「性格が悪い」とはどういうことか ダークサイドの心理学 (ちくま新書 1806)

  • 筑摩書房 (2024年7月10日発売)
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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480076311

作品紹介・あらすじ

「人をコントロールしたい」「退屈さを感じることが多い」

「私はほめられて当然だ」「人が苦しむ様子を見てしまう」

あなたの中にもある「ダークな面」を、心理学が分析する

 

 ダークな性格として、典型的なものは「マキャベリアニズム」「サイコパシー」「ナルシシズム」「サディズム」の四つである。それぞれの特性、測定方法を紹介、また仕事の相性、職場での行動、人間関係、異性との付き合い方等を分析し、どんな問題に結びつきやすいか、さらにその気質は遺伝なのか、環境なのかにも迫る。「望ましくない」性格が社会で残っているにも理由があり、どんな人にもダークな面はあることも明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • キャッチーなタイトルに惹かれ、拝読しました。本書は、性格が悪いことを細分化・要素化し、仕事や恋愛といった場面でのそれぞれの要素との関連性を調べるといった論理展開でした。

    またこれらの要素の発生原因として、環境によるものか、遺伝によるものか議論するだけでなく、社会の変遷に対して、どのようにダークな性格が生き残っていくかの見通しをして論を占めておりました。

    個人的には、4つの要素によって「性格が悪い」ことを定義するあたりが面白かったかなと思います。これによって、具体性が増して論理展開しやすくなっているように感じましたが、要素が完全に独立しているものではなかったのが少し気になりました。

  • 性格の良し悪しというより、ダークな性格といわれる「マキャベリアリズム」「サイコパシー」「ナルシズム」「サディズム」について書かれた本。

    ダークの9つの要素やビッグ・ファイブ・パーソナリティー、HEXACOモデル、恋愛色彩論(恋愛スタイルの6タイプ)等、参考になった。

  • 【ダークサイドは誰もが心に抱えている】
    "性格が悪いってどういうこと?"これが説明できる人って意外と少ないんじゃない?
    自分も意外と紙一重。知ることで人生が変わる本。
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    FUCK SOCIAL MEDIA. READ BOOKS.
    “The truth is nowhere to be found in such places.”
    Instagram @fucksocialmedia_readbooks
    Twitter @fsm_read_books
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    この本の主な目的は、性格が「悪い」とされる人々の行動や心理的背景を理解することです。

    本書籍では「悪さ」や「ダークサイド」を心理学的視点で深く探求します。

    著者は、性格の悪さを単なる人格の欠陥として捉えるのではなく、様々な心理的要因が交錯した結果として分析しています。

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    1. 性格の「悪さ」とは何か?
    「悪い」とされる行動や態度は、他人を傷つけたり、自己中心的だったり、感情的に冷徹だったりします。
    しかし【問題行動を理解すると単に悪者扱いするのではなく、根本的な原因を探ることができる。】

    2. ダークサイドの心理学
    ダークサイドとは、【人間の陰の部分、つまり自己中心的、冷徹、攻撃的、または人を見下すような態度や行動】を指します。
    これらの行動が単なる道徳的欠陥ではなく、心理的なメカニズムに基づいていると説明します。

    3. 性格が「悪い」原因
    「性格が悪い」とされる行動の背景には、さまざまな要因が考えられ
    過去の経験や環境、認知の歪み、防衛機制などが挙げられます。

    4. ダークサイドの形成と維持
    性格の悪さがどのように形成され、維持されるのかを探る部分では、社会的な影響も重要な要素です。
    また、【個人が自分のダークサイドに気づかないまま、悪い行動を繰り返すこともあります】

