レビー小体型認知症とは何か ――患者と医師が語りつくしてわかったこと (ちくま新書 1766)

  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480075963

作品紹介・あらすじ

どんな症状の時に疑うべきか、治療や薬で気をつけることは何か、他の認知症(アルツハイマー型)との違い、日常の工夫など、患者自身と専門医が語りつくした。

感想・レビュー・書評

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  •  とても良い本でした。60歳をこえた人に一読をおすすめします。心配な症状がある人やそのご家族向けの本です。でも、今無関係と思っている人も、認知の老化への覚悟と、もし症状が出ても絶望することはない、と知ることができます。

     先月の新聞記事でレビー小体型認知症について読みました。記事は発症してもなにもできないわけではない、という内容でした。そのなかで当事者の方が幻視について語られていました。その方は、座敷わらしが見える、と話されており、興味を持ちました。

     レビー小体とは、αシヌクレインというタンパク質が集まりかたまったもので、全身の神経細胞に溜まるようです。それが原因でレビー小体病を発症します。その病態の一つが「レビー小体型認知症」です。ほかには「パーキンソン病」などもあるようです。レビー小体は脳だけでなく全身の神経細胞に溜まるので、溜まる部位や量で様々な症状があらわれます。

     いろいろな症状があるようですが「幻視」がよく知られています。でも誰でもじゃないです。幻視は本物と同じリアルさで見えます。当事者で著者の樋口直美さんは「脳の誤作動」と表現されています。

     高齢になれば、診断の有無は別にして、認知機能が低下するのは間違いないようです。「長寿にはもれなくついてきます」だそうです。老眼や筋力低下と同じようには、受け入れがたいですが、受け入れるしかないのでしょう。受け入れる気持ちが、いざ異変を感じたとき、相談したり病院に行ったりする早めのケアとなり、より良い体調につながることがわかりました。

     レビー小体型認知症だと、記憶障害がないため気づきにくかったり、初期はうつ病と誤診されることも多いようです。65歳以上で原因不明の体調不良があるなら可能性のひとつ、だそうです。

     わたし自身もたまに認知機能低下?と思うことがあります。もし自分がボーっとしたり、料理などができなくなったり、幻視などの症状に気づいたら、自治体の相談窓口で専門医を紹介してもらおう、と読んで思いました。巻末に載っている動画とかも役に立ちそうです。
     「認知症になっても人生終わりじゃない。できないことは人の世話になって楽に生きよう」そのとおりだと思います。
     ちなみに、予防法についてはちょこっとだけです。別の本や動画をお探しください。

    • かなさん
      けよしさん、おはようございます。
      樋口直美さん…レビュー小体型認知症でも
      悲観はしてないんですよね!
      常に前向きなところ、
      いいなっ...
      けよしさん、おはようございます。
      樋口直美さん…レビュー小体型認知症でも
      悲観はしてないんですよね!
      常に前向きなところ、
      いいなって思ってます(*^^*)
      2024/10/07
    • けよしさん
      かなさん
      コメントありがとうございます♪

      樋口さんは、当事者でありながら本も書かれてすごい人ですね。
      認知症になったら終わりみたい...
      かなさん
      コメントありがとうございます♪

      樋口さんは、当事者でありながら本も書かれてすごい人ですね。
      認知症になったら終わりみたいに思っていたのでびっくりしました。
      それでも、いろいろと大変なことはあるようです。
      それを、まわりに助けてもらいながらも、どうしたらできるようになるか、前向きに工夫されていることに勇気をもらいました。
      なんとなくでは大人になれないように、老人になるにも学びが必要なんですね(^-^)
      2024/10/07
  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1766/K

  • 治療薬もなく、未明のレビー小体病(以下レビー)。
     
    レビーは、脳内伝達物質のドーパミンとアセチルコリンが減るので、薬で補充すると良くなる。
     
    ただ、レビーの薬剤過敏性から各薬の適性量の見極めがとても難しい。
     
    ぼーっとしている時間が長いなぁと覚醒させるために(知能を上げるために)抗認知症薬(アセチルコリン)を増やしすぎるものなら、パーキンソン症状(以下PD)が進んでしまうし、かといってPD治療薬(ドーパミン)を増やすと、今度は幻視が増えたり凶暴になったり騒ぎだしたりする。
     
    トライアンドエラーを繰り返す介護側は「どうすりゃいいんだ」と疲れてしまう。

    そんな時節、本書で樋口さんが言っていた、
    「60点でいいじゃないですか」(本書P165/177 kindleの頁表示)という御託宣。
     
    どうしても元気な父に戻ってもらいたいと、あれもこれも良くしたいと、こちらが熱量多めにいろいろやってもらいたいと思うのだが、当人がストレスに感じていると良くないとある(悪いストレスは猛毒 P118/177)。

