英語の発想 (ちくま学芸文庫 ア 10-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085887

感想・レビュー・書評

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  • 英語を和訳したとき、なんでどうも日本語らしい日本語にならないんだろう、と思っていたら、同じ状況でも日本語と英語での表現の仕方が異なるために、英語を直訳したものをちょっと日本語らしく直すだけでは綺麗な日本語にならないんだ、ということを初めて気づかせてくれた本。
    意訳は日本語の表現力がなければできない、と思っていたが、法則があり、テクニック的にできるものだということは驚きだった。
    また、日本語の表現を英語と比較して考えるにも役立つ。
    例を挙げればキリがないが、英語の受動態は日本語の受動態と同じだろうと思っていたけど、それも全く同じではなく、日本語の受動態は微妙な違いで異なったニュアンスを表現しているとの整理はとてもわかりやすかった。
    説明も難解さはないので、高校生くらいからでも十分読めると思う。

  • 英語の発想を、日本語での翻訳という切り口から、分析し、ついには、日本語の論理と英語の論理の違いと類似点を炙り出していく興味深い本です。タイトルにかかわらず、実は、「日本語の発想」を見極めようとした本とも言えそうです。

  • 英文翻訳術に増して、英語力、日本語力の不足を痛感させられる本。改めて日本語の文法とか言われてもツライものがある。
    受け身を能動で訳したりするテクニックは使えると思う。

  • 購入して読み。

    線引いたとこ、付箋付けたところを抜粋。
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    原文は、「人間」の方に力点がくるように書いてあるといえると思う。というのも、「AではなくB」という内容を表すのに、英語では、'not A but B'という形の方がやはり普通であるのに、ここではわざわざ、'B and not A'と言う形をとっているからだ。(p23)
     →翻訳するうえで、英語の定型的な表現を踏まえたうえで、そこから外れた語順の場合は、何を強調しようとしているか読み取ることが大事なんだなー。

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    (1)英語では名詞で書いてあっても、日本語ではこれを動詞に読みほどいてやった方が、自然な訳文を得やすい。
    (2)英語では<もの>を主語にした構文になっていても、日本語では人間を主体にした表現に変えた方が、ついて行きやすい。
    (3)英語では、重要な情報は文章の前の方に来るのに対して、日本語ではむしろ、力点は文末に来る傾向がある。(p26)
     →このへんのことは、高校の英語の先生が良く言ってたなーと思う。

    ---
    (4)日本語では、主語の働きは動詞によって果たされる面が多い。だから、わざわざ主語を表に出す必要のない場合が少なくない。
    (5)日本語は一般に直接話法が得意である。ところが英語は、むしろ間接話法を得意とする。
    (6)日本語では、物事全体が自然にそうなったというような表現を好むのに対して、英語では、これを人間の「行動」として捉え、「動作主+他動詞+目的語」の形で表現することを好む。(p37)


    ---
    西欧の言語が名詞中心構文であるのに、日本語は動詞中心の性格が強い。「この事実の認識が問題の解決に貢献する」と言うのが名詞構文なら、「これが分かれば問題はずっと解決しやすくなる」とするのが動詞構文である。翻訳においては、語句の翻訳だけでなく、こういう名詞構文→動詞構文の転換も必要である(外山滋比古の「日本語の論理」の10ページからの引用)(p93)

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    英語は名詞中心、日本語は動詞中心という対照(p48)

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    'would have meant'と、動詞が仮定法過去完了の形になっているところからすれば、この名詞句はさらに、「もし医者の手がほんのわずか滑っても」という、条件節に当たる役割まで負わされていることに気が付く。(p62)
     →wouldの条件節は自分がよく見落とすところなので、改めて注意。

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    長いので引用しないけど、p64の確かに~のパラグラフ。英語と日本語の状況の捉え方の対比。

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    (一)無生物主語は、日本語でもそのまま主語に訳すよりは、原因、理由を表す副詞句(節)に置き換えたほうが良い。
    (二)目的語の位置にある人間は、日本語ではむしろ主語に置き換え、その代わり、動詞を受身の形に改めるか、ないしは受け身に類する表現に変えたほうが良い。(p83)
     →無生物構文の訳し方。


    ---

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737520

  • 英語は名詞中心⇔日本語は動詞中心

    無生物主語は原因・理由を表す副詞句に
    目的語は主語として訳す

    許される→許してもらう

    描出話法(自由間接話法)

  • 著者が、シェイクスピアの作品などの翻訳にたずさわってきた経験を通じて、英語と日本語の発想のちがいについて考察をおこなっている本です。

    著者は、外山滋比古や池上嘉彦らの対照言語学的な議論を紹介するとともに、英語と日本語の発想のちがいについて、いくつかの例をもとにたしかめています。それによると、英語が名詞中心的な発想で文が組み立てられるのに対して、日本語は動詞中心的な発想で文が組み立てられるとされ、また英語が実体を中心に分析するような認識の枠組みをもっているのに対して、日本語が状況をすくいとるような認識の枠組みをもっていると論じられています。他方で著者は、描出話法や受動態などの考察を通じて、英語の発想と日本語の発想を連続的にとらえることを可能にする視点を打ち出しています。

    著者は、言語学や比較文化を専門にしているのではなく、実地の翻訳の経験を積んできた者としての立場から、英語と日本語の発想について考察をおこなっていると明確に述べています。そして「本書はむしろ、発想の転換という点を中心にした一種の翻訳読本としても読んでいただけるかもしれない」と語っています。そうした意味で、英語を自然な日本語に翻訳するためのテクニックを学ぶための本としても有益であるように思います。

  • 1

  • 英語と日本語の違い、そして共通点を通して日本語の素晴らしさも再認識。自分も時々翻訳の真似事をするが、より意欲を高めてくれる一冊だった。

  • 星5をつけたくせに内容を忘れた…再読せねば。まだ家にあるかな。

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著者プロフィール

安西徹雄 (あんざい・てつお)
1933年、松山市に生まれる。
愛媛大学文理学部卒業。
上智大学大学院文学研究科博士課程修了。
英国バーミンガム大学シェイクスピア研究所留学。
上智大学文学部英文学科教授を経て、現在、上智大学名誉教授。
シェイクスピアを中心として英文学の研究・教育に
あたる一方、演劇集団「円」を拠点に演出を手がける。
著書
『シェイクスピア——書斎と劇場のあいだ』(大修館書店)
『シェイクスピア劇四〇〇年——伝統と革新の姿』(NHKブックス)
『仕事場のシェイクスピア——ある伝記の試み』(新潮社刊、現在、ちくま学芸文庫)
『この世界という巨きな舞台——シェイクスピアのメタシアター』(筑摩書房)
『英文翻訳術』(ちくま学芸文庫)
『彼方からの声——演劇・祭祀・宇宙』(筑摩書房)ほか

訳書
ピーター・ミルワード『イギリスのこころ』(三省堂選書)
ピーター・ミルワード『シェイクスピアの人生観』(新潮選書)
イアン・ウィルソン『シェイクスピアの謎を解く』(河出書房新社)
ピーター・ミルワード『愛と無—自叙伝の試み』(人文書館)
シェイクスピア『リア王』(光文社古典新訳文庫)ほか

「2007年 『愛と無 自叙伝の試み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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