監督小津安二郎 (ちくま学芸文庫 は 1-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080035

感想・レビュー・書評

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  • 何も起こらない映画、と言われている。
    ヴィム・ヴェンダースを始め、海外の映画監督に多くの影響を与えている(彼らが、影響を受けていると言って憚らない)。
    墓碑銘は「無」の1文字。
    …小津安二郎、という人。

    彼が監督した映画は、目新しいというのでもないし、かと言って、古典的な日本人的な情緒で観る人の感動を誘うというわけでもない。
    ストーリー的にそれほど大きな事件や出来事が起こるわけでなく、家族の日常の風景を撮っていることが多いので、「何も起こらない」とか「淡々」とか言われるわけだが、それにしても妙に心に残るのは何故か。

    蓮実は、その「何故」を言葉にして、解明していく。
    ローアングルのカメラ、会話の時の話者の目線、カメラに添ってたどる家の間取り……などの細かい具体から、小津の映画がなし得たことを明確にしていく。それまでの映画の文法を破っている、ことを論考する。
    目から鱗が落ちまくる。

    しかし、これだけ手法としては前衛的とも思える映画でありながら(笠智衆、原節子といった魅力あるスターの存在はともかくとして)、なぜ今も忘れ去られることなく、人の心をつかんでいるのか。やはり不思議に思わずにおれない。

  • 文芸評論まで含めて筆者の最高作だろう。
    ただ、こういう画面だけを見る方法というのも小津だからできたことで、誰にでも通用する方法ではない。もっとも、方法を持った映画評論って今あるっけ。

  • どうもお世話になりました。とは言い切れません。なかなか縁が切れません。

著者プロフィール

蓮實重彦(はすみ・しげひこ):1936年東京生まれ。60年東京大学文学部仏文学科卒業。同大学大学院人文研究科仏文学専攻修了。65年パリ大学大学院より博士号取得。東京大学教養学部教授(表象文化論)、東京大学総長を歴任。東京大学名誉教授。仏文学にとどまらず、映画、現代思想、日本文学など多方面で精力的な評論活動を展開し続けている。著書に『表層批評宣言』『凡庸な芸術家の肖像』『映画の神話学』『シネマの記憶装置』『映画はいかにして死ぬか』『映画 誘惑のエクリチュール』『ハリウッド映画史講義』『齟齬の誘惑』『映像の詩学』『『ボヴァリー夫人』論』『伯爵夫人』『ジョン・フォード論』ほか多数。

「2023年 『ゴダール革命〔増補決定版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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