- Amazon.co.jp ・本 (675ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480083296
作品紹介・あらすじ
いまだ批評ではないが、しかしその萠芽を孕んでいるなんらかのイメージ-ひとつの面影、ひとつの名、ひとつの瞬間、ある表情、ある匂い、ある手触り、歩行中のちょっとした閃き、記憶に蘇ってきた風景の、また忘却を免れた夢の断片、ある作品のほんの一行、映画の一シーン、成就されることがなかった希望など。現実と幻想のあいだに、経験と夢のはざまに、現在と過去の閾に漂っている想いの断片が思考の運動を開始させる。私的な記憶が歴史の記憶とせめぎあいつつ出会う場所へ、私たちをいざなうベンヤミンの新編・新訳のアンソロジー、第三集完結編。
感想・レビュー・書評
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-2002年11月―
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暖炉の中に食べ物を調理する作り付けの棚のような場所があって、幼少の砌にそこで誰かが焼き林檎を作ってくれたときの香りへの言及が、文字通り甘酸っぱい記憶というふうで好ましい。皆、自分の紅茶マドレーヌを持ってる。
断章のコラージュ。ベンヤミンにとってはこれこそがとっておきの遊びだったのかもしれない。いつまでもこうして戯れていられる。読む側も。 -
都市の肖像(モスクワ)
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ドイツのことが書いてある。ただベルリンのことなので記憶が定かではない。
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初めてのベンヤミンは平出隆の書物に導かれ(「ベルリンの幼年時代」にかられて)この記憶のアンソロジーを手にする。ベンヤミンのまなざしは事物の細部と裏側を洞察する。記憶の描写は甘いノスタルジーに陥らず、かつ理論に偏ることなく、都市の集合体を社会と経済をも影の中に写し出す。過去へのまなざしは未来への想起に繋がる。月光に照らされた洗面器に世界の反転を見るまなざしは反復しない。この一回性こそが記憶の根源なのかもしれない。これら記憶の断片のコラージュが歴史なのかもしれない。無意識を意識する、汚れなき魂に想いが募る。
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《目次》
アゲシラウス・サンタンデル
一方通行路
〔都市の肖像〕
ナポリ
モスクワ
ヴァイマル
パリ──鏡の中の都市
マルセイユ
サン・ジミニャーノ
北方の海
ドイツの人びと
1900年頃のベルリンの幼年時代 -
ベンヤミン・コレクションのうち、『一方通行路』や『1900年代のベルリンの幼年時代』などを収めた編。第1巻に収められたいわゆる学術論文とは違い、都市の風景、幼年時代の諸イメージを、すぐれた言葉遣いで表現し、それらの布置状況を炙り出さんとする意欲的なエッセイ集。また、従来ベンヤミンの思想的背景に言及する際は1920年代のヴァイマル文化が参照されてきたが、幼年期・青年期のベンヤミンの心象風景に肉薄するためには、1900年代から1910年代のドイツ帝国末期の諸状況を研究することも必要なのではないか、との思いを抱いた。
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《目次》
アゲシラウス・サンタンデル
一方通行路
〔都市の肖像〕
ナポリ
モスクワ
ヴァイマル
パリ──鏡の中の都市
マルセイユ
サン・ジミニャーノ
北方の海
ドイツの人びと
1900年頃のベルリンの幼年時代