- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480080653
作品紹介・あらすじ
日本からアメリカへ、さらに水俣・不知火海へ-。自身の学問の途上で出会った柳田国男。その著作を克明にたどりつつ著者が開眼した「柳田国男論」を、国際的視点に立ち、近代化論および社会変動論を骨格として論じる。科学技術と環境、差別など、われわれを取り巻く現代の諸問題とのかかわりにおいて、柳田学を積極的に評価し、発展させたユニークで刺激的な力作。
感想・レビュー・書評
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柳田國男の研究を「社会変動論」として読み、その研究の多様な要素を研究した鶴見の諸論文をまとめた一冊である。
収録論文の各々の間には特に一貫性がないが、一定した視座としてサイードの指摘したようなオリエンタリズムに、社会に関する諸研究が陥ってしまいかねないということに批判を与えている。
そして、柳田が日本固有の学問として柳田民俗学を打ち出したことを鶴見が評価していることはもちろん、彼女はその現代的意味をつねに問うている。
近代化の捉え方に対する批判的な視座は、あまり掘り下げられていないものの、柳田のややもすれば一貫性がない多様な概念を色々な切り口に結びつけて考えようとしているのは面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
友人が持っていた、とある資格試験の過去問題集からのリファレンスw。青年期までを東京と関西のデュアルライフで過ごしたというクニョハンこと柳田国男の社会変動論を分析していく。公害問題に敢然と立ち向かった田中正造の例にも見られるよう、よそ者・あるいは本書でいう流れ者が地域を支える力へ変容して行く基盤として必要なものは何か、改めて考えさせられる一冊です。おりしも那覇を訪れる機会に恵まれ、同市内の労働層は他府県からの流入者が多い一方、沖縄からの流出層は東京志向聞きノマドからネイティブへあるいはネイティブからノマドへ、今後の労働のあり方と結びつけて読んでしまったかもしれません。