    *本書抜粋

    (P166/177)
     生きる張り合いがあることは、何よりも脳の働きを高めると感じます。調子が悪い時でも、人前で話さなければいけないとなるとシャキッとできてしまうので、自分でもびっくりします。その後は、寝込むんですが。
     脳の働きを低下させるのは、役割も楽しみも人との会話も笑顔もない生活じゃないでしょうか。歩かなければ歩けなくなるように、脳も使わなければ、働かなくなるんだと思います。嫌いな計算ドリルを必死でやるんじゃなくて、家でも家の外でも何か役割を持って、人と笑い合いながら過ごしている人は、認知症があっても周囲を困らせるような症状はあまりでないでしょうし、進行も緩やかになる気がします。 

    (P165/177)
     レビー小体病に限らず、認知症の診断を受けて苦しんでいる方は、できないことを無理やりやろうとしているんですよ。覚えられないのに必死で覚えるとか、計算ができないのに必死で計算するとか。誰にも頼らずに一人で歯を食いしばってやるとか。それでうまくいかなくて、「情けない」とか「迷惑をかけている」とか、自分を責めている。すごく真面目な方だと思うんですが、それでは脳に自分で毒を注いで、自分から悪化させているようなものです。いいことは何もない。
     できないって何も悪くないですよ。病気の症状なんですから。他のことならできることがいっぱいあるんですから。自分が好きで得意で、やっていて楽しいと思えることをすればいいんです。楽しいって脳には最高の薬なんです。



    ある程度受け答えしてくれて、ちゃんと自分で歩いたり、一人でご飯を食べれくれて楽しそうに笑ってもらえるだけでも「良し」。60点で良いと考えると、介護する側も少し肩の荷も降りると思う。
     
    本書を援護(介護人は母)の立場で読み、今後もアンテナを張って情報収集は続けつつも、援護力の60%を機能面に、残りの40%を当人を楽しませることにバランス変更しようともの思う、2024の新春である。
     
    自分の症状を的確に表現できる樋口さんと、内門 大丈さん(医師)の対談集。レビーと生きる当人と診る側のお医者さんの両目線から話を聞けて興味深かったです。

    素敵な本です。レビー関係者に強く推します。

  • 何度も読み返しました。身近な人がなった時、初めて知ることばかり。患者さんは多種多様だから、これがあてはまる、とはいかなくても、何故かホッとした。勇気をいただきました。

  • 対談形式で読みやすい。
    当事者の方のリアルなお話は、とてもとても参考になった。
    そして、認識を変えられる事も多数あった。

    その他の話として…
    医師は、患者のすべてを知らない。
    見える症状と、聞く症状、血液検索数値など、しか知らない。
    性格も、人生の背景も、環境も、それぞれ、みんな違うのに。

    それぞれが『今』をつくっているから、それを診ないで、終末期医療や高齢者医療はできないのではないか、と思う。

    家族も見ていない、見えていない、見ようとしない、ことが、あるのかもしれない、とも思う。

    本当に難しい。
    自宅や地域で高齢者が暮らすことを推進するのであれば、今の制度では全く足りない。

    そのうち高齢者税が加算されそうな、日本だな。

  • 入門編にしては、素晴らしいんじゃないかな。素直に受け入れる気持ちで読めば

  • レビー小体型認知症について、わかりやすい解説を患者と医師が対話する形でまとめられ、読みやすいです。レビー小体病と表現した方が良いほど記憶障害のない病態があったり、パーキンソン病の認知症とレビー小体型認知症、アルツハイマー病との線引きが難しく、特に高齢になればレビー小体が脳に蓄積されるのは珍しくなく(発症の有無とは別に)、アルツハイマー病との合併もあるというのには驚きました。著者の一人である当事者の著書「誤作動する脳」も読みたいと思いました。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/570784

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著者プロフィール

樋口直美(ひぐち・なおみ)1962年生まれ。50歳でレビー小体型認知症と診断された。多様な脳機能障害のほか、幻覚、嗅覚障害、自律神経症状等もあるが、思考力は保たれ執筆活動を続けている。著書に『私の脳で起こったこと』(ちくま文庫)、『誤作動する脳』(医学書院)、『「できる」と「できない」の間の人』(晶文社)等がある。

「2023年 『レビー小体型認知症とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口直美の作品

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