中東政治入門 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 163
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073440

作品紹介・あらすじ

パレスチナ問題、アラブの春、シリア内戦、イスラーム国、石油の呪い……中東が抱える複雑な問題を正しく理解するために必読の決定版入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 何かの事件が起きない限り、中東の情報に触れたり、記事を読んだりすることは少ない。一方で、それが目を惹く事件であればあるほど何か特別な原因を求めたくなり、それがアラブであったり、宗教であったりするとなんとなく分かった気になるが、実は全然分かっていない。いつも、そんなことを繰り返している気がする。
    本書は国毎や時系列の記載ではなく、国家・独裁・紛争・石油・宗教のテーマで中東政治を解説したもの。
    著者は繰り返し、中東固有の事情と一般的な政治学の観点で分析できる点を峻別することの重要性を指摘する。
    確かに中東のせいにすれば、整理が付いた気がするが、それは何の解決にもならないことが理解できる。
    本書を読んでも複雑な中東が理解できた、とはとても言えないが、簡単な解説を鵜呑みにしないだけの知恵は付いた気がする。

  • 中東における政治について広く学べる一冊。中東について知りたい人なら、「政治」というテーマに尻込みせずに、手に取ってもらいたい。中東の政治的問題の誤解されやすい点を中心に、理論と地域固有の性質を組み合わせながら説明がされているため、中東政治学の入門書としてとてもおススメ。

  • もともとは中東のある1カ国について学べる本を探していたのだがなかなか見つからず、半ば仕方なく手に取った。だったが、「中東」「イスラム」というベールに覆われて見えにくくなっているその世界の中に政治一般理論があるのかどうかを探るような、興味深い切り口の本で、初心者にはやや難しいところもあったものの満足な読後感である。
    読み通して感じたことは、そもそもの「中東」の多様性 …政体から宗教との関わり方まで、本当に様々であること。その一方で、オスマン帝国という歴史を共有し、イスラームとの関係が国家のあり方に影響を与えているという共通点がやはりあるということ。これらの切り口を通すことで各国のあり方もわかりやすくなるのかも。

  • 中東政治学の入門書
    テーマごとに、わかりやすく説明されている。
    戦争の裏に隠された真の目的なども解説されており、興味深い。
    とはいえ、今までに読んだものよりも硬派な本のため、とばし読み。時間を作ってあらためて読もう。

  • イラン核合意、シリア内戦、「イスラーム国」、「アラブの春」、石油依存経済、パレスチナ問題??? 漸く読み終えた‼

  •  たいへん意欲的な仕上がりになっていて目からウロコの一冊だ。
     「中東」については、普段新聞で何らかの事件などをきっかけに、断片的に「宗教」や「政治・政体」について知る機会があるがどうもすっーと頭に入らない。本著のように中東を包括的に宗教や政治・政体、経済をつなげて解説していただくと理解が深まる、というか中東というものをとりあえず頭のなかで整理できる。

     本著で紹介されている「石油の呪い」が大変興味深い。なぜ産油国は莫大な収益がありながら独自の先端産業が発展しないのだろうと思っていた。その理油が3つの呪いだ。
     1 経済成長が不安定になる
       石油価格の乱高下の影響やオランダ病が原因で国内の   工業化が思うように進まない。
     2 紛争が発生するリスクが高まる
       大きな富を生み出す石油産業だが、限定された地域や   雇用者に富が偏ることにより、持たざるものが武力で   利得を追求する。
     3 家父長制が持続しやすくなる
       国内産業が伸びないこと(オランダ病)や石油輸出収   入の国民への分配が増えることにより、女性の就労の   機会や意欲が低下してしまう。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1514/K

  •  地域研究と、比較政治や国際関係論といった社会科学のバランスを自覚的に取った本。そのため随所で感じるのが、本書の言葉を借りれば「固有性と共通性」のバランスと絡まりだ。
     イスラーム教、「ウルーバ(アラブであること)」、産油国の多さなどは確かにこの地域の固有性だ。一方、本書の内容のうち、たとえば一党支配型権威主義体制や、国家主導に続く自由化という経済政策は、他地域にも存在する。宗派対立というよく聞く言説はイスラーム教固有の事情のようだが、実は政治対立が先にあり宗派対立を生むという(ただしその政治対立も宗派ごとの利害関係が基になったりしている)。内戦発生の原因は他地域と共通する傾向(経済発展のレベルの影響など)、と端的に述べてもいる。
     国際政治との関係でも、域外諸外国の影響と中東諸国自身の事情、これら両者のバランスを重視する折衷的な考え方が近年は主流だという。著者は、ネオリアリズムの国際システム論と、ウルーバに着目するコンストラクティビズムを両方挙げてもいる。
     また、本書では明確に提起されていないが、本地域内での「固有性と共通性」も感じる。独裁という枠内での君主制型と一党支配型。ウルーバと国民意識の関係。産油国と低(非)産油国の経済政策。イスラーム教の枠内での、実質的な宗教国家、名目的な宗教国家と非宗教国家。
     なお、イスラーム教は前近代的で非民主的と簡単に断定できないこともよく分かる。著者も、イスラームが民主主義の確立を阻害するとの議論を明確に否定している。たとえばヨルダンとモロッコでは、世襲王家の権威はムハンマドとの血縁を根拠にするが、野党勢力の取り込みに成功しており(それ故に「アラブの春」でも体制は維持)、また経済政策はリベラル。また「アラブの春」後の選挙で、エジプトなどでイスラーム政党が勝利した。

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著者プロフィール

2021年2月現在
立命館大学国際関係学部教授

「2021年 『シリア・レバノン・イラク・イラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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