わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
3.60
  • (47)
  • (69)
  • (93)
  • (19)
  • (3)
本棚登録 : 821
レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085436

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 言語学習の楽しさと難しさを改めて実感している今日このごろ。
    そんな私に25年間で16ヵ国語を習得した著者の言葉は大きな励ましになりました。

    著者の好奇心と教養があふれだす文章を読んでいると、とてもポジティブな気持ちになります。
    思うように学習が進まないこともあるけど、著者の失敗談や数々の経験が背中を押してくれます。
    言語学習を建物に例えるのがわかりやすい!
    どこか一部分でもいい加減に建てると崩れてしまうから、堅実に土台をつくろう。
    だんだん自分の中に建物ができていく様子をイメージすると楽しくなってきます。

    翻訳は米原万里さん。
    本書は文庫化されるまでに約20年あいだがあったのですね!
    訳者あとがきは単行本版と文庫版が収録されていますが、この20年で米原さんの文章がより冴え渡っていることも味わえちゃいました。

  • おぉぉ!!これ文庫本だったんですね。嬉しい。一年ぶりの帰国に先立ちここぞとばかりに奮発して五十冊ほどまとめて注文買したので、判型をすっかり忘れていました。続々と配達される本の山に呆れる両親。そして彼らを前にまたまた奇声を発する私。えぇぇ!訳、米原万里〜〜?!!米原さんの著書で紹介されてはいたけど、訳したとは書いていなかったぞ!滞在中は図書館の大型本にかかりっきりだったので、帰りの飛行機にて慌てて読了。

    「英語通訳には面白くない人が多い。考え方もユーモアのセンスさえも常識の範囲を逸せず、ただただクソまじめで超勉強してそうな優等生タイプ」これは米原さん田丸さんの著書両方に、彼女たち自身の印象として、もしくは通訳派遣会社の方のコメントとして記されています。あこがれの大先輩に罵られたショック。それが英語能力くらいで口に糊しようなんて甘いと考え、留学そうそう子どもの頃からの夢だった通訳の道に見切りをつけてしまったことへの後悔と相まって、では第三外国語を!なんて不純な情熱がフツフツと腹の中で煮えたぎってまいります。

    本書は、五ヵ国語で同時通訳、十カ国語で通訳、十六ヵ国語で翻訳をこなしたロンブー・カトーの外国語学習法をまとめたもの。彼女はこの方法で、九十才を過ぎても新しい言語に挑戦し続けました。彼女はハンガリー人、大学の専攻は物理化学。決して、父ポルトガル人、母ハンガリー人、スペインで育ち、フランスに留学、仕事でイギリスに住み、そこで出会った夫はイタリア人、家族がふえた今はドイツで... というような幸運なマルチ・リンガルではありません。卒業後の仕事が見つからず、需要のあった英語教師になろうと、英語の勉強にとりかかったのだそうです。

    彼女は自身をそして本書を手に取るであろう多くの読者を「平均的学習者」と呼びます。つまり新しい言語を自動的に摂取してしまう年齢をとうにすぎた成人であること。またありあまるほどの時間はなく... とは言っても自由時間がほとんどないということもない人のことです。彼女の紹介する外国語学習法はそんな「平均的学習者」向けであり、なによりも大人が外国語を身につけるのには、子どもの頃に母国語を習得した要領ではだめだという考えに基づいてまとめられています。

    「ロンブー・カトー式外国語学習法」
    ※以下の例に使われているアジール語は、外国語学習へのアプローチの仕方が一貫して同じであることを強調するための架空の言語です。

    1. アジール・母国語辞典を購入
    まず全世界共通の固有名詞や学術用語を探して読み方のルールを解読。ピラミッド、インターネット、ドストエフスキー、クレオパトラ、ツナミなど。

    2. アジール語問題集と文芸書
    問題集で基本的な文法を学んだら読書にとりかかる。一周目はわかった単語や活用だけに注目しながら。二周目以降は推察できたものや、重要そうな単語を書き出しながら。単語を文脈から切り離して孤立させないこと。

    3. 当日のアジール語ニュースと母国語ニュースを聞き比べ
    固有名詞を頼りに内容を推測。気になる単語を書き出し、辞書で調べる。アナウンサーの正しい発音とイントネーションを観察。

    4. アジール語が母国語の先生 (できれば女性) を探す
    ゆっくり何度も話してもらったり、宿題や慣用表現を直してもらったり。

    5. 気に入った本を母国語に翻訳
    歴史、地理、経済、文化などおカタイ科目にこだわらず、興味のあるテーマを選ぶこと。料理でもサッカーでもファッションでも!

