機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫 ケ 1-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (564ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480082176

作品紹介・あらすじ

あらゆる生物、そして人間とその社会の現象は、上位のレベルから見れば「部分」であり、同時に下位のレベルに対しては「全体」であるという両面性をもっている。ケストラーは、これを『ホロン』と命名した。さて人間に目をやると、さまざまなレベルの『ホロン』からなる階層秩序が不安定で、欠陥を伴っているのはなぜだろうか。それは進化によるものではないのか。こうして、すべてを部分に還元する正統進化論の還元主義ではとらえられない、人間の創造性と病理が根源から解き明かされる。心理学、生物学、進化論のほか、人文・自然科学の豊富な知見をふまえた、現代の危機の診断書。

感想・レビュー・書評

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  • 偶然、近くのブックオフにて見つけた。Amazonでは中古でもべらぼうな値段がついている。何年か前から探していて、実物を見たのは初めて。1995年の第1刷である。
    脳の中の幽霊というベストセラーの元になったとされる本で、脳の中の〜が出たときから既に絶版だったのか、手に入らなかった。セレンディピティとは違うだろうが、自分から足繁く本屋に通わないとダメである。
    さて、書評であるが、手に入れた興奮で、積読状態である。じっくりと読みたい。

  • 第一部
    行動心理学者が考える「人間とは、与えられた刺激に対し、特定の反応を返すだけの器にすぎない(複雑に見える行動も、分解すれば、単純な刺激と反応の連鎖にすぎない)」という”人間機械説”とも言うべき主張に対し、「人間はそんなに単純じゃない」と著者が反論する。
    行動心理学者は人間の思考回路は直線的な反応の連鎖だと考えるが、実際には、”反応”までに、相手との関係、立場、文化、記憶、経験などを参照し、それをフィードバックさせたりすることで書き直したり打ち消したり修正したりするなど、非常に階層的で複雑なものであると著者は考えてる(実験データや研究などをもとに)。
    ※階層的=全体を構成する中間的な部品を一つずつ構築していき、最終的に一つに統合して全体とするシステム(直線的=最初から全体を作っていくやり方、つまり部品に分解しておらず、セーブがきかないので、一度失敗したり外から妨害されたりするとまた一からやり直さなくてはいけない=何度も繰り返していれば階層的なものよりも処理に時間がかかる)
    もう少し具体的に著者の考える人間像を言うと、人間は、外部からの刺激(入力)に対し、規則(プログラム)に従って無意識的・機械的に演算する部分(生化学的な反応や肉体的な動き、常識的な思考など)と、意識的に戦略立てて演算する部分とがあるらしい。
    ※この規則は、個人内でのみ働くもので、かつ歴史的・時間的な変化を受けるもの
    このように、人間の活動の大部分は自動的な機械のような動きに過ぎないかもしれない。だが、厳格なルールのあるチェスの戦略や進行がほぼ無限に存在するように、人間の活動の独自性も枯渇することはない、つまりルールに縛られていながらも不確定な部分は多く、その分「自由」であると著者は考えている。(腕の良いピアニストは、「月の光を弾け」という特定の指示を受けたら(入力されたら)楽譜通り弾けるが、そこで楽譜以上にうやうやしく弾いたり、テンポ良く弾いたりすることだってできる=特定の刺激に対して、複数の出力を弾き出し、その中から戦略的に選択している=単一の入力に対して出力は可変的で自由)
    ーーー読者が思ったことーーー
    ピアニストの例を出して行動の選択の自由さを示しているが、その時の弾き方の選択肢の部分は、外部からの刺激に対して個体内で発生した気分で選択しているかもしれない。そうなると、それは元を正せば外部からの重層的な刺激に対して、総合的な演算結果を弾き出したに過ぎす、結局、選択の自由の無い機械的な演算装置に過ぎないことを表しているのではないか。つまり、ピアニストの例では、人の行為を決定するのは、単一の刺激ではなく、複数の重層的な刺激であることしか示すことができず、人間の弾き出す行動に選択の自由があるということの証明にはなっていないのではないか。
    人間は、個体内では規則(プログラム)に従うだけの機械(演算装置)かもしれないが、その規則自体は環境や遺伝的特性によって時間が経つにつれ組み替えられ、その人独自のものになるのかもしれない。
    つまり、人間という種は、「外部の入力に対して個体内のプログラムに従う」というルールと「そのプログラムは時間が経つにつれ環境や経験によって組み替えられる」というルール(と、生化学的なプログラムとプログラムの書き換えられ方双方の遺伝的な少しの違い)という、2つの厳格なルールに沿って行動する機械なのかもしれない(=学習機能のある演算装置)。
    なので、根本的なルール自体は(遺伝的な誤差を除いて)同じだけど、その上で展開される個体ごとのプログラムによって、「個性」というものは生まれているのかもしれない
    ーーーーーー

