞台「夢洲」…街々を歩き、文学作品を読み、思考し、この大都市の物語を語る。

感想・レビュー・書評

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  • 大阪旅行の予習のために読んだ。キタ(梅田周辺)・ミナミ(難波周辺)にはじまり、大阪各地の街がどのように形成されてきて、どのような特徴を持っているのかを、豊富な随筆への引用を挟みつつ批評的な文体で描く。
    序章を読んだときは筆者のいかにも評論的な(経済地理学の知識を背景にするといいながらそれを明示せず文学的なスタイルで記述する)文章に違和感があったのだが、本文に進んでみると具体的な街の光景がイメージしやすく、読み物としての面白みがあった。

  •  大阪市に立地する空間の地理学。著者が「約十年間に大阪の街々を歩きながら感じたこと、考えたことをもとにして、現代都市としての大阪を特徴づける<場所>と<空間>について、およそ明治期以降の歴史性をふまえて叙述する」本。書の前半は主としてキタ、後半は主としてミナミを語るが、著者の思い入れはミナミにあるせいか、後半のほうが面白かった。とくに、第5章「ミナミの深層空間ーー見えない系をたどる」は、50頁もの分量を割きながら、阿倍野と千日前、飛田新地と釜ヶ崎、黒門市場を結ぶ三角帯の歴史地理学的意義を大いに語る秀逸な章だといえる。「東京もん」からすると、なじみの薄い大阪の地名が時折見られる。たとえば、でんでんタウンやジャンジャン横丁。ワールドトレードセンター(WTC)ビルなどはニューヨークか、せめて浜松町どまりで、なぜ大阪に存在するのか、不思議でならなかった。「場所は「個」としてではなく、近接・遠隔を問わず他所との関係性のなかで存立していることも忘れてはなるまい」(228頁)という一文に、都市空間の特異性に対する著者の思いが詰まっていると言えよう。
     ただひとつ残念なのは、「結果」という「接続詞」を多発しているところ(たとえば138頁の文頭)。読みやすさを考慮してのものだろうが、「その結果」と正しく書くべきだろう。せっかくの説得力が、この似非接続詞のおかげで浮いてしまっている。

  • 著者:加藤 政洋[かとう まさひろ] (1972-)文化・社会地理学。都市研究、沖縄研究。

    【書誌情報】
    シリーズ:ちくま新書
    定価:本体820円+税
    Cコード:0225
    整理番号:1401
    刊行日: 2019/04/04
    判型:新書判
    ページ数:256
    ISBN:978-4-480-07217-7
    JANコード:9784480072177

    キタとミナミの違いとは何か? 梅田の巨大地下街はどのように形成されたのか? 2025年万博予定地「夢洲」の暗い過去とは? 梅田、船場、アメリカ村、飛田新地、釜ケ崎、新世界、法善寺横丁、ユニバ、夢洲……気鋭の地理学者が街々を歩き、織田作之助らの著作を読み、この大都市の忘れられた物語を掘り起こす。大阪とはどんな街なのか? これを読めば、見える景色はがらりと変わる。
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480072177/

    【目次】
    目次 [003-007]


    地図1 [008]

    序章 路地と横丁の都市空間 009
    1 下水処理場の居住空間 009
      ポンプ室の上に
      生活空間としての路地
      再現された〈路地〉
    2 空間表象としての〈横丁〉 018
      法善寺裏の食傷通路
      空間パッケージとしての〈横丁〉
      名は実を超えて
      本書の構成


    第1章 大阪《南/北》考 031
    1 梅田の都市景観 033
      駅頭の風景
      グローカル梅田
      東京の匂い
    2 駅と遊郭 039
      二枚の写真
      縁辺の遊興空間
      駅前の遊郭
    3 駅前ダイヤモンド 044
      カタチか地価か
      地霊の不在
      さながら遊郭の如し
      変転する駅前空間
      土地利用の高度化
    4 相克する《南/北》 053
      《南》――方角から場所へ
      岸本水府の《南》
      二つの〈顔〉
      インテリの《北》
      宮本又次の《北》礼讃
      競演から協演へ
    5 明日を夢見る《北》、懐古する《南》 064
      場所の履歴――場所・水辺・火災・駅
      鍋井克之の予感
      明日の夢、昔の夢


