日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす (ちくま新書 1840)

  • 筑摩書房 (2025年2月7日発売)
3.99
  • (76)
  • (115)
  • (58)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 1265
感想 : 103
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784480076717

作品紹介・あらすじ

最注目の超人気エコノミスト、渾身の書き下ろし

経済エリートたちの誤解をとき、論壇に一石を投ずる問題作!



なぜ収奪されるのか?

どう回避できるのか?



実質賃金・生産性・物価にまつわる誤算/

人手不足と残業規制という死角/日本型雇用制は生き残れる/

略奪される企業価値 ……

経済構造に関わるあらゆる謎が氷解する。



「失われた30年」で日本の生産性は上がっているのに、実質賃金が上がらないのはなぜなのか? 労働法制、雇用慣行、企業統治、イノベーション……日本経済の長期停滞をよみとく際の「死角」や誤算を白日のもとに晒し、社会が陥りかけている「収奪的システム」から抜け出す方途を明示する。予測的中率に定評のある最注目のエコノミストによる、まったく新しい経済分析の渾身の快著。



‘24年ノーベル経済学賞を得たアセモグルらの最新の論考も分かりやすく解説!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  いやあ、これは力作である。日本の時間あたりの生産性が向上してないことが日本経済が低迷している原因だと語られているが、1998年以降日本の時間あたりの生産性が30%上昇しているにも関わらず、実質賃金が全く上がっていないことこそ日本経済低迷の原因であることを見事に論証している。
    考えてみれば当たり前の話で1990年以前は週48時間労働であり、その当時の日本の潜在成長率は4%強あったのだ。それが1990年代以降は週40時間労働制が導入され、日本の潜在成長率は1%未満に低迷している。時間あたりの生産性の向上はあったにも関わらず、実質賃金の増加に振り向けずに企業の内部留保を増加させてきたのだ。近年の働き方改革は残業を悪者にして、利益はますます雇用者報酬に向けられることなく、内部留保の備蓄に向かっていくことになる。日本の生産年齢人口は減少するばかりなのに、現役世代に高齢者の社会保障コストを割り当てているために、企業は国内の人材投資するより、海外投資ばかりに資本投下するために国内の生産設備は旧式のままであり、新しい製品開発もされないのは実質賃金が低迷している国内のビジネスに大企業は注力しないからだ。
    大企業は海外投資で史上空前の利益を上げるが、国内市場だけを相手するほかない中小企業は労働法制の強化で人材を確保できない。国内市場の低迷と人材難という負のスパイラルから抜け出せない中小企業と、史上空前の利益を獲得しても国内では設備投資や人材育成投資をしない大企業、そして政府は長期的なビジョンを持たないばら撒き政策をやっている。
     まずは、日本経済不振の真の原因をキチンと解明すること、そういう意味では藻谷浩介氏の「デフレの正体」に匹敵する必読の書といえる。

    • ぴりさん
      素晴らしいコメントに、なるほどと感嘆しました。
      読んでみたいと言うよりも、もう読んだような気分です。
      素晴らしいコメントに、なるほどと感嘆しました。
      読んでみたいと言うよりも、もう読んだような気分です。
      2025/06/23
  • こここのところずっと、私が日本経済の失われた30年についての分析で感じてた、数多の説明についてのモヤモヤを吹っ飛ばしてくれた論考であり良書。

    実に分かりやすく整理されており、まず冒頭の日本も生産性は欧米諸国並みに上がっている。ただ実質賃金のみが上がってないとの分析に衝撃を受け一気に本書に引き摺り込まれた。ここから分析は進行して、さまざまな角度から日本の経済の停滞の原因を説明している。

    すべからく政策立案者や企業経営に携わるもの、そして政治家は本書を読むべきだ。
    停滞の原因がわからなければ処方箋は描けないし、間違った見立てのもとでは治る病気も治らないのは経済も同じ事だろう。