    6. アジール国を辞書を片手に旅行する 
    絶対条件ではないが、映画館やアジール語での観光案内、興味あるテーマの講演会など、できる限り参加する。現地アジール人との行き当たりばったりな当たり障りのないの会話は言語習得の鍵ではない。

    ●外国語は四方八方から同時に襲撃すべき砦である。文法書にかじりついていてはいけない。新聞を読み、ラジオを聴き、文学作品を読み、字幕なしの映画を見て、大学の講義に参加し、教科書を学習し、その言語を母国語とする人たちと会話して、ありとあらゆる手段で陥とすべし。

    ●外国語の習得は関心の度合いと、この関心の対象を実現するために費やされたエネルギーの量にかかっている。「(費やした時間 + 意欲) / 羞恥心」
    才能とはあくまで、語彙暗記力、音を模倣する能力、文法を解読する論理的思考力のこと。外国語学習に費やされた時間は、それが日単位、週単位で一定の密度に達しない限り無駄になる。週平均で十〜十二時間。

    もとはといえば私は「星の王子様」を読みたくてフランス語を「ムーミン」を読みたくてスオミー語を、「モモ」はドイツ語で「ドン・キホーテ」はスペイン語で!などと夢想していて外国語に興味を持ちました。アラビア語で「アラビアン・ナイト」が読めたらロマンチックです。結局実現したのは「ハリーポッター」を英語で読むことだけなのですが、それでも読書中心の言語学習が紹介されていて嬉しかった。空想小説や児童文学好きには、勉強の格好な言い訳になります。

    外国語学習をもっと楽しいものにしたい。それをたくさんの学習者と分かち合いたい。という彼女の情熱が伺える一冊です。

  • 優しい文章でわかりやすく、かつ言語それぞれが持つ魅力や特徴を丁寧に教えてくれる素敵な本だった。大丈夫、あなたもきっと外国語は習得できますと何度も言ってくれるのだけどこの人の営みがどんな石のごとき根気に支えられたものかと思うといやいやいや…とはなる すごい人

    でも声高に「読書をしましょう!」と声をかけてくれるのはなんだか勇気付けられた。良い文学に出会えるということはそれだけで知識欲、好奇心をいつまでも掻き立てられる。これまで外国語教育方法がどんな変遷をたどってきたのか、果ては同時通訳とはどんなお仕事なのかも細かく書かれてて勉強になった

    なんか読み進めるうちにカトーさんが「大丈夫!できる!」と何回も言ってくれるからもしかしていけるんでは…?とか思ってしまうんだけど以下略 でも語学以外であっても何か一つ極めたい!と思っている人には勧めてあげたい本だなあと思った

  •  著者は、露・英・仏・独・ハンガリーの各語はいつでも通訳可能、その他、伊・西・日・中・ポーランドは半日あれば通訳できる準備ができる、そしてその他ブルガリア語・ヘブライ語・ラテン語・スロバキア語・ウクライナ語等、計16ヶ国語ができる女性の方である。しかも全て独学(!)で身につけたという、その筋では非常に有名な方であるらしいが、僕はこの年になるまで知らなかった。

     また著者は「私のような平均的学習者」を対象にこの本を書いたと言っている。平均的学習者とは、仕事も家事も行っている、そして自由時間が3~4時間程度だと。その自由時間のうち「1日のうち(語学学習に)1時間半(程度)も犠牲にすることのできない状態の人」は想定していないと言う。換言すると「週に起きて過ごす100~200時間のうち、10~12時間を学習に必要な最小集中密度」だと言う。

     世の中に「聞き流すだけでバッチリ」とか怪しげな語学学習法を華々しく宣伝しているが、そういうものが偽物であることがよく解る。著者は「毎日コツコツとやる大切さ」を訴えているように思う。
     ではコツコツとやれば彼女ように10か国語以上マスターできるかというと、僕はそうでないと思う。著者は自分のことを「(語学の才能に関しては)普通の人間だ」と至るところで言っているが、個人的には語学は努力+アルファの才能が必要だと感じている。努力すればみんなソコソコまでできるんだけど、そこから先は…という印象を受けます。

