障害者差別を問いなおす (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073013

作品紹介・あらすじ

「差別はいけない」。でも、なぜ「いけない」のかを言葉にする時、そこには独特の難しさがある。その理由を探るため差別されてきた人々の声を拾い上げる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 書評『障害者差別を問いなおす』荒井裕樹著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2020061900050.html

    Book Review:『障害者差別を問いなおす』 評者・新藤宗幸 | 週刊エコノミスト Online
    https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200616/se1/00m/020/011000c

    筑摩書房 障害者差別を問いなおす / 荒井 裕樹 著
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073013/

  • 差別について考える時、いつも浮かぶ私の実体験がある。
    昔、3歳の娘と手を繋いで歩いていた時、向かいから黒人の方が歩いて来てすれ違った。娘は明らかに顔をしかめて通りすがり際にその方を避けて、ウェッ だったか なんだったか 侮辱的な反応をした。

    私は ただただ ビックリして 落ち着いて娘と話ができる場所で先ほどの行為がどれだけいけない事なのか 混乱しながらも一生懸命幼い彼女に説明した。

    3歳の娘はテレビ以外で見る初めての黒人が奇異に感じて反射的にそういった反応をしてしまったんだろう。「知らない」という事の恐ろしさ。そこから始まる差別的感情についてずっと考えていた。多くの差別は無知から始まっていると思う。障害者について考える時も私達は「知らない」からどう対応したらいいか分からないのだと思った。

    だから、住む世界を分けるのではなく、一緒の社会でと思っていた。ただ重度障害者のリアルを知らない私が理想を発言したって浅はかでただの馬鹿だ。

    紹介されている「しののめ」の詩に胸が詰まる。
    これぞ障害者のリアルな感情だと思った。健全者だって心を痛め人生がままならないことがあるけれど、やはり経験体験実感できない感情だ。そこにどうしても大きな深い分断がある。私はあなたに決してなれない。

    私達は対立する。しかし対立は、暴力を伴わなければ決して悪いことではない。違いと分断を自覚と理解をしながら対立して主張し合っていく事ではないかと思った。私も女という性というだけで実社会ではまだまだマイノリティだが、弱者側が大人しく我慢し続けた事で今の世の中がある。将来の子ども達の未来の為にきちんと主張し合っていく事が大事だと切に思っている。

  • 障害者、特に脳性まひの青い芝の会という団体が戦後、何のために、どういう行動を起こし、それが現代にどのようにつながっているのか、解説している本だ。

    新書で専門用語も使っていないので読みやすい

  • 青い芝の会と相模原事件を軸に、障害者差別や人権といったところを、考察しています。
    文学専門の方だからか、文章がとても適確で、読んでてスカッとします。
    内容もむずかしくないので、たくさんのいろんな人に読んでほしいなと思います。

    「障害者も同じ人間」この言葉がもたらす意味を、この言葉を発する時の本当の意味を、深く考えさせられました。

  • ※このレビューでは「障害」を「社会構造の側にある問題」と捉える考え方に沿い、「障害者」という表記をしています。


    昨今の社会的なトピックを目にするうちに個人的に学ぶ必要性を感じたことがあり手に取った本。

    障害者差別を問い直す、というタイトルだけれど、この本では「日本脳性マヒ者協会 青い芝の会」の活動が中心となっている。
    どれだけ差別問題に関心がある「つもり」で、自分は差別に加担しないように心がけている「つもり」でいても、彼らの語る「健全者」としてこれまでの人生を過ごしてきた私は、これまで無自覚に彼らに向けていた眼差しを彼ら自身の言葉によって自覚させられ突き返される。彼らの眼差しによって自分自身が障害者差別の当事者なのだと思い知らされる。背筋がひやりとする。「健全者」とは〈マイノリティの側からレッテルを貼り返すための言葉〉とは実に的確な表現だと思う…。

    正直彼らの活動や発言の全てに賛同することは難しい(特にジェンダー観と生殖に対する意識のあたりには全く同意しない)。けれど彼らの活動がなければ変わらなかったものも多かろうと思う。主張の根底にあるものは理解できる、という部分についても、そこまで極端な言葉、強硬な手段に訴えることはないじゃないかと思ってしまう面がある。ただそれはトーンポリシングにあたるのかも知れなくて、彼らだけの問題ではなく、そこまでさせた社会の側の問題とも言える。それでもなおやり方……という感情がつきまとう。難しい。

