- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480072573
作品紹介・あらすじ
国の怠慢と非寛容な国籍法が原因で、自覚のないまま二重国籍者になったり、国籍を剥奪されたり、無国籍者に陥る悲劇が発生している。どこに問題があるか。
感想・レビュー・書評
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「自国民であることをどのように定義するか」はすぐれてドメスティックな問題であり各国の裁量に属する事柄(国内管轄の原則)だが、これが二重国籍を扱う場合となると途端に簡単にはいかなくなる。即座に各国の裁量の衝突が起こるのだがそれが個人そのものを地平として生じるため、個人の人生やアイデンティに影響する生々しい事態に直結するのだ。個人が国家のフロントに立たされているようなイメージ。特に台湾との二重国籍のように日本が承認していない国家が相手の場合は、当該国の法律効果を国内でどのように扱うか、極めて微妙な問題となる。
本書の主張は、今日では二重国籍に伴って生ずる問題、例えば忠誠義務違反や重婚などの問題は生じ難く、その発生をむしろ容認すべし、とするもの。しかし、国内管轄の原則が衝突する以上多重国籍の防止は事実上困難だから、とするのはわかるが、「重国籍容認が世界のトレンドだから日本もそうすべし」というのは少々説得力に欠ける気がする。自国民の定義は当該国に積極的なメリットが生ずる形でなされる必要があるだろう(そうでなければ国内管轄の原則を満たしているとはいえない。もちろん他国民の権利を不当に害してはまずいのだが)。本書ではたとえば日本の労働需給の逼迫が挙げられているが、もっと多くの二重国籍を容認する積極的な理由が要請されて然るべきと思う。
我々が重国籍者に対して抱く「羨ましい」「ズルい」という心情。蓮舫問題を見ても、どうやら日本人には国籍問題に関しては理屈よりも心情が先に立ってしまう国民性があるようだ。本書はこれを狭量さの問題として矮小化しているようだが、しかしそれではいつまでも重国籍問題は解決しまい。なぜ我々にそのような心象が生ずるのかを掘り下げて考察し、それを世界各国の国籍観と見比べてみる必要があるのでは。いずれにせよ、国籍問題は制度面だけの整備で解消するような根の浅いものではないのではと思う。 -
二重国籍問題なんて我がコトではないので、気にかけたことさえなかった。蓮舫氏の騒動では、国籍云々よりも個人的に彼女を好ましく思っていないので、ちぃと行儀されりゃあいいと傍観していたし。それでも、大坂なおみさんが昨秋に日本国籍を取得し、米国籍を離脱しないと違法になるとか耳にすれば気になる。そもそも二重国籍なんてあり得ないと、当然のごとく考えてたもんね。そうか、法的にも国の態度もかようにグレーで、それなりに事情があるんだ。確かにグローバル化した現在、見直すべき法制度に違いない。とはいえ、国や裁判所がけしからんとばかりに突き進んでも解決にはならないわ。
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329.91||Ko
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東2法経図・6F開架:B1/7/1440/K
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興味深い。
【簡易目次】
目次 [003-006]
序章 大坂なおみ選手が直面する国籍問題――野嶋剛(ジャーナリスト)007
第一部 蓮舫氏問題を考える
第一章 メディアの迷走――野嶋剛(ジャーナリスト)024
第二章 あらわになった国籍法の矛盾――小田川綾音(弁護士) 051
第三章 国際結婚と国籍――大成権真弓(台湾・居留問題を考える会会長) 074
第四章 「日台ハーフ」の中華民国国籍――岡野翔太(大阪大学大学院博士後期課程) 096
第二部 国籍と日本人
第五章 日本国籍の剥奪は正当なのか――仲晃生(弁護士) 118
第六章 国籍をめぐる世界の潮流――館田晶子(北海学園大学教授) 151
第七章 国籍法の読み方、考え方――近藤博徳(弁護士) 175
終章 国籍に向き合う私たち――関聡介(弁護士) 199
あとがき――鈴木雅子(弁護士) [219-221]
国籍法 [222-227]
参考文献 [228-230]
執筆者紹介 [231-234]