精神科医が教える聴く技術 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072757

作品紹介・あらすじ

人の話を聴くことは難しい。精神科医であり、多くのカウンセラーを育てた著者が教える「聴く技術」。四つのステップに分けて、事例と共にわかりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 第一章の概要説明からはじまり、カウンセリングにおける「聴く技術」を「1.黙って聴く」「2.賛成して聴く」「3.感情を聴く」「4.葛藤を聴く」の4つのステップに分けたうえで、それぞれのポイントについて解説しています。各章ではステップに応じて、カウンセラーとクライアントの会話のサンプルを例示し、新人カウンセラーのありがちな間違いや、適切に聴くことによるクライアントの変化を伝えます。そして私が読んだ限り、カウンセリングにおける「聴く技術」が目指すのは、クライアントの凝り固まっている深いレベルの感情を引き出すことで精神的な枠組みの再編を促すことによって、悩みから解放されることにあります。

    本書でとくに重要だと思えたのは、聴くことを通して感情を引き出すという点です。著者は再三、カウンセリングでは理性よりも感情を優先することを強調しており、深いレベルで強い力をもつ感情に働きかけることで「感情→言葉→理性」の順で変化をもたらすとしています。つまり理性は人間にとって、どちらかと言えば表層的なものであり、個人の本質的な変化が必要な場合、理性のみに訴えかけても叶えられないということです。社会生活では、もっぱら必要とされるのは理性であり、感情はないがしろにされるケースは少なくありません。しかし感情に蓋をして長く放置してしまうと深いレベルでは歪みが蓄積されつづけ、いずれは大地震のように問題が一気に表面化してしまう危険性を抱えることになります。

    結びの第六章では、ここまでを踏まえて「聴く技術」とは「心を知る技術」のことであると結論づけます。そして「心を知る技術」は自分自身に向けても適用することができるとしています。目的が文字通り「精神科医の聴く技術」でしかなければ、対象はカウンセラー志望者などの一部に限定されてしまいますが、自らの精神を安定させることも「聴く技術=心を知る技術」の対象である限り、本書は全ての人に向けられています。理性偏重で、感情とそれを解放するような工夫が軽視され、忘れられやすい現代において、感情と向き合うことの大切さを説き、再考を促す有用な著書です。

  • カウンセリングの技法を簡潔に説明。ひたすら聴く姿勢の大事さにあらためて気付きがありました。セルフカウンセリングの方法も記載があり、何かと重宝しそうな1冊でした

  • ◎聴いてもらうと楽になるのは自分を支えてもらうから
    ◎ただ黙って聞く聞いてもらうと安心する。
     助言しない、口を挟まない、質問しない。
    ◎応援してではなく賛成して聴く。
     人生の悩み四種
     1. 人が怖い 不安緊張を感じる
     2.自分を責めてしまう 自責と抑鬱
     3.人とうまく付き合えない 対人関係ギクシャク
     4.死ぬのが怖い
    ◎感情を聴く 
     感情の階層 不安-抑圧-怒り−恐怖-悲しみ−喜び
    ◎葛藤を聴く
     葛藤を話尽くすとトリックスターが現れる
    ◎自分のこころを聴く
     自分を聴いて自己理解すると、自己受容されて悩みが      消える。

  • 基本は「黙って聴く」なのね。ていうか、それが全てなんかもね。
    話されるとつい、同情や応援やアドバイスをしてしまうけど、違うらしい。黙って聴き遂げることがなんで重要なのか、黙って聴いてただけやのになんで相手が納得しはるのか、これを読むとちょっと理解できる。

    人間関係はシンドイ、と常々思ってますが「聴く」ことに興味があるんで読んでみました。「聞く技術」の理解と向上は難しそうですが、日々これを研究し患者の話を聴く精神科医がいてはる、というのが嬉しくて安心。

  • 良書。心はより深いレベルで見ていくと、動きはとても論理的らしい。その主張が非常に納得できる内容で、カウンセリングの例を元に説明されるので分かりやすかった。聴く技術の4つのステップは参考になる。特にステップ1の黙って聴くための三つの指針「①口を挟まない②質問しない③助言しない」と四つの禁止「①指示・承認の口を挟まない②復唱・繰り返し・要約しない③明確化しない④聴き取れなくても聞き返さない」は、意識していても最も難しいのではないかと感じた。繰り返し読み、身につけていきたい。

  • 心の動きがロジカルに書かれていて参考になる。カウンセリングについては勉強したかったので良かった。実践が伴ってないので、ちょっと実感は湧かず。

  • 臨床心理士への転職を迷っていること、人の感情を分析することに興味があり読み始めた。

    まず、心の動きは理論的、科学的なものであることがわかった。感情の移ろいや需要に段階がある。これを知っていると、人の話を落ち着いて聴けることがわかった。

    そして担当カウンセラー(看護師資格保持者)が「カウンセラーと看護師は180度頭の使い方が違うんだよ。」の意味もわかった。
    看護師は、その場で感情失禁した方に傾聴と共感を行うと習う。カウンセラーはとにかく黙って聴き、最後に質問と評価を行う。本当は看護師もその場で対応するだけじゃなくて心の変化を追った方がいいけど、担当が変わるし他業務が…ってなってしまう。
    傾聴の目的が違うのかもなと。看護師への訴えは入院生活中の鬱憤を聞いてほしい、もしくは質問とか。なのでこのスタイルでよき?
    カウンセラーへの訴えは問題への解決。

    私はカウンセラーに鏡になってもらい、時々こうなんだね、と言われ腑に落ちたことがたくさんあった。たくさんの言葉を見つけた。言葉を見つけた時の爽快感は凄くて、人生の軸や悩んだ時の助言になってる。

    ずっともやもやしてたことを、解説してくれた本だった。
    感情が言葉に翻訳される時社会的に妥当なものになりそこに含みきれないものは残される。
    本当に言いたいことは言葉を超えた感情の中にある。
    つまり、言葉でどうにか言い換えてるだけで、本当にしっくりくるものを伝えるのは難しいってことだな、翻訳エラーもありそうやし。その感情をどれだけ引き出せるか。あと、関係ないけど言葉じゃ伝わらないことをわかって芸術家達は言葉以外で世界や感情をみせてくれてるんだろうな。

    言葉1つで人生が変わるくらい大切なものだから、それが伝えれるような人になりたい。

  • 傾聴やカウンセリングについての本を何冊か読み進めているが、これは事例と図式が綺麗に対応していて、大変に読みやすく書かれている。最終章、カウンセリングにおける他者の語りを聴くことの技術が、自分の心を聴くことに接続されるところもよくわかる。

    巻末になって述べられる「心は論理的に動く」という言葉にはインパクトがあった。
    その信憑があればこそ、人は聴くことができるのだ。

  • 人の話を聴く時に全く口を挟んじゃだめ!っていう新鮮な教え。でも納得できた。人の悩みは理想と感情とのギャプによってもたらされまず自分を責める。次に理想や規範のほうがおかしいと不満や怒りをもつ、次にその葛藤を自分を再度組織化することで解決する。

  • この本に出会えてよかった。
    読む前と読んだ後で、確実に見える世界が変わる。

    これまで河合隼雄先生の本を読んでもわからなかったカウンセリングの核心部分が、ロジカルに解明されているのが、本書の大きな魅力です。
    これまでコーチングやファシリテーション、コミュニケーションや心理学の本は数多く読んできたつもりですが、そのどれとも違う極意が書かれています。

    「聴く技術」を4つのステップに分けて考え、「感情の流れ6段階」とこれに併走する「葛藤の3段階」が解説されている点が素晴らしい。
    仕事で人の話を聞く機会が多いのですが、感情の流れを知ることにより、もっとゆとりを持った傾聴ができるような気がします。

    また、私自身、理想の自分と現実の自分のギャップに苦しむことがよくあるが、感情のメタ認知が進み、生きづらい時代に新しい海図を手にしたような清々しさ。

    平板なコミュニケーションに、時間軸という新たな次元を得た感じ。より豊かなコミュニケーションの道が開けた、そんな印象です。

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