    一度目を通しただけでは明確に言葉にしてまとめられる気がしないので、マーカーを引いた場所から幾つか抜粋して並べておく。

    ・「マイノリティ」「マジョリティ」とは、その社会や共同体への帰属意識と違和感の濃淡の差を示す言葉
    ・「マジョリティ」とは「葛藤を伴うことなく、自分のことを『大きい主語』で語れる人」
    ・「マジョリティ」は、自分自身の価値観や考え方といった「個人的な見解」を「大きな主語」に溶かし込むことができてしまう。そうすることで、あたかも「一般的な見解」であるかのように語ることができる

    ↑上記3項はあらゆる差別に対して言えることだなと。

    ・障害者への「優しさ」や「思いやり」といった感情それ自体が「差別」
    ・あるいはこうした感情が「差別」を助長したり見えにくくしたりする
    ・青い芝の会は障害のある人とない人とが「仲良くする」「互いにわかり合う」といった考え方も拒絶した
    ・現状の社会において、両者の関係性が決して対等なものでない以上、障害者の側に「わかってもらうように努力すべき」「歩み寄って仲良くしてもらうために我慢すべき」といった圧力がかかることが明白だから

    ↑同時期に読んだ「いのちを選ばないで」の中に知的障害を持つ方に対する支援について「哀れみの政策ではなく彼らが生まれながらにして持っている人格発達の権利を徹底的に保障しなければならない(要約)」という言葉があって、通ずる部分があるなと思った。
    (本書の中にも〈恩恵を施す慈善的態度〉を批判するくだりがある)

    ・誰かに対し、「生きる意味」の証明作業を求めたり、そうした努力を課すこと自体、深刻な暴力である
    ・割り切れない事情を力任せに割り切って「解決」させるような発想は、弱い立場の人に我慢や沈黙を強いたり、そうした「解決」に馴染めない人たちを排除したりする方向へと進みかねない

    ↑差別が根強く残る現代社会を生きる当事者として、強く意識したい言葉

    立ち返って序章から
    ・私たちの社会は「障害者差別」を「解消」することを法律として掲げた
    ・議論し続けることを社会の約束事として共有した

    現代を生きるひとりひとりが当事者として考え、議論し続けるしかないのだと思う。その手がかりとして考えるヒントが本書には多くちりばめられている。

  • 自分の中の差別を痛快に指摘されました。
    生きる意味の証明、障害児を殺してしまう親への批判、愛と正義の否定を書いた行動網領の趣旨、とても新鮮であり、特に青い芝の会の弁論は昔のものであるはずなのに新鮮で現代の世論はそれを議論するのに追いつけてないと私は思っているので残念に感じました。
    車椅子の優先利用や名古屋城のエレベーターをつけるかつけないかで揉めてますがこの本を読んでから議論のスタートラインに立てる気がします。

  • 正直バスの問題では、過激だなぁ…とばかり思ってしまったが、「過激にならざるをえない」という社会の実際がある。「他人が他人を決めつけてはならない」当たり前のことなのに、守られない。
    障害者、ほかマイノリティに向ける「優しさ・愛情」自体が差別感情であることが、広く認識されるといいと思う。

  • 一言で言うとめちゃめちゃ考えさせられる本です。
    健常者の意見を聞いたあとに反発した障がい者の意見を聞くと納得する反面、頭がぐちゃぐちゃになります。
    あとがきで作者が述べていましたが、この本に障がい者差別にどう対応していくべきなのか答えは無いので結局自分で考えなければならない問題になります。
    正直しんどいです。3日くらいこの問題について考えふけってしまいそう。

    このような障がい者差別等の問題は様々な視点からの意見があり、一概に自分の個人的な意見や感想をこの場で安易に発言することはできないので興味ある人は是非ご自身で読んで欲しいと思います。

  • 主に脳性マヒの障害者差別について、「青い芝の会」の活動の歴史を紐解きながら’差別とは何か’を問う。
    障害者は可哀想という自分の意識がどうしても残ってしまう。私も差別意識とは無縁ではなかった。
    青い芝の会の抗議と国・自治体の態度を思うと胸が熱くなる。いや、「感動ポルノ」ではダメなのだ。

    車椅子でバス、優生保護法、出生前診断、健常者とは誰か、、、、

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著者プロフィール

荒井 裕樹(あらい・ゆうき):1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部准教授。専門は障害者文化論、日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。著書に『隔離の文学──ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『障害と文学──「しののめ」から「青い芝の会」へ』(現代書館)、『障害者差別を問いなおす』(ちくま新書)、『車椅子の横に立つ人──障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)、『凜として灯る』(現代書館)、『障害者ってだれのこと?──「わからない」からはじめよう』(平凡社)などがある。2022年、「第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。

「2023年 『生きていく絵 アートが人を〈癒す〉とき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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