    第2章 ラビリンスの地下街 071
    1 梅田の異空間 073
      裏町を歩く
      地下街の原風景
      ふたつの横丁
    2 排除の空間 081
      はじまりの地下道
      変転する地下空間
      繰り返される排除
    3 もうひとつの都市 085
      地下街の拡散
      地下街ラビリンス


    第3章 商都のトポロジー 093
    1 起ち上がる大阪 095
      焦土と化した街
      織田作の戦災余話
      場所への愛着
      船場トポフィリア
      復興の風景と場所感覚
    2 同業者街の変動 104
      新旧の商工地図
      谷町筋の「既製服」と「機械」
      船場の問屋街
      丼池の繊維問屋街
      玩具・人形・菓子の問屋街
      道具商の街
      掘割と問屋街
      脱水都化の象徴
    3 新しい消費空間の登場 120
      拡散する《ミナミ》
      《アメリカ村》の発見
      自然発生のまち?


    第4章 葦の地方へ 131
    1 重工業地帯のテーマパーク 132
      此花ユニバ
      沈む地面
      小野十三郎の大阪
    2 新開地の風景 142
      石川栄耀の〈場末論〉
      此花区の新開地
    3 梁石日の錯覚 148
      葦しげる湿地の開発
      《今里新地》の現在


    第5章 ミナミの深層空間――見えない系をたどる 155
    1 石に刻まれた歴史 157
      京都東山の豊国廟
      阿倍野墓地と千日前
    2 《飛田新地》から新世界へ 161
      飛田遊郭の誕生
      郭の景観
      青線と芸人のまち
      「糸ある女」の飲み屋横丁
    3 花街としての新世界 173
      歓楽の混在郷
      新世界は花街だった
    4 釜ケ崎と黒門市場 180
      第五回内国博のインパクト
      スラムとしての日本橋筋
      地図にないまち
      原風景――鳶田の木賃宿街
      釜ケ崎の成立をめぐる語り
      釜ケ崎銀座の沖縄
      黒門市場の成立
    5 《ミナミ》――相関する諸場の小宇宙 197
      千日前へ
      空間的排除としての郊外化


    第6章 大阪1990――未来都市の30年 205
    1 大阪湾の新都心 207
      二〇二五年万博、夢の舞台
      テクノポート大阪
    2 ダイナミック大阪と「負の遺産」 213
      ファッショナブルな都市空間
      大阪1990の出発点
      土地信託と「負の遺産」
    3 都市の空間構造と〈場所〉 222
      グローバル化時代の都市
      場所からの発想
      大阪2025の都市像


    終章 界隈の解体 231
      〈界隈〉のひろがり
      再開発による分断
      モール化する阿倍野
      小野十三郎の足どり
      界隈の行く末


    あとがき (二〇一九年二月 加藤政洋) [245-247]
    主な引用・参考文献 [248-253]

  • 人文地理学者が大阪を語るとこんなにもおもしろい。
    キタとミナミ、地下街、路地と横丁、大大阪、テクノポート大阪、遊郭とスラム、そして万博。いまの大阪がなぜこのようになっているのか歴史がわかる。
    また、実に多くの文学作品から引用が見られ楽しい。織田作や林芙美子にとどまらず、最近の映画や小説の言葉も大阪を語る重要な証言だ。
    この本を読んでもっと大阪を歩きたいと思った。

  • 此花区の話は初めて知った。そのほかは定番の場所が多かったと思うけど、こういう形でまとめてもらえるのすごくありがたい。これまでの活動の良い復習になった。欲を言えば福島や京橋、鶴橋なども含めた環状線コンプリートシリーズが欲しい……

  • 読ませるっちゃ読ませるけど、概ね目新しい話はなかったかな。むしろ住んでる人間よりは外から見たい人向きの一冊かも。南港だのフェスゲだのの失敗の後にカジノだの地下鉄駅を近未来風にするだの何なのバカなの?って視点は首が振り切れるほど同意。

  • 大阪市内の街の生成について、フィールドワークと様々な文献を基に分析。

  • 大阪の様々な顔について成り立ちや文芸での取り上げられ方など。濃厚な主観というところもないではないが、純粋に興味深い。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1401/K

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著者プロフィール

2020年1月現在
立命館大学文学部教員

「2020年 『酒場の京都学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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