忠誠と反逆 (ちくま学芸文庫 マ 13-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480083982

作品紹介・あらすじ

開国の時期における、自我の原則と所属する集団・制度への忠誠との相剋を描き、忠誠と反逆という概念を思想史的に位置づけた表題作のほか、幕藩体制の解体期から明治国家の完成に至る時代を対象とした思想史論を集大成。『古事記伝』のなかに、近代にいたる歴史意識の展開を探る「歴史意識の『古層』」を付す。

感想・レビュー・書評

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  • 日本における忠誠とは、一方的な従者からの献身的な奉仕を意味していた。
    主従関係は絶対的運命的だった。ここから、どんな暴君にも唯々諾々とその命に従う従者の盲目的な服従態度が生まれた。
    反面、従者にとって主従関係が絶対的であるがゆえに、主君を正しくしていかねばならないという執拗で激しい働きかけの態度も生まれたという鋭い逆説が指摘されている。
    忠誠と反逆の法制史から説き起こし、明治維新という転換期を中心に、忠誠と反逆の対象の移転と相克が考察されいる。

    他の章も、開国期における日本人の思想の変化が考察されている。各所に鋭い指摘があり読み応えがある。

    難しい書物だけれども、日本思想史を勉強している人なら一読を。

  • 2021.03 『世界の古典 必読の名作・傑作200冊』より
    http://naokis.doorblog.jp/archives/Koten_SatoMasaru4.html

  •  最近気になる丸山の著作。かなり難解な本書だが、その魅力に抗うことはできなかった。封建制から近代化へと至る道のりは数多くの試練を受けねばならず、そのまま現代につながるテーマになる。本書は明治維新についての著述だけでなく、思想一般・歴史一般についても述べられており、その考え方はいまでも有効と思われる(現代は問題に対して場当たり的で、歴史や思想から学ぶことが本当に少ない)
    ・日本の思想史において、言葉の変化、観念の意味変質が特に問題になる。外来思想の摂取を日本は多く行っており、そのときの思考パターンが強く影響する。思考パターンは一定の歴史的・社会的条件の下で生成されるものであって、どんな人間でも伝統的なパターンから自由ではない(主体の内側に入り込む)。まったく同じ思想的根拠から、正反対の行動が生まれる場合がある。
    ・「幕府」という政治=軍事機構の創出、これが東アジアから区別されるきっかけとなった。秦漢帝国以後の大陸は、儒教による文人官僚制支えられた統一帝国。室町~戦国時代は領主分国制であり、徳川幕藩体制がそれを凍結した。日本帝国は、無数の閉じた社会の障壁を取り払い、天皇制国家という一つの集合的エネルギーに切り替えたところに、形成の秘密がある。明治維新はその迅速さから陰謀論が唱えられる事が多いが、実際は維新後十数年の歴史的状況をみると様々な可能性をもっていた。
    ・大陸の忠誠は「契約」のようなドライさを含むが、日本では上位者への無条件な忠誠と捉えられる。しかし一方で、その絶対的な忠誠が「能動的に行動する=無限の忠誠行動」という可能性が含まれていた。このような封建的忠誠は、幕末の動乱における「行動主義」へとつながっていった。日本の「近代化」は封建的基盤を解体するとともに、その「反逆」のダイナミズムも減衰させていった(封建的忠誠と天皇制的忠誠は質的に異なる)。明治十年代には抵抗権の観念が定着したが、「中間層」はその自主性を活かしてこなかった。近代日本は封建的忠誠の何を引き継ぎ、何を引き継がなかったのか。

  • 【部分読了】
    「福沢・内村・岡倉:西欧化と知識人」、327-352頁.初出:「福沢諭吉・内村鑑三・岡倉天心集」解説(現代日本文学全集』第51巻、1958年)

    高澤先生の読書会2020年9月
    難しかった。読んでても気づくと何言ってるか分からなくなるし、読後、ピンとくるものも何か引っかかるものも得られなかった。
    丸山の文章を読むのはこれが初めてだし、福沢については中学の日本史に出てきて以来、内村についてはちゃんと勉強したことない、岡倉については博物館学で耳にしたくらい。

    10/2
    あとがき(一九九二年春)、469-483頁.
    解説(川崎修)、485-499頁.
    10/3
    「思想史の考え方について」、427-467頁.

