- Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480082619
作品紹介・あらすじ
ヨーロッパ古代世界に最大の版図をもち、多年隆盛を誇ったローマ帝国はなぜ滅びたのか。この「消えることのない、永遠の問い」に対する不朽の解答-18世紀イギリスの歴史家E・ギボンの名筆になる大歴史書の完訳。五賢帝時代のローマ帝国の版図、軍事力、繁栄ぶり、そして帝国衰亡の兆しとなる愚帝・暴帝コモンドゥス、カラカラ、ドミティアヌス、エラガバルスの登場をつくる。
感想・レビュー・書評
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18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボンによって,古代ローマ帝国の衰亡を記述した歴史書の古典大作である。現在となっては学術書としての権威は衰えたものの,読み物として純粋に楽しめるようになっている。全10巻。
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本業の気晴らしに訳し始めた、とあとがきに書かれていますが、硬質で、簡潔な文章は読みやすく心地よいです。出典がいちいち書かれていて親切ですし、ギボンよりも後の研究で分かったことも解説されています。
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全集を購入しやっと第1巻を読む時間ができました。ローマ帝国史に興味がある人はいつか手にとらないといけない本の1つだと思うのですが、読後感としては大変満足しています。日本語訳の中には難解な単語が使われている時もそれなりにありますが、全体的に言えば、18世紀に書かれた本とは思えないほど読みやすかったです(注釈も非常に役に立ちました)。18世紀に生きたギボンも、基本的には千数百年前の古代ローマ時代やその後の歴史家の記述を参考にしながらローマ史を書き進めているわけで、その意味では現代の我々がタキトゥスなどを参照しているのと時間軸的にあまり変わらないという意味でも、200年以上前に書かれた本という古臭さは全然ありませんでした。
何より共感したのは、ギボン自身の皮肉とも言える表現を多数織り交ぜたローマ帝国評。無味乾燥な歴史書ではなくギボンのレンズを通してみたローマ帝国評は非常に人間臭くて面白かったです。また本の構成も見事だと思います。良いタイミングでペルシアやゲルマン人などいわゆるローマ帝国の敵に関する記述も織り交ぜていて、しかもその説明内容がきわめて的確。長すぎでもなく短すぎでもなく、またややこしいゲルマン民族の種類なども、ギボン自身、民族の中身は切った貼ったでぐちゃぐちゃになっているのであまり真面目に覚えなくてもいい、というように割り切っていて、いち(素人)読者としては助かります。
ローマ史といえば、日本では塩野七生さんの本が有名です(専門家以外の普通の社会人も読めるという意味で)。私はまだギボンの本を1冊しか読んでいませんが、個人的な印象としては、塩野七生氏はミクロな人間像の分析(カエサルやアウグストゥスなど個々人の人間像を想像も含めて深く記述する)が得意な一方で、ギボンはマクロ的かつ俯瞰的な歴史記述を流れるように書くことが非常にうまい印象を持ちました。 -
2022/12/06 読了 ★★★
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帝政以降のローマ帝国の衰亡の歴史がテーマ。ローマ帝国は実質は軍が支配していて、皇帝には権力がなく必ず最後には殺される。統治のためには何が必要なのかを考えさせられる。統治には権力が必要であり、その権力には正当性が必須ということ。
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歴代皇帝の在位期間を縦糸に、キリスト教の普及を横糸に、地中海沿岸地域の歴史が述べらている。
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読み応えのある本である。
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苦心の訳だというとがとても伝わってくるが、残念な事に私はなじめない。ローマ帝国衰亡史は、その第1巻をギボンが一気に書き上げたと言われているのに、一気に読ませる迫力がどこか無いような気がする。読者は無責任で心無い。
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ローマが最も繁栄した五賢帝時代、すでに衰退の原因が現れはじめていた。
