重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480082428

作品紹介・あらすじ

「重力」に似たものから、どうして免れればよいのか。-ただ「愚寵」によって、である。「恩寵は満たすものである。だが、恩寵をむかえ入れる真空のあるところにしかはって行けない」「そのまえに、すべてをもぎ取られることが必要である。何かしら絶望的なことが生じなければならない」。真空状態にまで、すべてをはぎ取られて神を待つ。苛烈な自己無化への志意に貫かれた独自の思索と、自らに妥協をゆるさぬ実践行為で知られる著者が、1940年から42年、大戦下に流浪の地マルセイユで書きとめた断想集。死後、ノート(カイエ)の形で残されていた思索群を、G・ティボンが編集して世に問い、大反響を巻き起こしたヴェイユの処女作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 台北にいる間、ずっと読んでた。
    表通りから一本入った滞在先のアパートの部屋で、ずっと読んでた。
    台北では、現地人のような凡庸さで生活をした。あさは何も食べず、昼と夜は屋台で適当に済ませた。タクシードライバーは、俺に観光地を勧めたが、打ち解けると、中国人ばかりでうんざりするから観光地へ行かないのは正解だ、と言った。日本はもちろん、冬に行ったオランダにも中国人がたくさんいた。中国が世界を牛耳るまであと何年くらいだろう、と、タクシードライバーに言うと、早くて十年と見てると彼は言った。台北の政治家たちも、外国人に対する規制を緩める気満々なのだそう。中国人が落とす金に期待してるのは、どこも一緒。
    世界がどうなろうが知ったこっちゃない。本音を言うと、心の底の底の底では、自分がどうなろうが知ったこっちゃない。俺は阿呆だから、毎日毎日、欲求と達成の間をだらだら歩いていれば大満足で、結婚という名の墓場に入る気はさらさらないし、将来何を仕出かすか判ったもんじゃない子のマネージャーになる気もない。阿呆じゃない男たちは、夫になり、子を育て、妻を愛し、妻を裏切り、妻に裏切られ、それでも死んだら同じ墓に入る【家族】という制度に順応し、ヴェイユなんて読まず、投資信託を勉強し、保険の見直しなどをしながら、日々を過ごしている。正直、大尊敬だ。俺には絶対に出来ない。彼らが地元の同窓会に出席したがる理由が、ぼんやりとだが見えてくる。墓場に届く青春の気配に、誰が抗える?
    人生、最高。

  • 主人が奴隷を作り奴隷が主人を作るという意味において、ヴェイユはきっと正しさの奴隷だったのだろうと思う。ここまで透徹している人間が生き易いわけはないけれど、この本は私の生き易さの指標になると同時に生きにくさの補強にもなったと思う。

  • 人に対して「透明感」という言葉を使うのはまず好意的な感情からだと思う。僕もシモーヌ・ヴェイユという人の深く澄まされた知性に、憧れや好意を感じる。
    しかしそれにしても、いくらなんでもこの人の透明感は、度が過ぎている。水清ければ魚棲まず、ではないが、突き詰められた「聖」性は汚く図太く生きる生命力の対極のように思え、悲壮感さえ覚える。

    関連して、ヴェイユの教え子の書いた本を読んだ。師への親愛の情に溢れた本だった。この人が周囲の人に理解され、愛されて生きたのだと思うと、何か救われたような気持ちになる。そんなことも含め、ヴェイユという人は僕に希望や勇気をくれる存在だ。

  • 凄まじい。彼女がノートに書き綴った箴言の数々を死後編纂して出版された本書は、どれも信仰への確信と悲痛なまでに苦しみを受け入れようとする決意に満ちている。その余りにも高尚なストイックさに最初は距離を感じたが、著者の人生を知って納得がいった。ユダヤ人の家系に生まれ哲学科の教師になるも、病弱で偏頭痛に悩まされる自己を顧みず農場や工場で働き出す。貧民の救済のために革命運動に身を投じ、世界大戦への抗議として行ったハンストで餓死するという生涯。逃れられない心身の痛み、そんな痛みと向き合う時に本書は最高の鎮静剤となる。

  • 現実とは、ザラザラした手触りのもの。

  • 幸福と相関関係をなす不幸について思考し続けたストイックな女性哲学者の断片的ノート。「苦しみがなくなるようにとか、苦しみが少なくなるようにとか求めないこと。そうではなく苦しみによって損なわれないようにと求めること。」きっと辛いときが一番の近道。

  • 一周(よりちょっと手前くらい)すると辿り着く本。

    次のステップに辿り着く(一周する)為には、是非ガウタマ・シッダールタ(ブッダ)とのセットでどうぞ。

  • はまり込んだ☆

  • ギュスタヴ・ティボンがヴェイユのカイエを編集して出したもの。ヴェイユの(一応)処女作品。訳は田辺保。
    鏤められた真理を鋭くついた言葉達。箴言集のようなもの。

  • 一文一文が私にとって名文集。ゆっくりじっくり読んでいきたい。

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著者プロフィール

(Simone Weil)
1909年、パリに生まれ、43年、英・アシュフォードで没する。ユダヤ系フランス人の哲学者・神秘家。アランに学び、高等師範学校卒業後、高等学校(リセ)の哲学教師として働く一方、労働運動に深く関与しその省察を著す。二度転任。34─35年、「個人的な研究休暇」と称した一女工として工場で働く「工場生活の経験」をする。三度目の転任。36年、スペイン市民戦争に参加し炊事場で火傷を負う。40─42年、マルセイユ滞在中に夥しい草稿を著す。42年、家族とともにニューヨークに渡るものの単独でロンドンに潜航。43年、「自由フランス」のための文書『根をもつこと』を執筆中に自室で倒れ、肺結核を併発。サナトリウムに入院するも十分な栄養をとらずに死去。47年、ギュスターヴ・ティボンによって11冊のノートから編纂された『重力と恩寵』がベストセラーになる。ヴェイユの魂に心酔したアルベール・カミュの編集により、49年からガリマール社の希望叢書として次々に著作が出版される。

「2011年 『前キリスト教的直観 甦るギリシア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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