    あまりに感動したので同じ著者の「成長の臨界」も買ってしまった。

  • これを書いている今日は、2025年3月12日。日経新聞の夕刊に下記のような記事がある。
    【引用】
    2025年の春季労使交渉は12日、大手企業の集中回答日を迎えた。基本給を底上げするベースアップ(ベア)に相当する賃金改善について、川崎重工業やNECは労働組合の要求に満額で解答した。各社の回答額は24年水準を上回る見通しで、物価高や人手不足に対応した賃上げが相次いでいる。
    【引用終わり】

    本書は、日本経済の低迷の要因や背景について、筆者なりの分析・見解をまとめたものであるが、低迷の理由の一つとして、大企業が業績が回復したにも関わらず、国内での投資や賃上げを行わず、儲けを内部留保に回したことをあげている。特に賃上げが行われず、雇用者所得がほとんど伸びなかったために、国内消費が盛り上がらず、それが更に企業の投資意欲を削ぐ、という悪循環が起こっていたことを指摘している。
    大企業の賃上げには、一般的に、ベアと定昇がある。ベアは賃金カーブそのものを上方に修正すること、定昇は、同じ賃金カーブ内を上側に登っていくことと考えるのが一般的である。日本の企業は一時期、ベアを凍結していた時期があったが、大企業の場合には、それでも定昇が行われることは一般的であった。大企業の定昇は、通常、2%強程度はあるので、それが10年・15年と積みあがると、個々の従業員にとっては、ベアがなくても、相当に賃金は上昇する。しかし、それは同一賃金カーブ上を動いているだけの話なので、全員分の累積(積分値になる)は、変わらない(各年齢に同じだけの人数がいた場合には)、すなわち、必要コストはゼロになるのである。また、大企業の従業員は、このように、定昇分の賃上げを享受できたが、それすらも得ることが出来なかった労働者(中小企業や非正規など)は沢山いる。要するに、大企業でベアが凍結されたことが、日本人全員の賃金水準を抑え込んだのだということを、筆者は述べている(私の理解に誤解がなければ)。
    そういう意味で、上記の日経新聞の夕刊記事は、その流れが変わりつつある可能性を示している。しかしながら、最近は、物価も上昇しているため、ベア率が物価上昇率以上でなければ、実質賃金は上がらない。そこまでの賃上げが行われるか、しかも、今年だけではなく、何年も(これまで凍結されていた分くらいは)続けて行われて初めて、日本人の平均的な賃金は上がることになる。
    こういった流れが続くことを願っている。

  • 「失われた30年」で日本の生産性は上がっているのに、実質賃金が上がらないのはなぜなのか?

    日本の賃金が上がらない理由をいくつもの事実から読み解く。
    基本的に現在の新自由主義を批判する内容になっていると思う。

    他の国に比べて、生産性は上がっているのに賃金はなぜ増えないのかを語っている。
    賃金上昇を阻害する要因として
    ①メインバンク制崩壊に起因する企業の保守的体制
    ②雇用を全面的に守るために全員で低賃金を受け入れる
    ③①と②からくる企業の内部留保
    ④残業規制と週40時間規制による労働力の不足
    ⑤フリードマンとジェンセンの経済背策を是としたブルジョワたちの流れ
    (株主優先理論とエージェンシー理論)

    戦後日本が採用してきた政策が良きにしろ悪きにしろ現在の実質賃金の低迷を生んでいるわけで、格差の拡大と財政難を生んでいると感じる良書である。
    ただ、その中で自分は何をしていくのか、何をしてきたのかという本質は問われると思う。

