- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480080127
作品紹介・あらすじ
「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへばしのぶることのよわりもぞする」の歌に代表されるように、式子内親王の作品には、鬱と激情の交錯する、特異な審美性にあふれた作品が多い。その個性的な詠嘆の底には、どのような憂鬱の生涯がひろがり、いかなる激情にあやなされた思慕があったのか。-歌と生涯を辿りつつ、沈鬱と激情の歌人、式子内親王の内面に鋭く迫る。
感想・レビュー・書評
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歌人、馬場あき子さんの若き日の傑作評伝。昔の文庫版の解説で、野口武彦さんが「なんでもよい、過去の文学作品についてものを書く。だれでもよいその作者の内奥に肉薄することに熱中する。そしてその熱中のあまり、自己と対象がいつしか一つに溶解してしまうというような仕事ができる筆者はしあわせである。一生にひとりでもよい、そのような対象と邂逅できるということは、何かの恩寵のはたらきであるかもしれない。」たたえていらっしゃったことが懐かしい。そんな作品にであえることは、それこそ、恩寵というべきだろう。
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藤原定家と並んで新古今を代表する歌人、式子内親王。彼女は怪物、後白河帝の第三皇女として生まれている。同腹の兄、以仁も長い不遇の果てに挙兵し惨殺された。守覚もまた幼少の身にして法親王として、帝位からは早々と遠ざけられた。伝記的には、きわめて薄幸の皇女だったようだ。定家をはじめ、恋の相手にも生涯恵まれなかったのかも知れない。歌人、馬場あき子の分析は大胆にして、切れ味は鋭い。例えば、式子の歌「時鳥そのかみやまの旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ」が、千載集の選に漏れながら、千載集のいかなる歌よりも優れていると喝破するのだ。
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古典に興味を持ちはじめた頃に読んだ本。
エッセイというよりはやや硬めの内容だが、読み応えあり。
式子内親王と藤原定家や和泉式部との考察が面白い。