知覚の呪縛―病理学的考察 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480086808

感想・レビュー・書評

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  • Seroquelの試験が始まるので精神分裂病関連の本を漁ってみつけた。とにかく日本語って難しい。特に精神科の。こういう本が田口ランディの力で文庫化されてよかった。「メガトン級のショックを受けた」とはいかなかったけど、良い本でした。
    ただ薬には全然関係ないけど。。。。

  • 「S」と呼ばれる重篤な統合失調症患者の言葉を通して、彼女の住んでいる世界のありようを分析する試み。著者の理論上の立場については詳しく知らないが、本書を読んだ限りでは、ベルクソン哲学に依拠するE・ミンコフスキーの立場に近いように思った。

    Sは、自分を取り巻く知覚世界は実在性を持たない「ワラ地球」、そこに登場する人間たちは「ワラ人間」であり、本当の世界である「オトチ」に帰りたいと述べる。「オトチ」は、Sの知覚現場である今現在を超えた、いっさいの存在が位置する実体的な世界であるらしい。

    またSは、「オトチ」へと帰るために、直径2、3メートルの円環を描きつつ歩き回る「トグロ巻き」という行動をしばしばおこなう。著者はみずから「トグロ」を巻いてみることで、みずからの眼前に広がる平板な知覚的世界が流れ出し、知覚と運動の連続体に合流してゆくことを発見する。

    こうした著者の議論は、ベルクソンの「持続」に関する考察を思い起こさせる。ベルクソンの「持続」とは、瞬間的な知覚と連続的な運動を張り渡すような概念である。私たちはそのつどの瞬間的な知覚世界に生きているのではなく、「純粋記憶」という膨大な過去を背負いつつ、この現在の知覚世界の中にさまざまな力線を描き込みながら行為しているとベルクソンは考える。これに対してSを取り巻く世界は、彼女が「トグロ巻き」の運動をおこなうことで辛うじて持続の緊張が実現されるものの、それをやめてしまうとただちに弛緩した瞬間的現在の知覚世界に巻き戻されてしまうことになる。そうした平板な現在の中に閉じ込められた彼女にとって、純粋記憶は現在の運動との生き生きとしたつながりを断ち切られて、「死んだ世界」である「オトチ」へと変貌してしまったのではないだろうか。

    本書のタイトルである「知覚の呪縛」は、こうした平板な「現在」に閉じ込められてしまうことを意味しているように思われる。

  • ある精神分裂病患者と医者のやり取りを記した、個人的といえば個人的な文章なのだけど、その内容には普遍性を感じます。現実世界とは?常識とは?価値観とは?
    医学知識の全くない私にも理解でき、医学書というよりはまるで哲学書の様相。

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著者プロフィール

1949年、茨城県生まれ。東北大学医学部卒業(医学博士)。都立松沢病院、東京医科歯科大学、栗田病院、稲城台病院などを経て、現在、いずみ病院(沖縄県うるま市)勤務。専門は、精神病理学。
主な著書に、『シュレーバー』(筑摩書房)、『死と狂気』(ちくま学芸文庫)、『〈わたし〉という危機』(平凡社)、『20世紀精神病理学史』(ちくま学芸文庫)、『祝祭性と狂気』、『フロイトとベルクソン』(以上、岩波書店)など。
主な訳書に、ジークムント・フロイト『モーセと一神教』(ちくま学芸文庫)、ダニエル・パウル・シュレーバー『ある神経病者の回想録』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『創造の星 天才の人類史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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