- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480073075
作品紹介・あらすじ
どのように日本へやってきたか。なぜ失踪者が出るのか。働く彼らの夢や目標と帰国後の生活とは。国際的な人材獲得合戦を取材して、見えてきた労働市場の真実。
感想・レビュー・書評
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大学の授業での課題図書だったので必死で読んだ。なんか、ひどい労働環境なんだろうなあと思っていたが、想像以上だった。システムとか、機関の問題が大きいように思った。
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技能実習生のルポといえば、NHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」にあるような外国人虐待に焦点を当てたものを思い浮かべますが、筆者は実習生へのいじめや性的強要といったさまざまな憎むべきハラスメントが存在することを認めながらも、同番組のワイドショー的な問題の取り上げ方と取材態度を疑問視しています。
本書では技能実習生のなかでも近年では日本への渡航が最も多いベトナム人実習生を対象として調査を行っています。問題をはらみつつも技能実習生が増加する理由は、日本の一部の実習先でそのような惨状があることを実習生希望者たちに知られていないためではなく、知ったうえで希望者である、周囲には山しかないようなベトナムの地方出身の高卒や中卒の若者たちにとっては日本での報酬に魅力があるからであり、実際に帰国後の多くの実習生たちは地元に家を建てたり商売を始めたりとその成功を証明しており、受け入れ先の日本だけではなく送り出し元にとっても「技能実習」は建て前に過ぎず、出稼ぎ目的であることが明らかになります。
そんな実習生から失踪者が現れる主な理由として、実習生として渡航するためには日本円で約100万円という彼らにとっての大金を送り出し機関に納める必要であり、多くの実習生が借金をして準備金を用意するために簡単には帰国できない事情があります。なぜ技能実習のためにそこまの金額を要求されるのか、筆者はベトナムの送り出し機関への調査を通して日本の技能実習生管理団体への性的なものも含めた過剰な接待を知るとともに、送り出し機関に対してキックバック(賄賂)を要求する日本の管理団体の腐敗に行き当たり、このような接待漬けのスタイルが、かつて日本に最も実習生を送り出していた中国の送り出し機関の関係者によって客とノウハウをそのままベトナムに持ち込まれたことに由来することを知ります。
筆者は日本以外の受け入れ国として韓国での調査において、外国人の受け入れを政府機関で実施することで中間搾取を取り除くことに成功していること、送り出し元としてフィリピンが海外労働者からいかなる費用も徴収しない方針を取ることで失踪者の低さが突出していることを探ったうえで、政府同士のやり方次第で管理団体にキックバックが求められる構造を排除し、受け入れ先企業の選定を厳しくすることで実習生への搾取やハラスメントを防いで、現状の大きな問題点は改善できることを提示しています。
筆者は技能実習生への虐待の存在を認めつつもそこを一面的に批判することを目的化する姿勢をけん制しつつ、ベトナム、日本、韓国での取材を通してこの制度の実情を立体的に描き出すことに成功しました。同時に、まえがきとあとがきなどで触れられる筆者の個人的な事情とともに今後成長が続くであろうベトナムと、停滞し先行きに不安を抱える日本を対照的に浮かび上がらせる結果にもなっています。 -
技能実習生に関わる人々を中心としたルポ。実態がよくわかる。
近年開始された特定技能制度への移行が望まれる中だが、それらも問題点が指摘される。
個人的には、
1.受入先企業の責任を強く求めること
2.送出機関、ブローカーの搾取排除
が肝要と考える -
国際社会からは「奴隷労働」だと非難されている「技能実習生」についてのルポタージュだ。本書ではベトナム人に焦点が当てられて書かれている。最低賃金の手取りからさらに家賃なども差し引かれての収入で、3年間で300万貯め込んで本国に帰り家を建てるベトナム人もいることは確かだけれど、失踪しなければならないほど劣悪な条件で働かされている外国人もあとをたたない。これは本国の送り出し機関とそして日本の監理団体がクソだからだ。日本の監理団体は帳簿に形跡が残らない仕組みでキックバックを送り出し機関からもらっている。本国で飲めや歌えや抱けやの接待をベトナムで受けたり、または現金を実習生に運ばせたりしているらしい。結局そのお金のしわ寄せは、実習生が支払うことになる。70〜100万円が送り出し機関に支払っている。技能実習生は転職が許されない。仕事が嫌なら、辞めて本国へ帰るしかない。しかし、帰ったら送り出し機関に支払った借金が残っている。ベトナム人の平均年収は25万円だから、返す事も出来なくなる。だから失踪して、少しでも給与の高い仕事を探すのだけれど、入管に見つかれば強制収容そして強制帰国をさせられてしまう。技能実習生は以前は中国人が多かったらしい。しかし国力は逆転しているので、今や日本の労働力が中国に買われている状態。こんな制度も、アジアの国々がやがて日本を追い抜いて、見向きもされなくなるだろう。
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技能実習制度の仕組みなどを詳しく解説してくれている。多くの人への取材を組み込んであり、読み応え抜群。
- 技能実習制度は技能を自分の国に持ち帰ることを前提としているが現実は労働力となっている
- ベトナムから来る人が最多
- 日本の最低賃金でも月収2・3万円のベトナムでは高い
- 前職要件に関わる偽装が多い
- 接待などのコストも技能実習生側の負担に回る
- 知らされていたよりも給料が低い場合もある
- 韓国も受け入れ先として競合する -
ラウンジ
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監理団体の問題は根が深い。地べた這いつくばって取材している作者に感謝。
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366.89/サ
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技能実習制度と言えば、劣悪な環境で働かせられる低賃金奴隷労働との認識だ。かつて繊維産業が盛んだった故郷の街にも古くから中国人実習生が多数来日し、NHKでその実態が告発されたこともある。いかにも日本的な偽善と欺瞞に満ちた制度であり、同じ日本人として申し訳ない気持ちになる。日本人の民度では所詮この程度の政治しか選べないのだ。
ただ、つい日本人的な発想で長時間労働させられて可哀想とか思ってしまうが、この本を読んで、そんな単純な話でない事も理解できた。丁寧な取材に裏打ちされたリアリティのあるルポで、読み応えがある。
今後日本の国力と共に円の価値が低下していく中で、日本で働きたい外国人は減っていくだろう。人権意識の低い一部の経営者にはザマァ見ろという感じだが、1消費者として人材不足によるサービス低下を受け入れる覚悟が必要だ。 -
日本政府というのは本当に残念な存在であることが再認識できる。
払ってもいい金額:900円
貼った付箋の数:4