  • 絶版なのね…。kindle版で出ないかな。

  • ・・・難しすぎて読む気になんなかった・・・

    でもAHA反応とか、現代で話題になってるものもあって、部分的にはおもしろかった。

  • なかなか飛んでいてよかった

  • また生身のことを語る。此の頃網膜に水が溜まり黄色の残像が取れなくなっている。切ないけど疣やたんこぶの様なものだと思い込むことにして、良性のものとして人生に位置付けるようにする。・・・こんなこと書き始めるときりが無い。最初にこの「機械の中の幽霊」を手にしたのは1979年ごろだと思うが、あの頃受けた感興が今改めて読み返すとまったくぶれている事に気付かされる。幾多のフィルターと私自身のロマンティックが当時は多重のゴカイによって全く別のいい物を創っていたから私は幸せだった。私はその後まもなく忙殺され始め、1983年のケストラーの自死には20年も気付かなかった。今になって、ケストラーがオートマトンと言っていた実態感が本棚の隅から時折香ってくる。よもや自分の容れ物がこんな風になるとは・・・彼もヤハリぽんこつを持て余して人生を愛着し続けていたのだと、漸く此の頃ヒシヒシと解ってきた。

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著者プロフィール

Arthur Koestler 1905年ブダペスト生まれ。ウィーン工科大学で工学を学ぶが、学業を捨てシオニズム運動に参加。その後、才筆を認められてドイツの新聞社で活躍、北極探険にも加わる。共産党に入り解雇。コミンテルンの援助でソ連各地を旅行。スペイン内戦中にフランコ軍に捕えられ死刑宣告、捕虜交換で釈放。1948年イギリスに帰化。作家として、また科学ライターとして生命科学界で活躍。1983年、白血病とパーキンソン病から自殺を決意、妻も「あなたのいない人生など考えられない」と共に自殺。訳書等に 『偶然の本質』(村上陽一郎訳、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2006年)、『サンバガエルの謎』(石田 敏子訳、岩波書店(岩波現代文庫)、2002年)、『機械の中の幽霊』(日高敏隆・長野敬共訳、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、1995年)、『ユダヤ人とは誰か』(宇野正美 訳、三交社、1990年)、『サンバガエルの謎 新版』(石田敏子訳、サイマル出版会、1984年)、『還元主義を超えて』(池田善昭監訳、工作舎、1984年)、『機械の中の幽霊—現代の狂気と人類の危機 新装版』(日高敏隆・長野敬 共訳、ぺりかん社、1984年)、『ホロン革命』(田中三彦・吉岡佳子共訳、工作舎、1983年)、『偶然の本質』(村上陽一郎 訳、蒼樹書房、1974年)、『創造活動の理論(上・下)』(大久保直幹・松本俊・中山末喜・吉村鎮夫 共訳、ラティス、1966・1967年。(抄)→グロリアインターナショナル、1971年)、『ヨハネス・ケプラー—近代宇宙観の夜明け(現代の科学43)』(小尾信弥・木村博訳、河出書房新社、1971・1977年、未訳『夢遊病者たち』の一部、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2008年07月)、『コペルニクス』(木村寿訳、すぐ書房、1973・1977年、未訳『夢遊病者たち』の一部)、『絞首刑』(西村克彦訳、青林書院、1959年)、『現代の挑戦』(井本威夫訳、荒地出版社、1958年)、『神は躓く』(共著、村上芳雄訳、ぺりかん社、1969年)、『行者と人民委員〔エンゼル・ブックス〕』(大野木哲郎訳、国際文化研究所、1957年)、『真昼の暗黒』(岡本成蹊訳、筑摩書房、1950年。庄野満雄訳、鳳映社、1958年。角川文庫、1960年、中島賢二訳、解説=岡田久雄、岩波文庫、2009年)、『スペインの遺書』(平田次三郎訳、ダヴィッド社、1955年。〔叢書名著の復興2〕ぺりかん社、1966年。新泉社、1974・1983年)があり、イギリス時代から晩年までを描くものとして『ふだん着のアーサー・ケストラー』(ジョージ・ミケシュ著・小野寺健 訳、晶文社(晶文社セレクション)、1986年)がある。また、雑誌の特集では『現代思想 特集=ケストラー 現代科学への挑発 vol.11-6』(青土社、1983年6月)がある。

「1993年 『ケストラー自伝 目に見えぬ文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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