    5. ダークサイドへの対処方法
    ダークサイドに対する理解とその対処方法も示されています。
    性格が悪いとされる人々が自分を改善できるのか、またはどのように他者との関係を築いていけるのかに関するアドバイスがなされます。
    心理学的なアプローチとして、【認知療法や自己理解を深める】ことで、行動の改善や心の安定を促進する方法が提案されています。
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    総じて、この本は性格の悪さがどのように形成され、どのように対処すべきかを心理学的視点から考えるものであり、悪い性格をただの非難の対象とするのではなく、その背景にある複雑な心理を理解し、実践的な改善方法を見つけようとするものです。
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  • 身近なあの人や、ニュースで見かけるあの人、世界を動かすあの人などを念頭に読み始めた。
    「性格が悪い」というのはソフトな言い方で、要は他人に大なり小なり害を及ぼすタイプの人間。「ダーク・トライアド」(初めて聞いた)の研究について知ることができた。
    「ヤバい性格」のやつは、見るからにヤバいわけじゃないことが多いから、意外に身近にいて、巻き込まれてしまうことも多々ありそうだ。
    もちろん自分の中にも、そういった要素がまったくないとも言い切れない。
    生物学的、遺伝学的には、たしかに長い人類の歴史上、そういう性格タイプが生き残れたことに意味もあるのだろう。
    また、そういう性格因子を持っていても、発現するかどうかは幼少期の環境(心理的に安全な場所があるか)に関わっている可能性があるというのは、これまでの知識からも納得。
    前半は学術的な説明が多いが、後半は身近な事例もあり、ぐっと読みやすくなった。

  • ダークなものとは何か知ることができました。

    自分の中にも当てはまるものがあるので、人と付き合う上で気をつけていきたいと思います。

  • 最近、「進化心理学」が流行っているのですね。私も似たような本を立て続けに読んだので、ごっちゃになってきました。本書と「ホモデウス」を同時進行で読んでいたのですが、進化心理学の中で、悪い性格(本書の中では「ダークな性格」と言っています)に特にスポットを当てて論じているような内容でした。
    人間誰しも、自分の性格の中に「ダークな一面」をもっていると思うので、誰が読んでも興味深い本だと思います。
    「性格の研究」ってどうやるのかも興味深くて、例えば英語の辞書の中から、性格を表す単語を抽出していって、同じ性格を表す言葉をグルーピングしていく。「明るい・社交的・外向的」「攻撃的・暴力的」とか。(注:うろ覚えで書いています)。
    これをいろんな言語の研究者が同じようにやっていて、どんな言語でもだいたい同じような分類ができあがるとか(面白いですね)。
    で、21世紀になって、それまで5つあった性格のまとまりに、韓国語で研究を進めていたグループが第6の性格を発見し、ヘキサコモデルと名付けた。HEXACOモデル。なんか、ネーミングが良いですよね。H:謙虚さ/E:情緒性/X:外向性/A:協調性/C:勤勉性/O:経験への開放性 の6つである。で、ダークな性格の持ち主は、特にH因子が低いと。つまり謙虚さがないってことね。ちなみに、Cの勤勉性は、最近になってその重要性が注目されるようになったとか。そうなの?勤勉であるって、すごく大事なことだと思うけど・・・って、これは、日本の常識なのですね、きっと。欧米では、勤勉であることよりも(勤勉に当たり前のことをコツコツと続けるよりも)、もっと自由な発想で、それまでの慣例に囚われず、斬新なアイディアを生み出す方が価値があるとされる傾向にあるのだろう。しかし最近になって、勤勉さこそが幸福に近づくために大事な因子なのだと考える研究者が世界的にふえてきたのだ。日本では、当たり前すぎて見過ごされていたのかもしれない。
    私は、自分は特に何の特技も、特別な魅力もない人間だと思っているけど、謙虚さと真面目さ(勤勉さ)だけは人並みくらいにはあるから、それでなんとか生きてきたと思っている。(謙虚な人間は自分で謙虚とは言わないのではないか、という疑念もあるけど)。
    仕事で多くの生徒と接してきたけど、成長が見込めないな、と思う子って、謙虚さがないのよね。(自分は今のままで充分すごい、俺って天才!と思っている子は、それ以上成長しない。非常に学力が低いにもかかわらず、自分でそれに気づかず、根拠のない万能感にあふれている*ダニング・クルーガー効果)。
    ダークな性格に話を戻すと、ダークな性格は(まぁ、当たり前っちゃああたりまえだけど)遺伝的要素もあれば、環境による要素もあり、人類の遺伝子の中に組み込まれ、残ってきた。遺伝子の中にダークな性格の要素があるとするならば、もちろんそれは、進化の過程で淘汰されなかった、生き残るために必要な性格特性であるということだ。例えば、自分が生き残るためには人を騙しても平気である、とか。自分はすごい!というナルシズムが、大きな獲物を捕らえる危険にも立ち向かうエネルギーにつながるとか。
    ということで、ダークな性格についてよく分かり、それも全部が全部悪い要素ではないのだなぁと興味深く読めた1冊でした。