     この本で語学習得の秘訣はとにかく「読書」をすることに尽きると言う。夏目漱石もとにかく大量の英書を読んで英語を身につけたと言っているのに符号する。だから、単語の暗記とかは必要なく文章の中でドンドン覚えていくものだというスタンスである。この点も些か疑問に思う。洋書を読んでいてストレスが溜まるとしたら、単語(あるいは熟語)がわからない時だと思う。少なくとも1行に2個以上あると、途端に読むスピードが遅くなる。上級者はドンドン読書することで、語学の才能が伸びるとは思う。しかし、初心者はむしろ基礎的な単語の暗記が必要ではないかと思う。この点千野栄一が『外国語上達法』で述べているように、とにかく基礎的な1000単語は力づくで覚えた方が良いという主張に賛成する(さらに言うと、千野がいう「語学は身銭を切らないと覚えない」という主張にも大いに共感できる)。

     この本の欠点はとにかく訳が読みづらいこと。訳者はロシア語通訳で有名な方らしい(僕は寡聞にして、この片をあまり存じあげない)が、翻訳者としてはちょっといただけないレベルだと思う。新たに訳者を変えて、外国語学習者に幅広く読んでもらいたい内容の本だと思う。

    以下、この本で印象に残った文言を備忘録的に記しておきたい。
    ・私の一番好きな外国語はロシア語です。その優れた形象性に、私は第一人者の王冠を与えるでしょう。
    ・ロシア語は…母音も子音もともに幅広い音階を有しています。この言語を見事に駆使出来る者にかかると、悲しくも、甘くも、勇壮にも、やさしくも響くことが出来るのです。
    ・(英語って簡単ですよね?との質問に)そう最初の10年間はね。でもそのあとは耐えがたいほど難しくなってくるわ。(英語は原理・原則から外れた部分があまりにも多いため)
    ・外国語は毎日学習すること。最低10分はやること。
    ・消費された時間+関心度(意欲)=結果(←これを分子として、分母に「羞恥心」が来る)。男性の平均的学習者は羞恥心が強すぎて、女性に比べ喋るという能力を身に着けるのが遅くなる(文法的に間違えたらどうしようとか、男性はよく思いますよね)。女性のほうがコミュニケーションへの欲求が強い(だから語学習得に向いている)。

     そして、外国語学習者が常に覚えておき、この言葉によって励まされるであろう。僕はこの言葉を知ることが出来て良かったし、実際励みになったし、学べるところまでで良いやって開き直ることができました。

    ・わたしたちが外国語を学習するのは、外国語こそが、たとえ下手に身につけても決して無駄に終わらぬ唯一のものだからです。

  • 語学の本は好きでいろいろと読むのだが、これは16ヵ国語をマスターした著者による、外国語習得法の本。著者が考える、外国語習得に必要なポイントが段階を追って解説されている。

    言語習得に特段の才能は不要という章(P.225~)は、外国で暮らしたことのない自分のような人間にとっては励みになる。しかし同時に、本気で言語を学ぼうと思うならばそれなりの覚悟と努力が当然のように求められるという厳しい現実も突き付けられる。

    著者によれば、言語習得の結果は、その言語を学ぶために費やした時間と、その言語に対する意欲を足し合わせたうえで、どれだけ羞恥心を捨てて間違えてもいいから使ってみる度胸があるかどうか、にかかっているとのこと。どれも当たり前のようで、なかなか実践するのは難しい。

    日本語を含め、母語と全くかけ離れた言語を16も習得した著者に「言語習得に近道も抜け道もない」と断言されると、あぁやはりな、なるほどな、と思わされる。
    日々の精進の重要性に気づかされる。

  • 母国語以外の外国語を学ぶ方法を実体験に基づいて記述した本である。ローマは一日にしてならずである。

    https://www.instagram.com/p/B2mNtoyj7hf/?utm_source=ig_web_copy_link

  • 岩崎秀夫さんのブログにポリグリットということが出ていたので検索したら「真があって運の尽き」というブログがヒットし、この中にこの本が紹介されていた。

  • 英語

  • 具体的外国語学習手引きとしての手に取るとガッカリするだろう。

    「外国語学習」の具体的な「方法」は殆ど書かれていないからだ。

    1972年の本だが、実際には1930年頃からの体験に基づくものであるから正直言って「学習法」の賞味期限は切れている。とはいえ、時代が経っても変わらないものも当然ある。



