メディアが動かすアメリカ ――民主政治とジャーナリズム (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073396

作品紹介・あらすじ

メディアは政治をいかに動かし、また動かされてきたのか。アメリカのテレビと選挙の現場を知り尽くした著者が解き明かす、超大国アメリカの知られざる姿。

感想・レビュー・書評

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  • 米国におけるTVニュース等の放送ジャーナリズムの変遷と政治の関係を解説。とても具体的で面白かった。今やFOX TVなど政治的偏向を売り物にする時代、まさに分断と対立の状況だ。それでも公正中立を国家が決めるのでなく、言論の自由が確保されている点にアメリカの民主政治の前提を見る。
    あとがきと裏表紙にある著者の経歴には瞠目、アメリカ政治のインサイダー視点を持つ専門家として今後注目したい。

  • ふむ

  • アメリカのジャーナリズムとして、テレビニュース番組やパンディットの役割、政治とジャーナリストのかかわりを詳細に説明している。さらにエスニックとして中国系のジャーナリズムについても取り上げているのは新しい。
     アメリカのジャーナリズムを卒論で引用する場合には必読書となるであろう。

  • 渡辺様の本、やっと読了。以下は自分用メモ。
    アメリカの政治家は一問一答で短く答える。どうせ勝手に切り離して編集されるから防衛策。発言の深みが削がれてでも、誤ったニュアンスに伝えられないことを優先。
    アメリカにはNHKのような規模の公共放送はなく報道は民間が牽引。
    署名記事は取材対象との関係が悪くなったり、情報源が類推される問題点もある。複数の現場記者からの情報で原稿が出来上がることもあり署名記事の意味がないこともある。
    政治広報は記者が本当に記事をかけるのか、書かないとしても企画を通す力があるのか、コラムのために情報を溜め込んでいるのか、全く書かなくても情報通で意見交換の価値があるか、などを見ている。ニクソン時代からホワイトハウスを見て、法案審議の駆け引きやチャイナタウンの生き字引き、そんな記者がレクチャーしてくれることもある。
    FOXニュースは保守派にターゲットを絞っているが、経営戦略であって、創業者のルパート・マードックが保守派だったわけではない。
    ウィリアム・バックリーのディベート番組「ファイアリングライン」は保守にもリベラルにも人気のディベート番組。バックリーは早口でまくし立てるディベートは好まず、皮肉やユーモアのレトリックで勝負することを好んだ。保守派のバックリーが、保守にも知識人がいることを証明するために始め、立論には12分は必要として、自信のない著名人は出演を尻込みする骨太の番組だった。33年続いて1999年に放送終了。筆者いわく、この番組が続いていたら、保守論壇においてFOXニュース一強や反知性主義はブレーキがかかっていたとのこと。
    ヒスパニック系メディアは日刊紙26、週刊紙428、視聴率で三大ネットワークに次ぐテレビ「ウビニシオン」がある。18歳以上49歳以下で一位になり、業界を騒然とさせたこともある。不法移民も立派な消費者なので広告主にも旨味がある。
    中華系メディアはヒスパニックに次ぎ、ニューヨークには主要二紙がある。台湾系の世界日報と香港系の星島日報(シンタオデイリー)。星島日報の創業者は中共寄りだが「アメリカでは読者と広告主にだけ従う」(広告主。。。)と語る。テレビのニュースは流し見の人も、エスニック新聞は広告までじっくり読むらしい。そのほか中共がニューヨークでの新聞の価値を認識して力を入れる「僑報」と、反共の法輪功系メディア「大紀元(エポックタイムズ)」

  • 影響力が落ちてきたとは言っても無視できないのがメディアだ。アメリカのメディアは、リベラルと保守に別れている。




    著者は、アメリカ下院議員事務所、2000年米大統領選挙でニューヨーク州支部・上院議員選本部、テレビ東京のニュース番組WBS政治部記者などを経て、現在は大学教授だ。




    FOXニュースというと、共和党寄りの保守として知られているが、「たこつぼ内の無神論者ーアメリカ右派の中枢にいた、あるリベラルの八年」という告白本が2013年、アメリカのメディアで話題になった。著書は、ジョー・ムトーという白人リベラルの報道スタッフだ。



    実際に、FOXニュースの現場で目の当たりにした光景に驚いていた。プライベートでは、リベラスなのに、スタジオに入ると保守に変身する「まるで保守一座の電波劇団」のようだった。




    小難しいことはさておき、視聴率を稼いでなんぼという姿勢が浮き彫りになる。




    では、リベラルがまともかというとそうでもなかった。今では、リベラルの顔をしているCNBCは、もともと保守論客を登用していた今では知られると都合の悪い過去があった。FOXと類似して上に、立ち位置がよくわからなかったので視聴率がよくなかった。そこで、左に舵を切ってリベラル寄りになった。




    アメリカでは、メディアを監視する団体が左右分かれているそうだ。中立の機関がないとはどうやって公平性を保つのか不思議だな。




    あまり見聞きすることのないアメリカメディアの裏事情を知ることができた。

  • 大統領選を前に、アメリカのメディアの構造を知っておきたくて拝読。日本の枠組みを当て込んで大統領選とメディアの関係を語ってしまってはいけないのだと痛感。各媒体がかかえる問題はアメリカ社会に根を深く張っている。メディアを知ることはその国を知ることなのだなぁと読みながら思った。

  • アメリカのメディア事情を歴史的変遷を踏まえて分析した一冊。近年日本メディアを「マスゴミ」と批判する文脈で米国メディアを肯定的に持ち上げる風潮が一部にあるが、実はアメリカはアメリカで様々な歪みを抱えていることが分かる。偏向報道や芸人コメンテーター問題など本質は洋の東西を問わないのだなと。米国メディアにフラットな批判的姿勢で向き合う本書は盲目的な日本マスゴミ主義者になってしまう前に必読だと思う。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1518/K

  •  米メディア、特にテレビ局の姿をやや批判的に描く。著者にテレビ局や米政治事務所の勤務経験があるためか裏話や個別の番組といった各論が少なくない。それだけに、一層率直に米の現状を表しているのだろう。
     自分を「盛る」ために嘘の武勇伝を語ったアンカーとアンカー神話の崩壊。ジャーナリストから広報職への転身や、政治側のメディア戦略。「パンディット」(実は党派性を持ち商業化された「識者」?)依存。また、政治風刺コメディやリアリティ番組、「主流メディアを相対化する」エスニックメディアまで米メディアの範疇内として扱うのは新鮮だった。
     しばしば日本で賞賛される、米での記者クラブの不存在や署名記事。しかし弊害もあり、また政治側からのメディアへの差別・優遇があからさまなのが分かる。メディアの党派性と分極化は日本以上のようにも見える。9.11後は米メディアは愛国一色になったと著者は批判的に指摘してもいる。
     一方、米全体ではテレビ離れの傾向だと著者も認める。ネットメディアは本書ではほとんど触れられていない。そのため、本書で取り上げられたメディアがどれだけ実際に米を「動かす」のか、それは本書の範疇外のように感じた。

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著者プロフィール

広告業やアグリテックの分野で活動する機械学習エンジニア。2017年10月に株式会社iMindを設立。PythonよりもJuliaの方が好きですがあまり使う機会に恵まれません。

「2020年 『数式をプログラムするってつまりこういうこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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