  • やや「ああ言えばこう言う」的なところはありますが、わかりやすい良書だと思います。

  • 私が社会人になった頃、就職氷河期と言われ、何社受けても希望の会社は最終面接まで行けず、相当の苦労があった事をよく記憶している。そのうち就職先はどこでも良くなってきて、全く希望と関係ない業種にまで手を伸ばしたりした事も覚えている。結局、上場企業なら何でも良くなって(活動に疲れた事もあり)、一社合格した時点で面倒になってやめてしまった。今思えばその後の人生に関わる重大事にも関わらず、よくもそんなに早く諦めたなと、当時の自分に文句が言いたくて仕方ない。だが、毎日遊び呆けているような大学生にとっては、そもそも働く事自体にいきなり前向きになれと言われても無理な事だし、法学部で大半の友人が公務員になる中、自分は一般企業で実力をつけたいなどと言いながら、試験勉強からも逃げていたのではないかと思う。自分の世代はそういう意味では景気の波のどん底みたいな時代。もっとも、大学出たての若造が日本経済に何かしらの興味や問題意識を持っていたとも思えず(その割には大学の授業は経済系も多くとっていたが)、社会人一年目は早々に仕事の大変さを見に染みて感じながらあっさりリタイアした。今考えればその後にit系で大量に人材が必要で、上手くそこに滑り込んだことは、私の人生を大きく変えた。本書と全く関係の無い話をしながらも、何とか話を結びつけるなら、それからうん十年、私の給料といえば確実に上がっている。最初に入ったit企業も当時のitバブル真っ只中でテレビなどのメディアにも取り上げられるようなイケイケドンドンな会社だった。給料は酷かった。残業規制などは全く考えることなく、月に残業時間が150時間越えるなと当たり前。これは当時にあっても違法だったんじゃ無いかと思う。だが幾らでも仕事があったし、やればやるだけ自分にスキルがついてるという実感もすごかった。そこから資格取得や転職、そして昇進などを続けて、前述した通り給料は上がっている。というか上げてきたつもりだ。
    だが、最近は何を買うにも、これってこんなに高かったかな、と購入を躊躇する事も増えた。車の買い替えにしても、一昔前の1.5倍ぐらいはするんじゃ無いかと思う。結局私みたいな安物好きは人生を楽しめていないという人も居るが、良いものを安く買いたいというのは誰もが考える事で、今の物価高騰は吐き気がするほど凄いと感じる(酔っているので稚拙な言い回しになっているが)。兎に角給料は上がってきたけど、それ以上に家賃やら車の維持費やら、食費やら光熱費やら、そして趣味の楽器もバカ高い(楽器は海外に発注して完成に2年かかったから円安が進んで、なお高くなった)。実質的には裕福にはなっていないと言うのは勿論私だけの感覚では無い。このまま行くと少子化も進んで、内需に頼る日本経済の縮小は必然だと嘆きながらも、先ずは自分の所属する会社が潰れないように、日々を生き抜くのに精一杯。そうしている間に定年を迎えて、貯蓄だけに頼っていると、死ぬまで財が目減りするのを眺めるだけになるのかな。そうならない様にもう少し勉強して、真面目に10年先の事も考えてみるか。そんな(今は)不勉強な私にもだいぶわかりやすく、今の日本の経済の問題点を教えてくれる一冊だ。そして、そこから自分なりにどうこの問題と向き合い、どの様な方向性に進もうか考えさせてくれる一冊でもある。大変勉強になった。

  • 日本経済の現状を取り巻く構造的課題を概観できる一冊。とくに、アベノミクスと呼ばれた金融緩和が進められた10年間の結果と、企業が利潤を労働者の賃金上昇に反映せずに自社株買いや海外投資といった株主資本ばかりが膨らんだ格差拡大の構造を分かりやすく説明している。

    2000年代からの構造不況から日本の企業生産性は30%も向上しているが、賃金水準は横ばい傾向であり、近年のインフレ基調から実質賃金はマイナスに陥っている。いわばこの収奪的システムが日本のマクロ経済を形成し、アベノミクスの金融緩和が成長戦略へと結びつかなかった原因となっている。そのため消費に回る可処分所得が減少するスパイラルに突入し、それらがアンチ・エスタブリッシュメントを叫ぶポピュリズム政党の跳梁を招いている。

    とくにイノベーションのような技術革新・構造転換は収奪的性格を帯びており、包摂的な社会保障や雇用維持の仕組みとセットにすることが求められる。一方で経営者は短期的な株価上昇や配当維持といった成果を求められ、働き方改革やコーポレートガバナンスといった制約の増大によって企業業績の向上が労働者には反映されなくなっている。労働という価値が目減りする時代において、果たして個人はどのような対抗策を採っていけば良いのだろうか。

  • 大まかな内容は理解できたが、細かい説明は難しく、あと何回か河野氏の本をよんでみないといけないかもなぁ。
    こういう本は、若い世代の人が読んで、経済の流れや現状を把握するべきだと思う。

  • 日本の生産性は1998年以降30%上がったのに、なぜ賃金は上がらないのか。
    これがこの本のテーマ。

  • 他国に比べて日本の実質賃金があがらないことをずっと疑問に思っていて、それは日本の生産性が低いから賃金も上がらないというようなことを聞いていて、なんとなくそうなのかなと思ってだけれど。
    実際は2023年までの四半世紀で、日本の時間当たり生産性は3割上昇したのに、時間当たり実質賃金はの横ばいとのこと。近年のインフレで正確には3%程度下落とは。
    仕方がないのかな、と思っていたけど回避できる策があると示す著者。
    そういう視点があるんだという発見。

    でも、わかっていても実際に意識やシステムを変えるって難しいのだろうな。

  • 失われた30年について考察。
    さらにこれから目指すべき社会について言及。

    数字の明示も有り難いが文章としての書き方がわかりやすく非常に読みやすい。
    終盤にかけて主張が全面に出ていて面白い。

  • 日本の経済停滞の原因を、通説にとらわれず、データを紐解きながら、解き明かす良書。

    -日本の生産性は過去数十年で30%アップ。されど、より低い生産性伸び率の国よりも賃金上昇していない。
    -実質賃金の低下→ベアも、インフレと合わせたら、単純実質ゼロアップ。
    -されど、長期雇用者は昇給でその現実が見えてない。
    -他方で、長期雇用の枠外に置かれた派遣職員は、収奪されて、安い賃金で据え置かれている。
    →日本でも始まっている政治的な分断への影響あり?
    -海外投資も株も、日本国内の雇用者の所得アップにはつながらず、結果、国内消費が伸びない。
    -イノベーションは、本来収奪的で、どう包摂的な社会を目指すのかが大切
    →技術史と社会発展の歴史、再配分をどうするかぎ課題と思う
    -賃金停滞で、安い日本に。インバウンド礼賛もいかがなものかと

    示唆に溢れる本だった。
    他方で、マクロ経済学の素養がない私には、前半読み進むのが難しい。単語の意味がわからなくて、数章読むと意味がやっとわかったり。著者の主張が疑問問いかけ反語形式で引っかかったり。。
    中々新書としてよむにはつらかった。

    また、賃金上昇への分配を本当に行えるのか、失業率の上昇にならないのか。提案の影響のメリデメについてももう少し言及が欲しかった。

    されど、社会的包摂性の必要性や、日本型ジョブ型雇用のあり方(早期選抜性)は腹落ちする提案だった。また、社会制度間の連携と、制度補完性が重要という指摘や、メカニズムデザインという研究分野があるということは、自分のやりたいこと(自然資源の持続可能な利用に向けた社会制度のあり方の検討)を研究するに向けて、大いに助けとなった。

    今の社会や、現場を見る上で、マクロ経済学というものも学ぶ必要があるかも。
    システム論で、どの階層でものを見ると、見たいものが見えてくるのか。階層間の影響の確認などなど、複層的なモデルの検討などなど、勉強したいことが山ほど出てくる。

    休日、走って酒飲んでで終わってたら辿り着けないかもなあ。勉強しますかね^_^

    だが、


    参院選の前に読むことができてよかった。

  • 社会システムについて、基礎的な考えを整理するのに非常に役立った。偶然ではあるが選挙前に読めたのは、考えを整理する上で良いタイミングであり、その意味でも良書だった。

    日本人の賃金が伸びない原因として生産性が低いと言われるが、伸び自体は欧米諸国に劣っておらず、問題は生産性の伸びによって得られた富が適切に分配されていないこと、とする論拠。(ただし、本書では示されないが、日本生産性本部等によれば生産性の絶対額は劣っているので、あくまで伸び率についての話だとは思う。絶対額が劣っているのは、やはり国の力が弱まっているためだろうか。)

    適切に分配されない原因として、主な原因の一つに大企業が利益を貯め込んでいるため、としているが、これは強欲による場合と、企業が存続を旨としバブル以降の内部留保による生き残りの成功体験を重視し過ぎた場合、と言う2つがある。

    前者については弁解の余地なく、文中でもイノベーションによる収奪や富の集中、それを助長した学問領域や政治家、といった言及があるので、その点については異論はない。特に、収奪的と包摂的なイノベーション、と言う観点は非常に面白い。イノベーションについて、「これが人々を豊かにするか」と気にしているか、というのは余り議論されていないだろう。生成AIが人類を豊かにする、と言い切れる人は本当にいるのだろうか?
    ただ、株主至上主義についての疑念が少々、強調され過ぎているようには思うが、著者のエコノミストと言うバックグラウンドを考えれば、あくまでバランスの問題、ではあるのだろう。
    ここ20年くらいに余りに株主に配慮し過ぎて、従業員や社会に対する配慮が失われ過ぎた事への反省と受け止めるのが良いように思う(企業は社会の「公器」だったはずなのだが…)。少なくとも株主がステークホルダーの一人として、企業の利益の最後の残りに預かる上で、その適切な配分を求めること自体は、経営者の強欲を戒めるうえでは必要だろうし。少なくとも、ピケティのそれほど、ラディカルな財や所有の公共化までは意図していないように思われる。

    後者については、ある程度はやむを得ないのだろうし、やはりこれもバランスの問題だろう。特に日本は長期雇用の維持を重んじて来たので、ある程度貯め込んで非常時に活用するのは理にかなっているところがある。ちなみに、この辺りは日本が災害国で、比較的、富を備蓄に回すことに抵抗が無いことも影響しているのでは。
    ただ、やはり社会と雇用を維持を重視し過ぎてバランスを欠いたのも事実。社会保障費のメンテナンスを怠り、税だけで小手先の辻褄合わせに終始したあげく、負担と給付のバランスに歪みを欠いたのが今の状態であろう。特に日本では一度出来たシステムを変えるのが苦手な事が多く、また、世代間での政治的な議論を避けてきた経緯があるので、なおさらだろう。

    著者が、制度とは「抜本的に」変えるものではなく、本来は社会やその成員に及ぼす影響を考えながら漸進的に進めるもの、としているのが、特に良いと思う。当たり前のことではあるのだが、これを怠ってきたツケが回っているのが今の状態なので。その意味では国民側も、制度のメンテナンスをどのように進めていくか、と言う考えで政治に向きあう事が必要と思う。

  • 必読の一冊。過去約30年間休みなくサラリーマンとして過ごしてきたこの時代が、どのような時代で、またもっと違うスタイルはどのようにあり得たのかについて、大きなヒントと総括をいただいた書。一人一人頑張っているのに、どうして生活が向上しない(苦しいまま)のか、どうして他の国にに比べて給料が上がらないのか、どうして組織が変わらないのかなど、このサラリーマン生活で抱いてきた疑問について大変貴重な視座が得られた。
    では今後どうすれば良いか、イノベーションに関する論考(労働の限界効用が向上する形での推進)がそのヒントを与えてくれる。が、その多くは、我々読者の今後の1日1日の対応や行動によって社会の変化を良い方向にもたらしていく。そのような行動の起点になる書でもある。トップエコノミストからの警告と啓蒙の意味は大きい。

  • 四半世紀に渡り実質賃金が全く伸びなかった日本の経済は、どうしてそうなってしまったのか。
    日本の長期雇用制の抱える限界。
    日本経済の死角にわかりやすく切り込んだビジネスマン必読書。