    **************** 以下は抜き書き ****************

    ・週に起きて過ごす100〜120時間のうちの10〜12時間を、わたしは、学習に不可欠な最小集中密度と考えます。

    ・わたしたちの好奇心が読書によって満たされる度合が高ければ高いほど«停滞»の克服、つまり自己を強制する力も弱くてすむのです。

    ・それでもわたしたちがすべての試練に耐えたのは、慣れとともに喜びがやって来ることを知っていたからです。

    ・ことば遣いの慣れを最もよく発達させてくれるのは、的確で自然なリズムで書かれた現代の戯曲、中編・長編小説の類です。

    ・この単語のいみを、わたしは自力で言い当てる事が出来た、自力で文章の意味を推し当てられたのだ。この意識下で味わう自己満足こそ、最高の報いです。こんな時は、心の中で全人類に肩をたったいてやりたいぐらいの気分になるほどです。苦労は報われた。

    ・外国語でコミュニケートする時、相手が、われわれの外国語の知識を判断する最初の基準は、まず第一に発音なのです。われわれの能力を判断する材料として、それはちょうど女性における容姿のような役割を演ずるのです。美人は、初めに姿を見せた時は«常に正しい»のです。後になって、彼女は実は馬鹿で、退屈で、意地悪だということが明らかになったりするものですが、最初の内は、何と言っても、やはり軍配は彼女の方に上げられるのです。

    ・模倣能力に関しては、男性は平均的に女性に比べて劣っていると多くの心理学者が指摘しています。

    ・(外国語音声修得は)俳優的とも言える修業なのです。お気付きになったとこがありませんか、母国語から外国語に移行したあなたの知人は顔の表情までが«外国的»になっているのを。

    ・平均的な外国語学習条件のもとで正確な発音習得に極めて重要な手段となるのはラジをです。

    ・最良の方法は、ラジオ放送をテープレコーダーに録音し、何度もそれを聞くことです。

    ・理想的なのは、今市場に出回り始めた、ビデオ・レコーダーでしょう。気に入った(または必要な)放送を録音できて、好きな時間に好きなだけ再放送が出来るというものです。

    ・外国映画が吹き替えや、同時通訳なしで、つまり字幕スーパー付きでテレビ放送されるときなど、学習中の言語を聞く良い機会となります。分からない時は、字幕を見れば良いのですから。

    ・ところが、筆跡を変えるとか、色とりどりのインクを使用するとか、単語グループごとに飾りをつけるとかすると、記憶のバネの様なものが出来上がるのです。

    ・単語帳に単語を隔離した形ではなく、他の何らかの単語と結べつけて書き込むことによって、辞書の持つ論理性のメリットと、単語帳の持つ個性を、結合させることが出来ます。

    ・最も覚え難いのは、抽象的な行為(遂行する、保障する、採用する)を表わす動詞です。

    ・外国語能力レベル
    I 口頭発言の理解力
    II 文章の理解力
    Ⅲ 口頭発言能力
    Ⅳ 文章力

    ・アナトール・フランスは、辞書のことを«アルファベット順に配列された宇宙»と呼びました。

    ・«成功の体験»、多くの人々が考えているように、教育学の、そして現実のあらゆる面にも及ぶ、キー・ポイントなのです。とくに外国語学習にとっては、無条件にそうなのです。

    ・わたしの考えでは、現在学校教育、あるいは大学教育でもはやっている、学習言語の本国における初等学校の教科書を用いるという教育法は、正しくないと思います。

    ・«良い訳とは、原発言(文)に可能な限り相応していて、同時にあたかももともと訳語で書かれているかのような印象をうむものである»。わたしにこのテーゼを少し違った言い方で表現させていただくと、«良い訳とは、原文(または原発言)めざしたのと同じ連想を生み出すものである»となります。

    ・かなり分厚い辞典を捜しにかかるでしょう。……単語は、覚えこもうとせずに、観察します。……教科書と文芸書を買い込みます。……戯曲や短編小説を読みにかかります。

  • 2000年(底本1981年)刊行。

     表題からは多言語を操る著者の外国語学習法と想像されたが、それのみならず、「通訳はつらいよ」的な叙述も含まれている。
     後者がなかなか興味深い。特に、通訳において、外国語・専門用語のみならず、持続する記憶力という技能が求められるとあり(ワーキング・メモリーか?)、通訳学校でこれを訓練するらしい(ただし、本書ではその訓練方法は書かれていない。)。

     外国語学習法については、オーソドックスな方法論を提示しているため、極端な新味はないが、安心して読める良書である。

     訳者は故米原万理氏。

全92件中 1 - 10件を表示

米原万里の作品

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする