ヘルメスの音楽 (ちくま学芸文庫 あ 1-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.43
  • (6)
  • (11)
  • (26)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 151
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080080

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 坂本龍一「週刊本6 書物の地平線 本本堂未刊行図書目録」には、ちょっと違うタイトルが付されていたけど、この本の架空の出版計画が魅惑的に語られ。錆止めを塗らない鉄でできた本、さわると手に赤錆がつく、センサーで開くと音が鳴る、と。こちらの「ヘルメスの音楽」はもちろん、おとなしく紙で、一般的な単行本、後には文庫の形式で出されたものだけれど。本本堂〜を読んだら、ひさしぶりに読み返したくなった(リトゥルネッロ+p.67-136のみ再読)。詩的に紹介されるケージ、ヴェーベルン、ブーレーズ(「ル・マルトー・サン・メートル」!「プリ・スロン・プリ」!)に、わけもわからず、楽理的な素養もないのに、今よりも若いころ熱狂したことを思い出した。そしてそれは、いまも周期的に聴きたくなるくらい、自分の中に深く根を降ろしている。◆マラルメ的な<骰子一擲>が投げ上げる星座の煌めきに初めて眩暈をおぼえたのは(略)楽器群が冷たい閃光を放つ音の飛沫をイデュメアの夜の虚空に撒き散らしていくのを聴いたときp.118◆このような虚の構造のすべてを、我々は<プリ・スロン・プリ>において見出すのだった----夜の虚空にあってなお光彩陸離たる戯れを見せながら、やがて避けがたい<死>の方に向かって引き寄せられていくその音楽の中にp.122

  • 私が持っているのは文庫ではない方だが、なかったので。
    何と言ってもタイトルが「読みたい」と思わせる本。
    全2作(『構造と力』『逃走論』)と比べて読みやすい。

  • 所詮はドゥールズの二番煎じ

  • 「ニュー・アカデミズム」の旗手として一世を風靡した著者による、芸術、とくに音楽についてのエッセイを収録しています。

    たびたび言及されているのは、やはりドゥルーズ=ガタリの議論です。著者は、「欲望する機械」を下敷きにしつつ、「私的体験のトポス」からできるだけ遠く離れ、「メタリックな音楽」を求めています。そのことは同時に、印象批評を超える批評言語をつくり出す試みでもあるはずです。ただ、現在から見ると、著者の議論のスタイルは1980年代という時代を感じさせるものであることは否定できません。

    音楽以外のものをあつかった文章には、フェルメールおよびフランシス・ベーコンを論じたエッセイが収録されています。ベーコンにかんしては、ドゥルーズも『フランシス・ベーコン―感覚の論理学』の一書を著しており、当然著者の議論にもその影響を見ることができるのですが、本書における著者の議論は「意味から強度へ」というスローガンにそった、明快でやや図式的な解釈にとどまっているように感じました。

  • p.1992/6/25

  • [ 内容 ]
    〈交通〉の神ヘルメスの名のもとに、音楽や絵画をめぐりながら、〈意味〉と〈情念〉の罠をくぐり抜け、〈外〉へと軽やかに〈逃走〉する、20世紀末の思考の実験。

    [ 目次 ]
    リトゥルネッロ―〈ソン・メタリック〉の消息
    戦争―ヘルメスの遊戯としての
    シューマンを弾くバルト
    最後のピアニスト―マウリツィオ・ポリーニを聴く
    偉大なるもぐらの思い出―グレン・グールドを聴く
    無声で呟かれる〈死〉―マラルメ/ブーレーズ/デリダを〈聴く〉
    キノコの音楽―ジョン・ケージを聴く
    少女になった少年になった少女の話
    デルヴォー―あらゆる終りのあと永遠の黄昏の中にたたずむ
    フェルメール 光の充溢
    F・Bの肖像のための未完のエキス

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 音楽を主に取り扱っている。
    シンセサイザーってものが新しくて歴史のないものって指摘とか、ポリーニやグールドへの言及は、俺も感じていたことだったので、やっぱりそう思うよねと。

  • 〈交通〉の神ヘルメスの名のもとに、音楽や絵画をめぐりながら、〈意味〉と〈情念〉の罠をくぐり抜け、〈外〉へと軽やかに〈逃走〉する、20世紀末の思考の実験。

  • いささかナルシシズムに陥っているような印象がある。雰囲気は良いのだが・・・

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

浅田彰(あさだ・あきら)批評家、経済学者、京都造形芸術大学大学院学術研究センター所長。1957年兵庫県生まれ。著書に『構造と力』、『逃走論』、『ヘルメスの音楽』、『映画の世紀末』他、共著に『天使が通る』(島田雅彦氏)、『ゴダールの肖像』(松浦寿輝氏)、『憂国呆談』(田中康夫氏)他、対談集に『「歴史の終わり」を超えて』他がある。

「2019年 『柄谷行人浅田彰全対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浅田彰の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×