エッフェル塔試論 (ちくま学芸文庫 マ 15-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085412

作品紹介・あらすじ

古典的な「表象」の崩壊に代わって「イメージ」の出現という出来事が成立する時点において、恐らくエッフェル塔とは、西欧の表象空間に起きたこの地の竣工の日付をこの認識論的断層の上に重ね合わせることが可能であるように思える。エッフェル塔の伝記を辿ってゆくとき、こうした「近代」的な「イメージ」の生成過程と、それを可能ならしめた文化的・社会的・政治的力学の諸条件が、或る模範的な姿で浮かび上がってくる。近代と表象とをめぐるさまざまな問題を体現した特権的な塔を透徹した論理と輝かしくも華麗なエクリチュールで徹底的に読み解く記念碑的力作。

感想・レビュー・書評

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  • 伸びやかで、楽し気で、含み笑いをしたような魅力的な文体。
    その文体が語るのは、無価値なもの(無用性)たるオブジェに捧げる知的オマージュ。
    知的たることをもたらさない、<無用性>の評論、がここにある。
    自動機械をエロティックに語ってみせる作者の心性を思えば、蓮實重彦の真の後継者がここにいることを確信させてくれる。
    独特の言葉遣いの魔術を操ることができるのは、蓮實とこの松浦だけだ。

    読書とは実は無償の行為なのだということを教えてくれる本だ。
    全編を舐めるように味わい尽くしても、何ら新たな知識を得ることが出来るわけではない。
    確かに、ギュスターヴ•エッフェルの生涯に関してなにがしかの知識を得ることは出来る。
    だが、この凡庸なエンジニアの人生を知ることの意味は何もない。
    目指すのは、<意味の戯れへの愛>。
    だからこそ美しい。

  • [ 内容 ]
    古典的な「表象」の崩壊に代わって「イメージ」の出現という出来事が成立する時点において、恐らくエッフェル塔とは、西欧の表象空間に起きたこの地の竣工の日付をこの認識論的断層の上に重ね合わせることが可能であるように思える。
    エッフェル塔の伝記を辿ってゆくとき、こうした「近代」的な「イメージ」の生成過程と、それを可能ならしめた文化的・社会的・政治的力学の諸条件が、或る模範的な姿で浮かび上がってくる。
    近代と表象とをめぐるさまざまな問題を体現した特権的な塔を透徹した論理と輝かしくも華麗なエクリチュールで徹底的に読み解く記念碑的力作。

    [ 目次 ]
    序章 「無用性」の美学のために
    第1部 三百メートルの鉄塔
    第2部 階級と地政学
    第3部 相似・反復・投射
    終章 「近代」あるいは未了の空位期

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 無用性/有用性、鉄/鋼(そして石)、パリ/アメリカ、芸術/工学、科学/産業、曲線/直線、技師/建築・・・そして、近代/前近代。エッフェル塔に現れるあらゆる「記号」を読み尽くそうとする著者の偏愛的なまでのエッフェル塔に関する論考。虚空へと突き伸びるエレヴェーター〈機能〉やイメージ伝播の運動性としてのエッフェル塔の議論などがとても面白いけれども、やはり最後の映画とエッフェル塔の関係性から浮上する「イメージ」としてのエッフェル塔は、表象からイメージへと移り行きつつ、同時にそこに「近代」の幕開けを見取る、その議論には興奮しっぱなし。とてもとても面白かった。

  • 資料番号 : 010237063
    請求記号 : 523.3マ

  • 2010/2/26購入

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著者プロフィール

1954年生れ。詩人、作家、評論家。
1988年に詩集『冬の本』で高見順賞、95年に評論『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、2000年に小説『花腐し』で芥川賞、05年に小説『半島』で読売文学賞を受賞するなど、縦横の活躍を続けている。
2012年3月まで、東京大学大学院総合文化研究科教授を務めた。

「2013年 『波打ち際に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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