  • Twitterで見かけて面白そうだったので予約。
    50-60人待ちでしたがようやく手にしました。

    内容は別にいいんです、というかまともな学者さんらしい内容。賢い人特有の書き振りで要は「世の中にはっきりとしたことはない。まして性格なんて。まぁ性格の悪さっていうものを分析していけばこうなるけど自分がそうでも周りがそうでもあまり気にせず。」みたいな。
    「性格の悪さ」なんてものを私みたいなパーが理解出来るような易しい書き振りで断定的に述べるようなおかしな学者さん本でもなければ(断定的に話す学者本なんて読みたくもない)、学者さん達が一所懸命学んで実験して調べ上げたことをちょちょちょいと拾い集めてパー向けにまとめたジャーナリストの本(自分自身は全く実験も何もしてないのに他人の研究の表面だけなぞったようなものもイライラする)でもない。そりゃこうなります。

    分類や遺伝環境の影響とかもまぁそりゃそうだろって感じ。

    ちょっとだけ引っかかったことや記憶に残したいことをここに。

    P213
    アメリカの神経学者が脳画像を比較し、サイコパスとされる人達には明確な脳の特徴があることを明らかにしたと。この比較は名を伏せてやってたので誰のか分からず、あるサイコパスの脳は実は自分の画像だったというエピソード。
    ここまではいいんだけどその後の著者が「これまで衝動的だったり攻撃的だったり他人の気持ちを考えなかったり祖先に殺人犯がいたりしたけど、日常的に暴力を振るうわけでも誰かを貶めるわけでもなく、彼は愛情ある家庭で育ち、家庭、環境、養育でサイコパシーの要素があっても社会生活にの中で適切に生活できるかも知れない。」としている。
    いやいや。
    彼のサイコパスとしての評価を彼自信の自己判断だけでやってどうすんのよ。
    まして家庭環境のおかげで制御されてるかもって?それがブレーキになってるんじゃなくて他の欲望(社会的に成功したい、名声を保ちたい)が暴力を上回ってるだけかもじゃん。
    勿論そんなことこの著者は分かってて書いてるんだろうけど。

    P228
    行き過ぎた自己肯定感信奉への批判。
    激しく同意。
    そりゃ全く無いよりあることでプラスに働くこともありますよね。ただ本文にある通りアメリカに代表される自尊心を高めようとする子育てはナルシシズムの方をより大きく生み出しちゃうよねぇ。自尊心があるから成績がいい、仕事が出来る、友達も多くなる、いやいやいや。
    本にもあるけど「相関」と「因果」をごっちゃにしちゃいかんし、学業に関しては逆(成績がいいから自尊心が高まる)がメインと指摘されてると。
    これね、信じてる人達には申し訳ないんだけど一部の占い?風水?とかも似た感じでいつも半笑いになんの。「お金を揃えて札入れに綺麗にしまっておけば金運が」「トイレをいつも綺麗に掃除しておけば金運が」とか。どう考えても札みたいなそれ自体に価値のないもの(替える、計る、貯めるための道具でありそれ自王冠や指輪にはせんでしょ)ですら綺麗に扱い、どうでもいい向きまで揃えてしまっておける人はそりゃ気配り出来るし仕事も出来るしなんせ心に余裕があるしパーセプションの重要性を理解してるし頭もいいだろうから金持ちだろうし?トイレみたいなどうしたって汚く臭くなる場所を手を抜かずに掃除するような人、しかも清潔に保つために掃除頻度を決めたり道具揃えたり。そんな人はリビング、書斎、ベッドルームはもっと綺麗だし爪はいつも切ってあるし髪の毛セットして洗顔歯磨きも正しくいつもいい匂いして挙句金持ちだよ。

    何故に逆から読むかね。みたいな。
    (まぁ逆から読まないとやってられないだけですけどね)

    本文中に「自尊心が高いことと安定していることは別」みたいなのが何度も出てきますがこれも本当そう。「不安定な自尊心は敵意や暴力に繋がりやすい。不安定で高い自尊心を持つナルシストが攻撃的な特徴を持つ。」
    最近一部界隈で煽てあげられてる誰かを思い出したり。

