ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫 い 1-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.62
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本棚登録 : 872
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080042

作品紹介・あらすじ

のシステムやその根底にあるの逆説とはなにか。その怪物めいた謎をめぐって、シェイクスピアの喜劇を舞台に、登場人物の演ずる役廻りを読み解く表題作「ヴェニスの商人の資本論」。そのほか、「パンダの親指と経済人類学」など明晰な論理と軽妙な洒脱さで展開する気鋭の経済学者による貨幣や言葉の逆説についての諸考察。

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義について、貨幣について、他者書物の書評などが収録されている。シェイクスピアとか文化人としては必読なのだろう。

  • 本書は貨幣論などで有名な岩井氏のエッセイが多数収められた本になります。著者が最後に述べているように、大きくは1)資本主義論、2)貨幣論、3)不均衡動学論、そして4)他人の著書の論評の4つになりますが、個人的にはやはり貨幣論が一番面白く感じました。そして貨幣論自体は1)の資本主義論や3)の不均衡動学論にも応用されていて、その意味では貨幣論が本全体の根底にあるのではないかと感じました。

    岩井氏の主張は深みと面白み、そして納得感をもたらしてくれます。本書で批判を加えている「経済学的思考」についても同様の感想を持ちました。それは何かというと典型的な経済学者は、現実と経済理論が異なる際に、「現実が間違っている」という言い方をします。つまり経済理論こそが真の姿であり、それが何らかの「阻害要因」によって歪められているのが「現実」だというわけです。そんな考え方は馬鹿げていて、「社会」が何かを理解していない研究室で純粋培養された経済学者のたわごとなのですが、主流派の経済学者の間ではそれが当たり前だということになっているわけです。岩井氏はそれに対して非常にロジカルに反論を加えており、大変気持ちよく読むことができました。

    全編通じて興味深く拝読しましたが、1点、4)他人の著者の論評、については割愛してもよかった気はします。何かこれだけが本の中で浮いている感じがあり、しかも対象となる本を読んでいない人からすると、岩井氏が何を論じているのかポイントがよくわからないのではないか、という印象を持ちました。1)〜3)のトピックだけの方が締まりが良い気がしました。

  • [第18刷]2013年9月25日
    難易度がバラバラの小品集。タイトル作品を含め前半が面白かった。

  • 面白い!!!ヴェニスの商人の読み方が凄すぎる。

    利潤とは、差異から生まれる。
    価値体系と価値体系の間の、差異から生まれる。

    商業資本主義:(例)東洋と西洋の
    産業資本主義:(例)労働力市場と商品市場
    今:(例)現在と未来

  • 随筆集
    タイトル作品だけ読んだけど、全然面白くなかった。これは、どうして読もうという気になたのか覚えてない。

  • 資本主義◆貨幣と媒介◆不均衡動学◆書物

    著者:岩井克人(1947-、渋谷区、経済学)

  • インテリ萌。お金(資本主義制度)にどうしてこんなに振り回されなくてはならんのかしら?という疑問のもとに、面白そうだったので初岩井克人。資本主義からは解放されないにせよ、教養ある洗練された文章が素敵だった。貨幣、ビジネスの歴史についても触れているので、経済史を知らない人間には勉強になった。

  • 『ヴェニスの商人』を資本主義的観点から読み解くエッセイ他数篇。
    1980年代の視点から書かれた経済論を解説なく読み解くのは素人には難易度が高く、
    フランソワ・ケネーの『経済表』が高校生の常識と言い放たれる程度に優しくもない。

    あちこちつまみ食いしている程度の自分にとっては表題以外の論を正しく読み解けたとは言い難いため、評価は出来ない。
    なんせ『需給曲線』や『神の見えざる手』なんて現実世界で成り立たないだろうと常々思っていたことが、
    本書を読んでようやく、経済学界においては当然そんな議論はし尽くされているということを認識した程度であるのだから。

    それでも肝心の主題のエッセイだけは全く初心者にも読み解けるものであり、
    語り尽くされた物語の新たな一面を楽しめるのだが、やはり疑問はある。

    資本主義とは独立した共同体同士の差異の交換であることは理解できるし、その差異から利潤が生まれることも納得できるが、差異は利潤によって死ぬとされるのには頷けない。
    もちろん均一化が進むのは間違いないだろうが、資源はもとより、歴史や気候の違いから生じる文化の差異は、
    例え経済力が均衡したとしても覆し難いもののように思えるし、
    何より資本主義のもう一つの側面、"分業"を無視しているかのようにさえ感じる。

    と、門外漢の自分に持てる感想はこの程度だ。
    『現在』というには古く、『過去』というには新しすぎる時代の一分野の背景は、
    ひょっとすると100年、いや1000年前の時代背景よりも捉え難くさえ思えるが、
    それを解き明かすということには、別の時代を生きるような楽しさが待っているのかも知れない。

  • 北さんからの推薦。
    貨幣論を返す時に感想を伝えたところ、新たに借りることに。
    正直難しい。貨幣論の、ほうがまだ分かりやすかったか。。
    個人的には、最後の解説にたいする解説が、一番面白かった。
    たとえ「解説」という短い文章であるにせよ、付加価値をもったもののほうが同じ市場で安く売られるという事態は…。
    秀逸な言い訳だ(笑)

    以下メモ

    利潤とは、2つの価値体系のあいだにある差異を資本が媒介することによって生み出される。
    …しかし、差異は利潤によって死んでいく。…それゆえ、つねに新たな差異…を探し求めていかなければならない。

    まさに企業の命題。
    差異=ニーズ。
    そして、現代ではイノベイションこそが差異を生み出す。
    その先にあるのが顧客の創造か。

    キャベツ人形
    従来差異性を生み出すためにはそのたびごとに新たな商品を考え出していかなければならなかった…いわば極限的な、差異創造の方法…。
    …どれほど多くの人が所有してもそのひとつひとつが持つ差異性という価値は必ずしも全部は消えてしまわない。もし人がひとつのキャベツ人形にもはや差異性という価値を見いだせなくなっても、その人はそれとは異なった人形としてのもうひとつのキャベツ人形を買うことになるかもしれない…。(本書85~86ページ)

    これは、AKB 商法のことではないか。
    極限的な、差異創造の方法。これがイノベイション。すばらしい。

    知識とは、未来に起こりうる様々な状況の中での柔軟なる対応を可能とするための、現時点における備え…。
    貨幣とは…不確かな未来に備えるための時間の買収という役割…。
    われわれは、貨幣という流動性を保有するか、それとも、知識という流動性を保有するかという選択に…迫られている…。(本書223~224ページ)

    知識を選択したい。

  • (私には)小難しかった。イヤ、良くわからんかった。

    表題の「ヴェニスの商人」の論説は面白く思えたがそのあとはほぼ聞き流れた(笑)
    オーディオブックでなければたぶん表題ですら無理であったろう。
    なぜ、Amazonで好評価なのかわからんかった。まぁ、読破できないような無知なものは評価すらできないが(笑)

    とにかく、軽く読んで眠くならない人は読んでみてください

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著者プロフィール

国際基督教大学客員教授、東京財団上席研究員
東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.d.)。イェール大学経済学部助教授、プリンストン大学客員準教授、ペンシルバニア大学客員教授、東京大学経済学部教授など歴任。2007年4月紫綬褒章を受章。

「2021年 『経済学の宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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