  • 大企業は人件費を抑え込んできた。
    イノベーションには、包摂的なイノベーションと収奪的なイノベーションがあるとのこと。
    大多数の人々には大きな負担や苦痛を強いるイノベーションがある。

  • イノベーションの恩恵を一部の人だけが享受する収奪的な状況が続くのは健全な世の中とは言えないですね。その原因が何かをこの本は解き明かしてくれています。
    その原因の一つをやめること、お金を溜め込んでいる企業がベアをするだけでも、確かに正のスパイラルが働く様な気がしました。包摂的な世の中へ。皆が恩恵をあずかれる世の中にするためには生産性バンドワゴン効果が必要という。全体の生活レベルの引き上げを牽引するバンドワゴン、いい言葉だと思いました。

  • エコノミストによる現状の日本経済論。
    日本の労働者の実質所得が上がっていないのは生産性が向上していないからではなく、企業経営の問題であること。労働者の所得が増えないことにより、長い経済の低迷、社会問題の噴出につながっていること。そのためには現状の収奪的な経済を見直し、応接的な経済に移行すること。包摂的な経済に移行していくためには、本質的には収奪的であるイノベーションを社会が飼い慣らす必要性があることを本書では訴えている。
    その他印象的だったのは「ジョブ型雇用」が新しい雇用形式などではなく、産業革命成立期から有る古い雇用形式であること、既に非正規雇用や、中小企業での労働者は以前からジョブ型雇用であるという指摘だ。
    以上本書の内容については概ね同意出来るし、納得感しかない。

  • 私が著書を手に取ったのは、次の理由があったから。
    1.日銀や政府の金融政策の解説を読みたかったから。
    タイトルに日本経済と書かれていたので、金融政策に触れていると思った。

    2.自分が経済的に豊かになれるヒントを知りたかったから。

    読み終わった後、知りたいことがあったかどうか。
    1.について、日銀や政府の金融政策や、大手企業の経営者の傾向が書かれていた。最近、日銀が利上げを行った背景を理解することができて、満足した。

    2.著書の最後に、日本経済が豊かになるヒントが書かれていた。それは、限界生産性をあげること。自分が会社の仕事にどうアプローチすればよいか、また自分の事業をどう成功させるのかを考えるヒントになって、満足した。

    最後に、YouTubeのエコノミストとは、考えが全く違っていた。本の方が、丁寧に解説してあり、自分に合っていたと思う。

  • 消費者余剰と生産者余剰の話が興味深い。
    日本は消費者余剰が多くお得感が高いが、消費者余剰はGDPには反映されない。
    一方で生産者余剰を多くするとGDPに反映され、生産性も高くなるので、諸外国に比べてGDPや生産性が伸び悩んでいるのは、価格をあげてこなかった経営判断が原因である。
    正直、消費者余剰の多い今の日本は住みやすい状態だと思うので、GDPや生産性に変わる尺度が必要なのではと思った。

全90件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

河野 龍太郎(こうの・りゅうたろう):1964年生まれ。87年、横浜国立大学経済学部卒業、住友銀行(現三井住友銀行)入行。89年、大和投資顧問(現三井住友DSアセットマネジメント)へ移籍。97年、第一生命経済研究所へ移籍、上席主任研究員。2000年、BNPパリバ証券株式会社経済調査本部長・チーフエコノミスト・マネージングディレクター、2025年より東京大学先端科学技術研究センター客員教授を兼務。日経ヴェリタス『債券・為替アナリストエコノミスト人気調査』で、2024年までに11回の首位に。日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査で2023年までに7回、総合成績優秀フォーキャスター(予測的中率の高かった5名)に選出される。著書に『成長の臨界』、『グローバルインフレーションの深層』(共に慶應義塾大学出版会)、共著に『金融緩和の罠』(集英社)、共訳にアラン・ブラインダー『金融政策の理論と実践』(東洋経済新報社)等。

「2025年 『日本経済の死角』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河野龍太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×