    最後に「どうしてこんな淘汰されちゃうようなダークな性格が残ってんでしょうね」と書いてますがマジで書いてます?冒頭「外交的な性格は普段は望ましい性格だけどコロナ禍では望ましくない性格と判断される」みたいなこと仰ってましたよね。環境っていうか社会がこれだけ歪んでたらそりゃ残るでしょうよ。社会的に成功してる人達はほぼサイコパスだろうし。
    てかそもそも生き物みんなダークじゃない?ホワイトな人間がいたら騙されて利用されて殺されるだろうからそっちの方が残らないと思うんだけど。

    勿論この本の著者はそんな偏見や思い込みは分かった上で研究して書いてくれてるんですけども。

    内容が難しい、というよりは、私の偏見が強過ぎて(要はパーすぎて)どうしても飲み込めない、納得出来ないって感じの本でした。

    本にも著者にも罪はないけど私のスコアなので3。

  • 「やな奴、やな奴、やな奴!」これはジブリ映画「耳をすませば」の劇中で主人公の月島雫が発したセリフだが、おそらくみなさんも社会生活の中で同じような感情を抱く相手がいると思う。
    そのように感じる対象のことを仮に「性格の悪い人」としよう。ではそもそも「性格が悪い」ということの定義ってなんなのだろうか?

    この本では一貫して「ダークな性格」と称していて、定義と言っていいのかはわからないが、その人の行動や言動がどのような結果に結びつくかで判断されているとのことだ。
    私としてはその人の行動が私利私欲のために故意に誰かに害をもたらすものであればその人は「性格が悪い」と言って差し支えないのではないかと感じる。

    しかし、上記のような場合を除いたとして、この本で語られている「ダークな性格」は社会、特にビジネスの面では結構役立つ気質であるものとも思う。
    特に後半に書かれていた「人類にとって邪魔なものならその遺伝子は淘汰されているはず」というのはまさに真理なのではなかろうか。

    我々は簡単に「あいつは性格が悪い」と言ったりしているが、それって単純にただ自分が気に食わないだけで真に性格が悪い人なんてこの世にはそんなにいないのだ。
    この本を読んだからってすぐに「苦手」「嫌い」な人への態度を改められるわけではないが、少なくとも以前より「理解」はできるようになったと思いたい。

  • 「性格が悪い」=ダークな人、とされる人たちにはこんなタイプがあるんですよ〜という話から、ダークさは遺伝するのか
    なぜダークな人たちが存在するのか
    など、興味深く読んだ

    私が知りたかったのは、「性格の悪い自分を矯正する方法」だったのだけれど、そんな方法は載っていなかった

    しかし、別の視点から自分の性格を見つめられそうな知見が得られたので読んで良かったかな

  • タイトル「性格が悪い」とはどういうことか、に興味があり読んでみたが、「ダークな性格」についての話だった。性格が悪いとダークな性格は同じ意味として扱われているのか、いまいち判然とせず。。
    なんとなくだけど、「性格が悪い」というのは、その人が起こした行動による「結果」で受け取る側の判断。ダークな性格はその人が持つ「性格特性」。そんなイメージ。
    なので、ある人(自分も含めて)に対して、性格が悪いなぁと思うときに、その元となる性格特性を考えるにはいい本かもしれない。

    以下メモ
    ・ダークな性格とはナルシズム、サディズム、マキャベリズム、サイコパシー、スパイトの5つの性格特性のこと。
    ・性格とは、体重のような扱いができる。1つに多くの人が平均値近くに分布する、もう1つに安定しつつ変化する特性をもつ。
    ・人類の歴史の中で、暴力行為の深刻さや頻度は低下して、今は平和、だからこそダークな性格というのが浮かび上がってみえる。

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著者プロフィール

小塩 真司(おしお・あつし):1972年愛知県生まれ。名古屋大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科教育心理学専攻修了。博士(教育心理学)。中部大学准教授などを経て早稲田大学文学学術院教授。専門はパーソナリティ心理学、発達心理学。著書に『自己愛の青年心理学』(ナカニシヤ出版、2004年)、『はじめて学ぶパーソナリティ心理学』(ミネルヴァ書房、2010年)、『性格を科学する心理学のはなし』(新曜社、2011年)、『性格がいい人、悪い人の科学』(日経プレミアシリーズ、2018年)、『性格とは何か――よりよく生きるための心理学』(中公新書・2020年)、『非認知能力:概念・測定と教育の可能性』(北大路書房・共著・2021年)などがある。



「2024年 『「性格が悪い」とはどういうことか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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