上り坂を登りきってしまうと後は下り坂になってしまうように、繁栄の頂点に達し、最大の版図を誇った帝国も制度が疲弊し、外敵も力を蓄えたために帝国の基盤そのものが緩んできてしまった。
慣れてしまうとギボンの語りのテンポが心地良く読み進められる。
注釈も巻末になく、ページ左にあるため参照しやすい。
あとがきにあるように一度目の読書では注釈は気にせず、流れをつかむように本文だけ読んでもいいかもしれない。
惜しむらくは難読字があるため辞書をひかなければならないこと。
ローマだけでなく、外患であるアケメネス朝ペルシアやゲルマン緒族についても詳しく述べられており興味深く読めた。 -
書いた人がいつの人なのか知らされずに読んだら現代の本だと思っちゃいそうな書きぶりです。実際はもう300年近い時間が経過してるわけで…
強大なローマがなんでヘタレイタリアになっちゃったのか気になる人にはお勧め -
ローマ帝国の発展から滅亡までを綴ったE.ギボンの名作の第1巻。
この本で注目すべきは、「皇帝×軍部×元老院」という3すくみの変化を追う事であろう。教科書だけでの勉強だと皇帝の独裁だとかしか書いていなかったりするから、世界史を大して勉強していない自分にとっては斬新だった。「昭和史 1926-1945」という本で考察されている、太平洋戦争中の日本での「天皇×軍部×内閣」のように様々な裏工作や活動がある。
この2つで異なっているのは、皇帝と天皇の権威の差である。皇帝の権力は、最初は絶大で元老院・軍部を抑えていたが、途中から軍部を抑えるのが困難になり、皇帝を暗殺して首謀者自らが皇帝となったり、元老院が働きかけて、暴政を行う皇帝への対抗馬を出したり…。一方、太平洋戦争中の日本での軍部・内閣ともに(上であげた本を完全に正しいと仮定して)、天皇を倒すという意識は全くない。
思うに、天皇・皇帝という地位の意味の違いによるのではないだろうか?
ローマ帝国の皇帝は「誰がなるか」に意味があった。一方、日本の天皇は「地位」に意味があった。
ローマ帝国皇帝は、誰でもなることが可能であった。実際、最下層民から皇帝に上がりつめることもざらにあったようだ。誰がなるかは、実力が決めると言っても良い。そんな中で、皇帝に求められたものが常に変わっていったのである。ある時は頻繁に領土に侵攻してくる蛮族の退治であったり、またある時は暴政を布く前皇帝であったり。そして、その求められているものを決定したのが、「皇帝×軍部×元老院」の3すくみの中で、その時点で最も強いものだったのだ。すなわち、3すくみの中で最も強い者がその時点で必要とするものを達成するのに最も必要な皇帝を選んだのだ(もちろん一番強いのが皇帝であれば、そのとき最も必要な皇帝は彼自身となる)。
一方、天皇は近親者による世襲制が前提とされているため、誰がなるかはほとんど決まっていた(正確に言えば、天皇の子として生まれれば、必ず次代天皇候補になる)。そのようなシステムであるから、彼の子供たちは自然と天皇になるべく教育を受ける。さらにそんなシステムを前提とするべしという教育を一般市民は受けているのだから、それを崩そうとする人間はまずいない。
以上から、天皇と皇帝には差ができるのではないか。
ちなみにこの本、10巻まであるらしい。しかも1巻500ページくらいある笑頑張って読もう。 -
積読状態
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リベラル・アーツ ※2巻以降は割愛
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この頃の絶対王政、封建制度とシビリアン・コントロールの流れはどうだったのでしょうか?
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『死の棘』のリハビリで、読んでて楽しい本を。というわけで5年ぶりくらいの再読です。
この間、ギリシア・ローマの本をいくつか読んだので、演出的に使われるそれらへの言及も楽しめます。
歴史ものというと、一時代や個人にフォーカスしたものが多いですが、本書の対象はあの偉大なるローマ。絶頂期から滅亡までを記述していきます。
時代を画した賢帝も暴帝も、舞台から降りれば何事も無かったかのように歴史は続いていく。何も変わらない繰り返しのようでいて、振り返れば確実に帝国は衰微している。人智を超えた時間というものへの畏れを抱かせますね。
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全10巻、歴史書が好きなわけじゃないがギボンはいい。
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とはいえ、塩野本が面白いのは結局はローマの歴史が面白いからなわけで。こちらは20年にわたるある貴族の思いが書かせた大作。それにふさわしく、翻訳も20年近い年月をかけ、3人の訳者の人生をかけたリレーによって完成されている。