「ヒュ-マニズム」について (ちくま学芸文庫 ハ 4-3)

  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480083524

作品紹介・あらすじ

『存在と時間』(1927年)において、世界内存在する人間の実存を深く掘り下げ、これを現象学的解釈学的に精緻に分析して、哲学界に深刻な衝撃を与えたハイデッガー。そのハイデッガーが、第二次世界大戦を挟む長い沈黙を破り、書簡体の形式で世に問うたのが、この「『ヒューマニズム』について」(1947年)だった。いわゆる人間中心主義の「ヒューマニズム」を批判しながら「存在の思索」を説くこの小さな本には、後期ハイデッガーの思想が凝縮した形で表明されている。「故郷喪失」の現代の「世界の運命」のなかで、私たちは存在の「開けた明るみ」の場のうちに「住む」ことを学び直さねばならない、と。

感想・レビュー・書評

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  •  ジャン・ボーフレというフランスの哲学者から寄せられた質問に応じ、それに答え1947年に公開書簡の形で出版されたもの。ハイデッガーの「後期」の思想を示すものと見なされているようだ。
    「ヒューマニズム」なるものの意義を問われ、ハイデッガーはその概念は彼の言う「形而上学」に則ったものに過ぎず、真の思索である「存在へと身を開き-そこへと出で立つあり方」という思考から目をそらしてしまうものとして、問い自体の虚しさを訴える。
     一つの絶対的信念を貫いて他を排撃し続けるハイデッガーの姿は、ちょっと原理的信仰者じみた頑迷さにも見えた。が、先に読んで触れたように、ハイデッガーのもとを訪れた日本の若い哲学者九鬼周造を常識的な歓待をもって迎えたという事実から考えて、じっさいのハイデッガーはそんなに偏屈な男だったわけではないらしい。彼なりの熟考を重ねた末に到達した信念が、あまりにも強靱に・整然と彼の思考世界を支配したのだった。
     私個人の好みとしては、「他者」へのまなざしをどこか欠いているように見えてしまうハイデッガー哲学は、私には最高の興味の対象とは言えないのだが、とにかく20世紀前半において最大級に重要な哲学であったことはやはり間違いないので、もう少しいろいろ読んでみて、その深さを測ってみたいと思っている。

  • 本書は、後期ハイデガー思想の入門書として紹介されることも多いですが、今回再読して思ったのは、この本では、後期思想の核の部分にはなかなかたどり着かないだろうなあということでした。
    たしかに、Ereignisということはいわれているし、GeschickやらLichtungやらが後期思想の文脈で言われているんですが、それらはほのめかされている程度で、どうも中途半端な印象。後期思想を知っているひとはその再確認として読むでしょうけど、後期思想を知らないひとはなんのこっちゃわからず、呪文のように唱えるだけでおしまいでしょう。
    ハイデガーの後期思想はなかなかおもしろいんですが、そのおもしろさは、この本では伝わりにくいかなあ。【2019年7月19日読了】

  • 哲学

  • 原発のこと、科学技術のこと、70年代に唯一指摘してたのはハイデッガーだったとatプラスに誰か書いてた

  • 『存在と時間』に代表される「存在への問い」を、従来の哲学言語ではなくハイデガー独自の省察に基づいた新たな表現によって捉え直し、「存在への問い」を更に深化させていこうとする後期ハイデガーの思索が端的に示されている。独自のターミノロジーによってなかなか理解し難い著作ではあるが、「理性」に人間の尊厳を見出そうとするような「ヒューマニズム」という西洋の伝統的思考を批判し、「存在の真理」を問うことこそが、真の「ヒューマニズム」へとつながるというハイデガーの逆説的な主張は、それに賛同するかどうかはともかくとして、西洋の伝統的思考=西洋哲学を学んできた者にとって、それを内在的に突き抜けていく一つの道を示してくれているといえる。その点で、この著作の触発的意義はまだまだ消えていないだろう。

  • ジャン・ボーフレの三つの問いへの回答を試みた書簡。倫理学への言及や詩、神的なものへの言及、さらに存在の運命などの全体的存在論へ至るまでの後期思想のエッセンスが散りばめられている。ただ渡邊さんの訳が…重い…。

  • ちゃんと正確に理解したかあまり自信が無いのですが…色々口ごたえしたくなる本でした。

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