  • 2018年5月12日紹介されました!

  • [ 内容 ]
    開国の時期における、自我の原則と所属する集団・制度への忠誠との相剋を描き、忠誠と反逆という概念を思想史的に位置づけた表題作のほか、幕藩体制の解体期から明治国家の完成に至る時代を対象とした思想史論を集大成。
    『古事記伝』のなかに、近代にいたる歴史意識の展開を探る「歴史意識の『古層』」を付す。

    [ 目次 ]
    忠誠と反逆
    幕末における視座の変革―佐久間象山の場合
    開国
    近代日本思想史における国家理性の問題
    日本思想史における問答体の系譜―中江兆民『三酔人経綸問答』の位置づけ
    福沢・岡倉・内村―西欧化と知識人
    歴史意識の「古層」
    思想史の考え方について―類型・範囲・対象

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  丸山眞男先生の本は、大学の法学部で、最初のころの政治学関係の講座の必読書。

     当時から政治学関係の本は、対象がひろすぎ、書き方ががむずかしすぎ、苦手意識がある。実は、今読んでも難しい。

     社会人経験を30年、政治家とつきあっても30年、それでもむずかしい政治学の本ってなんだろう。自分のアタマが悪いだけかな。

     この本は、池田信夫さんが、日本の古層、空気の議論をしていたときに推薦されていたので、購入。丸山眞男が文庫で読めるなんて、善い時代だなと思って。

     わかったこととよくわからなかったこと。

    (1)丸山先生が日本の歴史意識の古層をなし、執拗な持続低音をひびきつづけた思想要式は、「つぎつぎ」「なりゆく」「いきほひ」だそうだ。(p402)

     つぎつぎは、皇統一系とか、保守系の人がすきなように、次々とつながっていくことへのこだわりでなんとなく理解できる。なりゆきは、なるという自動詞的に生まれてくる、天がつくるのではなく、自らうまれてくるという古事記などの記述は天地創世神話としてはめずらしいということがわかった。でもなにか思想に関係するのか、よくわからない。いきほひについてはよくわからなかった。

     なんだ。大事なこと、全然わかってないな。これを勉強するためによんだのに。

    (2)幕末のときに中国由来の攘夷思想を乗り越える点で、朱子学が一種の諸国を共通する自然法概念を受け止める媒介になった。(p249)

     この論点は、おもしろいが、実はこの論文、先生の体調がすぐれなかったのか途中で終わっている。大家になると途中でおわった論文も文庫にのる。

    (3)日本の思想史のなかでは、どちらかといえば、松陰の行動的パトスと死をみることきするがごとに態度の方が魅力があります。それに対して、象山に代表されるような、異学や異文化との積極的接触をおそれない知性の勇気ー危機に臨んで心情的にラディカルであるよりも、ものごとを認識するうえでラディカルであろうとする態度は、比較的になじみがうすいのではないかと思います。(p161)

     丸山先生は本業が古事記までさかのぼる日本の政治思想史だったんですね。超国家主義の分析などで有名だとおもったけど、また、一つ賢くなりました。

  • 忠誠と反逆、古層の二つだけ頑張って読んだけれども、
    古文•漢文が原文で大量に出てきて、全然読めないです…
    高校の授業はこういう本を読むためにやっていたのか…⁈
    高校では助動詞とかその活用とかよりも、作品の内容を色々詳しくやって日本の歴史や文化を教えた方が為になるのじゃなかろうか。
    それだと試験が作れないとは思いますが。

    忠誠と反逆は、難しいけれども少し理解できました。
    司馬遼太郎の小説の世界が、こんな視点から考察できるのかーと面白かった。

    古層はそもそも日本の神話を読んでないので無理でした。
    そして漢文読めないです。

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